省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

Photoshopでの黄変フィルムの補正チュートリアルビデオを見つけました

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 Photoshopを使って古く黄色くなったフィルムを補正するチュートリアルビデオを見つけました。当然日本語のチュートリアルではなく、英語です。このビデオを見ていると、どうもこれは不均等黄変フィルムに近いようです。というのはビデオの途中で、カラーバランスを取ると、黄変が不均等に現れるからです。3年前に散々探したときはこのような不均等な変色を補正するようなチュートリアルは全く見当たりませんでしたが... 昨年1月末に投稿されたようです。もっとも3年前にこのようなものを見つけていたら、自分で黄変補正ツールを開発しようとは思わなかっただろうし、ひょっとすると今頃 Adobe の年間サブスクリプションも契約していたかもしれないので、当時見つからなくてむしろ良かったのかもしれません。

www.youtube.com

 要は、大まかな部分では Photoshop の自動補正で、Enhance per channel contrast (チャンネルごとのコントラストを強調) オプションとSnap neutral midtone (中間色をスナップ) オプションを併用して、全体の色調を補正し、部分的に変色している部分は、L*a*b*にチャンネル分解をして、Labの各チャンネルごとに、Gamma値を調整したり、部分的に他のチャンネル情報を流用したりして補正していく、ということのようです。

 手持ちのいささか古い Photoshop CS4 で、そんな機能があったかな、と思って調べてみると、ありました。但しビデオにある最新バージョンとは場所が違います。ビデオでは、トーンカーブの調整レイヤーにおいて Auto ボタンを押すとそのオプションとして出てきます(こちらのAdobeのマニュアル参照)。一方、CS4では、トーンカーブの自動補正にはなく、レベル補正にありました。また調整レイヤーだと使えないなど、手順はビデオとは変える必要がありますが、CS4でもできなくはなさそうです。

チャンネルごとのコントラストを強調 (CS4)

 

中間色をスナップ (CS4)

 最新バージョンのPhotoshopを持っていないのではっきりとは分かりませんが、CS4での適用結果のヒストグラムを見る限り、「チャンネルごとのコントラストを強調」オプションとは、どうやら GIMP の平滑化(equalize = ヒストグラム平坦化)に近いようです。ヒストグラムのパターンも似ています。こんなところに機能が潜んでいたのか... という感じです。

 そして「中間色をスナップ」とは、どうも先ほど挙げたAdobeのマニュアルを見ると、要は、自動カラー補正、つまり画像全体を対象としたホワイトバランスの自動調整のことのようです。GIMPだと平滑化を掛けた後、ホワイトバランスの自動調整を掛けるイメージでしょうか。

 ただ、いきなり全体を対象にこれを適用するとうまく補正できないので、変色の平均的なところをサンプリングして、マスクを作り、そこを基準にEnhance per channel contrast (チャンネルごとのコントラストを強調) オプションとSnap neutral midtone (中間色をスナップ) オプションを併用して、全体の色調を補正し、その後最後にマスクを外すことで、全体に対して適用することで全体の色調を整る、ということが一つのポイントのようです。要は、全体ではなくローカルな一部分を基準としたヒストグラム平坦化(おそらく)と自動ホワイトバランス調整を、調整レイヤー機能を使って全体に掛ける、ということです。

 その次に、局所的な変色部分の補正を行っています。これは他チャンネルの情報を、変色しているチャンネルに流用・加工して補正しているのですが、そのためのチャンネル分解で、RGBではなく、L*a*b*を使っています。L*a*b*を使う理由は、L* (明度) が主に形やテクスチャ情報(ビデオの中では details という用語を使っています)をもち、a* (G - Mg), b* (B - Y) が主に色情報を扱うので (とはいえ完全に分離できるわけではありませんが)、形やテクスチャ情報と色情報を比較的容易に分離できるという理由のようです。

 ただ、私の拡張疑似フラットフィールで補正アルゴリズムでも、後日お示ししたいと思いますが、色情報とテクスチャ情報の分離は可能です。

 ただ、このビデオで紹介されている作業、不均等変色部分が多いと結構大変なマニュアル作業になりそうですし、おそらく私のBチャンネル再建法 & マスクを使った追加補正の方が早い時間での補正が可能ではないかと思います。 

 というのは、少なくとも言えることは、このチュートリアルビデオでは、不均等に、b*チャンネルのテクスチャや色情報が失われている部分を、Lチャンネルからその情報をコピーして流用して補修しています。その一方、私のBチャンネル再建法では、Bチャンネルのテクスチャの補修は、そもそも全体的に G チャンネルの情報を混入することで補修しているので、変色している場所ごとにいちいち他チャンネルから情報をコピーしてガンマ補正して貼り付けるという面倒な作業を行なう必要がありません。したがってこのビデオで指南している方法で補正するよりは遥かに短い時間で補正することができます。しかもこの様に変色している場合はBチャンネルの情報も荒れていることが多いので、Gチャンネルのテクスチャ情報を全面的に混入したほうが望ましいです。おそらく、このチュートリアルビデオで扱っている画像を最終的に仕上げるまでに1時間以上かかるものと思われます。

 また、どんな黄変画像でも、常にEnhance per channel contrast (チャンネルごとのコントラストを強調) オプションとSnap neutral midtone (中間色をスナップ) オプションの併用が有効かどうかも分からないと思います。仮に「チャンネルごとのコントラストを強調」がヒストグラムの平滑化だとしたら、今までの経験だと、ヒストグラムの平滑化がうまくいく場合もあるし、いかない場合もあるからです。これについては、GIMPPhotoshopとのアルゴリズム差がありうるので断言できませんが。

 ただ、オリジナルのサンプルファイルが公開されているわけではないので、私の方法で同等の結果が出せるかどうか、検証はできません。

 とは言え、RGB以外のチャンネル分解を使ってみるというアイディアは検討の余地があるようにも思われます。また、画像の不均等変色部分は他チャンネル情報を流用して補正するという基本的な考え方は、私のBチャンネル再建法と共通しています。

 ともあれ、あくまでも Photoshopにこだわって不均等黄変の補正をやってみたいという方は、参照されるとよいかと思います。