省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

新緑にセンシティブなマスクを作る - 相対RGB色マスク作成ツール探求版マスク画像作成事例

 先日、相対RGB色マスク作成ツール探求版をリリースしましたが、あの説明だけでははっきり言ってピンとこないと思います。そこで、具体例を提示します。

 以下の画像から、新緑に対してセンシティブな、つまり新緑がなるべく明るくなるマスクを作ってみます。まずオリジナル画像です。

オリジナル画像

 ここから通常のG透過マスクを作ってみます。

G透過マスク

 上のマスクプレビューは、透過率を1.5、またRGB間のレベル調整を行っています (やや暗くなります)。対照となるRとBの混合率は 0.5 : 0.5 です。

 これを新緑 (黄緑) にセンシティブなマスクを作るには、Rの比率を下げます(= Bの比率が上がる)。原色透過マスクをつくるときは、センシティブにしたい色要素の比率を下げることがポイントです。0.25まで下げてみます。

黄緑にセンシティブなG透過マスク

 前方の新緑に木々や左側のやや赤みの入った木の葉を中心にやや明るくなっています。これを逆にしてみるとどうでしょう。Rの比率を0.75に逆に上げます。

黄緑に鈍感なG透過マスク

 黄緑や赤みのある部分を中心に暗くなっています。逆に青みの高い部分は明るくなっています。黄緑に対し反応が低下したことが顕著です。但し黄色味の少ない明るい緑(蕎麦屋の幟の下の植え込み)は明るさが落ちていません。

 あるいは、黄緑にセンシティブな黄色透過マスクを作るという方法もあり得ます。黄色透過マスクの場合、緑透過マスクとは異なり、補色透過マスクになります。補色透過マスクの場合センシティブにしたい色要素の比率を、原色透過マスクとは反対に、増やします。以下、Gの比率を0.75に高めた黄色透過マスクです。条件は、マスク作成対象が黄色になった以外は上と同じです。

黄緑にセンシティブなY透過マスク

 黄緑にセンシティブな緑マスクより全般的に明るくなっています。なお、Gの比率を0.25に下げたマスクも見てみましたが、あまり変わりません。これは新緑の黄緑はRもGも値が高いからだと思います。オレンジや青に寄った緑であれば、この値を変えた時大きな変化があるはずです。

 

 また今度は逆に青緑にセンシティブな緑透過マスクを作ったケースです。例えば、以下の画像ですが...

補正元ファイル

こちらは、元々黄変したファイルに Bチャンネル再建法を適用し、さらにマゼンタ被りの除去を行ったファイルです。しかし、田んぼの稲が全般的に青緑になっています。曇っているのである程度青みがかるのは仕方ありませんが、しかし、一般的には稲はある程度黄緑に寄りますので、不自然です*1。これはBチャンネルとGチャンネルの接近という副作用、もしくはスキャナドライバが黄変のために青に寄せる補正を掛けたためと思われます。

 これを修正するために、青緑に寄った緑透過マスクを作ります。青緑に寄った緑投下マスクをつくるには、上とは逆に、Rの比率を上げると (つまりBの比率が下がると) より青に寄った色にセンシティブになります。

青緑に寄った緑透過マスク

 このマスクを掛けて以下のように黄緑に寄るように(G, Rを上昇させ、Bを下げる)修正していきます。

修正中

 そしてさらに ART を使って仕上げた結果は...

終結

 これでだいぶ田んぼらしくなりました。

 というような具合に、探求版は使っていきます。

 本ツール、および相対RGB色マスク作成ツールの位置づけとしては、画像全体を対象にカラーグレーディング編集を行うのと、類似色、あるいは特定色域を狙ったカラー編集を行うのとの中間領域を狙ったツールと言えると思います。

*1:例えば、以下は夏の晴天時の田んぼを撮った写真のRGB値の例です。プロファイルはニュートラルを適用しているので、やや暗くトーンも平板になっています。

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ニュートラルでのRGB値