省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

列車表示サボ受のあった 改造クハ47 第1号、身延線のクハ47051 (蔵出し画像)

 本車は、サハ48から改造されたクハ47の第1号となった車両です。身延線への70系の投入でモハ32を地方に転出させることになりましたが、横須賀線におけるクハは付属編成用で数が少なくクハ不足となりました。そこで大阪から来たクハ58も併せて転出させるだけでは足らず、サハ48を改造してモハ32にお供につけることになりました。

 本車はもともとはサハ48005でしたが、真っ先に1951年に改造され、直ちに身延線に送られました。なお、Wikipediaの記述によると、1949年7月30日に2等車の連結再開で、2等車不足から代用2等車に指定されていたようです。当初はクハ47の追番の47011とされましたが、1959年に051に改番され、011の番号はなぜか身延線で焼損したモハ11を復旧させた切妻のクハ47に与えられました。

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クハ47051 (静ヌマ) 1977.5 富士電車区

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クハ47051 (静ヌマ) 1980.3 富士電車区

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クハ47051以下 1981.5 下部駅

 

 当車は、1957年以降の身延線の快速運用(1日2往復)に使われました。このため前面に快速表示板が設置されていました。1964年の改正で快速は準急富士川に昇格したため、それ以降は使われませんでしたが、下部駅で、上および下の写真を撮った時は、誰かのいたずらか、往年 (『富士川』運行開始の1964年以前に使用) の「快速」表示が見えていました。貴重なショットです。

 因みにこのタイプの快速表示板の起源は、1930年代に始まった中央線急行運転 (現快速) にあるようです。この時、中央線の急行運転にこのタイプの表示板が設置されていたのが資料で確認できます。おそらく元中央線で運用されていた17m車が、名古屋工場豊川分工場に静鉄への転出や改造・更新修繕のため入場したときに取り外したものを身延線飯田線用に転用したものと推測されます (因みに豊川分工場は首都圏の電車の更新修繕や改造も行っていました)。

 また、客用扉の脇にサボ受けが見えていますが、これも元々あったものではなく、静鉄で使われた列車種別(快速)表示用サボ受けのようです。やはり快速運用に使用された車輌に限定して設置されていたようです。身延線ではクモハ14とオリジナル車を中心とするクハ47の一部に設置されており、ロングシートのクハ47にはありません。おそらくロングシートのクハ47は、1950年代末から60年代初めにかけての快速運用に用いられず、収容力が要求されそうな東海道ローカル中心に運用されたのではないかと推測します。なお、飯田線では旧形国電による快速運転時代、快速運用を担当していた豊橋区にいたクモハ42, 52, クハ47、および流電転入前に担当していたクハ18の一部に設置されていたようです。これは『わが心の飯田線』サイトにある、1950年代後半から1965年ごろまでに撮影された写真に確認でき、また快速サボを入れている写真も見受けられます。但し、飯田線の車輛の場合は1966年(あるいは1965年後半)以降に側面のサボ受けは撤去されたようです。おそらく全検のたびに撤去されたのでしょう。なお前面の快速表示器は一部クモハ52や42で最後まで未撤去の車両がありました。身延線では、その後撤去された車両もあったかもしれませんが、前面、側面ともクモハ14も含め、ご覧のように最後まで残っている車両があり、クハ47では、原形クハ47と本車のみに側面サボ受けが最後まで残っていました。

 またワイパーが1台のみなのと、正面のリベットが少ないのは、改造車の特徴です。

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クハ47051以下 1981.5 下部駅

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クハ47051 (静ヌマ) 1979.5 富士駅

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クハ47051 (静ヌマ) 1981.8 富士駅

 最後にクモハユニ44801とコンビを組んでいた頃です。

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クハ47051 (静ヌマ) 1981.8 富士駅

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クハ47051以下 1979.5 芝川駅

 ピンボケですが腕木式信号機が写っているので...

 

本車の車歴です。
日本車輌製造 サハ48005  → 1930.12.23 使用開始 東チタ  → 1935.11下旬 便所取付 & 定員変更 大井工 → 1951.10.5 改造 (クハ47011) 静フシ → 1959.12.22 改番 (クハ47051) →  1969.4.11 静ヌマ → 1982.2.12 廃車 (静ヌマ)
 21年間横須賀線で中間車として使われた後、30年間制御車として身延線を走り続けたシンプルな生涯でした。なお、本車は、ヘッドマークを付けたクモハユニ44801とともに1981年8月31日の最終運行を勤めました。
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