今回はARTの遠近歪み (パースペクティブ) 補正の基本的な使い方について説明します。なお翻訳は以前はパースペクティブ補正としていましたが、日本語としてより分かりやすいかと、Ver. 1.12.1から遠近歪み補正に改めました。原語は Perspective correction です。
と言っても、難しくありません。スライダーを動かせばどういう効果なのかすぐ分かる筈です。但し分かりにくいところだけ説明していきます。なお、RawTherapee5.8本家公式リリース版では、水平、垂直しか調整できませんが、RawTherapee開発版の[カメラベース]モードではARTと同じの調整ができます([シンプル]モードでは従来通り)。ここはARTがRawTherapeeの開発版の機能を先取りしている部分です(というよりRTの公式リリースが遅すぎるのですが。多分RTのヘビーユーザーは、公式リリースを使わずに、ほとんど開発版を使っていると思います)。またRawPediaの記述も開発版に対応しているので共通に使えます。
基本、レンズに基づく歪みは、その下の[レンズ補正 プロファイル]で[ジオメトリック(幾何学的[補正]という意味)]にチェックを入れておけば補正されているはずです。
しかし、これで補正しきれない部分を遠近歪み補正で補正していきます。またフィルムカメラ用のオールドレンズなどはレンズプロファイルが使えない場合もありますので、これも遠近歪み補正で手動で補正する必要があります。
まず分かりにくい点ですが、遠近歪み補正モジュールの「クロップ係数」があります。焦点距離はレンズの焦点距離なので分かりやすいと思いますが、クロップ係数は、そのカメラを35mmフルサイズに換算にする場合何倍する必要があるかという数値で、35mmフルサイズなら当然 1.0、通常のAPS-Cは約1.5、Canonのややセンサーサイズの小さめなAPS-Cは1.6、m4/3なら2.0となります。今回(Ver. 1.13では)、分かりやすいように上記のように翻訳を改めました。
要は、焦点距離とクロップ係数の2つのパラメータで、画角を指定しているわけです。但しいきなりレンズの画角を指定しろと言われても、通常ユーザは分からないので、この2つのパラメータを使って指定するようになっています。これで得られた画角に基づいて、遠近歪み補正の動作が調整されます。
この値は通常自動で取得されますので、ユーザがいじる必要はありません。但し、情報が自動的に取得できないフィルムカメラ用のオールドレンズや、フィルムをスキャンした画像等では正しいレンズの値が自動で入りませんので(例えばデジタルカメラでフィルムを複写した場合は、フィルムを複写撮影したレンズの画角情報ではなく、フィルムを使ってオリジナル画像を撮ったレンズの画角情報が必要)、ここでマニュアルで指定する必要があります。逆に自動で正しく取得されているのにここをいじると、補正動作が不正確になります。あえて歪ませたいという場合は、いじるのもありかもしれません。
すでに述べたように歪みの補正の仕方は実際にスライダーを動かしてみることですぐ分かると思います。なお、このモジュールでのアングルは、このモジュールの上の回転モジュールとは動作が異なります。回転モジュールでは、単純に指定した角度分、画像が左右に回転するだけですが、アングルでは画角の効果を加味した形で画像を回転しますので、結果が異なります。
また、一番下には自動補正があります。左から水平補正、垂直補正、水平及び垂直補正です。画像を見て自動的に水平、垂直を検出して歪を補正しますが、正しく検出できるとは限りません。
その場合は、水平もしくは垂直のコントロール線を引いて、水平もしくは垂直の補正角度を指定することができます。
コントロール線の指定の仕方ですが、下図にあるコントロール線作成ボタンは、左から[編集]、[適用]、[すべて削除]になっています。
まず、編集ボタンを押すとプレビュー画面上にコントロール線が引けるようになります。画面上にカーソルを置き、Ctrlボタンを押すと (カーソルが白い十字に変わる) 起点を指定できますので、ボタンを押したままドラッグし、終点でボタンを離すと下図のように線が引けます。
なお、コントロール線を実際に有効にするには、水平、もしくは垂直に2本以上線を引く必要があります。1本だけ線を引いても (あるいは水平に1本、垂直に1本でも) なにも動作してくれません。2本以上引いたあと、[適用]ボタンを押すと、下図のようにコントロール線に従って(コントロール線が水平もしくは垂直になるように)画像が回転します。
コントロール線を削除するには、[編集]ボタンを押して線を表示させてから、[すべて削除]ボタンを押してください。
なお、この機能についてはRawPediaのこちらの記述もご参照ください。
なお、回転モジュールにもコントロール線に似た機能があります。
ここに直線選択ツールがありますが、このボタンを押して、プレビュー画面上に線を引くとその線に従って画像が回転します。こちらは線を一本引くだけですぐ回転します。ただし画角情報は反映されず、単純に回転するだけです。
こちらはプレビュー画面上でマウスの左ボタンを押しながらドラッグすると回転線が引けます。