省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

ImageJ対応 相対RGB色マスク画像作成ツール Ver. 0.40 バージョンアップ

 昨年12月25日に、相対RGB色マスク作成ツール探求版をリリースしました。

yasuo-ssi.hatenablog.com このツールを自分で使ってみてかなり有用性が高いことが分かりました。ただ、先日のバージョンを「探求版」としたのは、パラメータの設定に一部難しい点があったためです。

 そのため、今回この探求版のパラメータ設定を分かりやすいインターフェースに改め、相対RGB色マスク作成ツール Ver. 0.4 としてリリースすることにしました。

 そもそも相対RGB色マスク作成ツールではどのように相対色マスクを作っているかというと、例えば青マスクを作る場合、「相対的に青い」というのは、あるピクセルにおいて、Bチャンネルの値から、Bチャンネル以外、つまりRチャンネルとGチャンネルの平均値を差し引くことで、相対的な青さの値を得ており、それに基づいてマスクを作ります。また黄マスクを作る場合は、逆にRチャンネルとGチャンネルの平均値から、Bチャンネルの値を引くことで相対的な黄色値を得ます。なお、RGB値は、マイナスの値を取りませんので、マイナスになる場合はすべて 0 (黒)になります。

 ところで、Ver. 0.26から、緑/マゼンタマスクを作成する際に、Bチャンネルのみと比較するというオプションを導入しています。これは、緑マスクを作る場合、通常ならG値から、RとB値の平均値を差し引いてマスクを作るところですが、B値のみを差し引いてマスクを作るオプションです。これは何を意味するかというと、黄緑色の部分をより明るく評価するマスクを作るためです。
 原色の緑とは、Gの明度100%である一方、R, Gの明度は0%という色です。そして通常の緑マスクはこの原色の緑のとき、マスクの明度も最も明るくなり、原色の緑から離れるほど暗くなるマスクです。緑の値が、RとB値の平均値を下回ると(つまり緑系統の色でなくなると)、マスクの明度は0%になります。
 従って、通常の緑マスクは黄緑も原色から離れるので、やや暗くなってしまいます。しかし、写真を編集しているとき、例えば新緑の緑を強調するような編集を行いたい場合があります。このとき、新緑は黄緑色ですので、新緑部分もマスク上やや暗くなってしまい、このマスクを使うと調整効果が弱くなります。
 しかし、緑マスクを作るときにBチャンネルの値のみをGチャンネルの値から引き下げてマスクを作ると、黄緑色部分の明るさが明るくなります。これは通常、黄緑とは、GだけでなくRの値も比較的高い色であり、R値を差し引かないことで、黄緑部分の値が高くなるためです。但しこの場合は、青緑はB値が高くなりますので、通常の緑マスクより暗くなります。とはいえ、これには副作用もあり、純黄色も、原色の緑と同じく最も明るく評価されます。つまり、緑 - 黄緑 - 黄が明るくなるマスクとなります。
 しかし、さすがに真っ黄色まで、マスク上もっとも明るいと困る場合もあるでしょう。このような場合、どのように対処するかと考えて、次のような対策を考えました。すなわち、相対色マスクを作るときの対比チャンネルの混合比を指定できるようにしたのです。これが前回の探求版でした。

 しかし、探求版だと、対比チャンネルの混合比の効果が、原色透過マスクと補色透過マスクで正反対になるという特徴があり、色の混合や補色関係についてちゃんと理解していないと使うのが難しいという難点がありました。

 今回のバージョンでは一般の方にも使いやすいように、効果の出方が原色マスクと補色マスクで変わらないようにユーザインターフェースを変更しました。

今回新設のパラメータ設定項目

  この部分は、探求版では対比チャンネルの第1チャンネルの混合比としていた部分です。しかし、この混合比の働きが原色透過マスクと補色透過マスクで反対になるため、今回設置したUIでは、それを揃えて、[Skew of color sensitivity] (色の感受性の傾き[曲がり]) としました。
 上の、画像では、マゼンタ / グリーン (= Gチャンネル) 透過マスク作成ダイアログになっていますが、それに対して、R もしくは B チャンネルに対する感受性を調整するようになっています。デフォルト値は 0.5 (ニュートラル) です。これを左にスライダーを寄せると値が下がって R チャンネルに対する感受性が上がって、B に対しては下がり、右に寄せると値が上がって B チャンネルに対する感受性が上がり、R に対しては下がります。値の変動範囲は、0.0 (Rへの感受性が最大) 〜 1.0 (Bへの感受性が最大) です。感受性を調整できるチャンネルはどのチャンネルに関する透過マスクを作るかによって変わります。

 なお、以下の写真をサンプルに、グリーン透過マスクを作るときのパラメータ調整例をお目に掛けます。

サンプル1

 上の写真に対し、グリーン透過マスク画像を作成していきます。まずニュートラルから。

ニュートラル (0.5)

 これは、従来のバージョンで作成できていたマスク画像です。次は、R チャンネルへの感受性を上げます。

Rチャンネルへ感受性大 (0.2)

 新緑部分がより明るく (透過度が高く) なっていますが、これは新緑の黄緑色は R 成分が高いためです。逆に B チャンネルへの感受性を上げ、Rチャンネルへの感受性を下げてみると... 

B チャンネルへ感受性大 (0.8)

 新緑部分の透過度が低くなりました。これは この部分は B 成分が少ないためです。B成分の多い青緑の部分に対しては感受性が増します。

 次のサンプルは以下の写真です。これに対してマゼンタ透過マスクを作ってみます。

サンプル2

 この写真は、全般的にマゼンタ被りが見られますが、それが、おそらくスキャナドライバの過剰補正で、そのマゼンタが全体的に青紫に強く振れた写真です。まずニュートラルのマゼンタ透過マスクです。

ニュートラル (0.5)

 次に R への感受性を上げ、B への感受性を下げます。

Rチャンネルへ感受性大 (0.2)

 全般的に青紫に傾いていますので、大幅に透過度が下がりました。次に B への感受性を上げ、R への感受性を下げます。

B チャンネルへ感受性大 (0.8)

 青紫に傾いている画像のため、マゼンタ透過マスクの透過度が全般的に大幅に上がっています。

 という訳で意図通りの動作ができていることが確認できました。これですと補色関係などを頭に入れなくても直感的に意図通りのマスクを作ることができます。

 これ以外に、bio-format プラグインを経由せずに事前に読み込んだ 8bit フルカラー画像の扱いに問題が出るバグを修正しました。

 なお、今回のバージョンでは 32bit フルカラー画像には非対応で、正しいマスクが作れない可能性があります。次回バージョンアップで対応する予定です。

 本プログラムのダウンロードはこちらから。 

 

  なお、以下に改定したマニュアルページを用意しました。

yasuo-ssi.hatenablog.com---------------------

 なお、本連載記事で紹介した写真補正技法やソフトウェア (Plug-in) は個人的用途および非営利目的であれば自由に使っていただいて構いませんが、本技法を使って何らかの成果 (編集した写真等) を公表する場合は、本記事で紹介した技法を使った旨クレジットをつけて公表していただくことをお願いします。

 また、このソフトウェアを利用される方は、このソフトウェアに起因する損害に対して作者は一切の責任を負わないという点を了承したものとみなします。同意できない方はご利用をお断りします。

 営利・営業目的で使用される方は別途ご相談下さい。

 また、私の作成したPlug-inも自由に改変して使用していただいて構いませんが、その成果を公表する場合はご一報下さい (公表しない場合は特に連絡は必要ありません)。またその改良した結果を私の方で自由に利用させていただくこともご了承下さい。

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