省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

黄変ネガ写真補正 Bチャンネル再建法ツール Ver. 5.4 リリース

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 10月により黄色味の削減能力を高めた Ver. 5.3 をリリースしました。かなり徹底的に黄色味を取るようになりましたが、逆に黄色味が取れすぎなのが気になるようになりました。特に茶色、褐色の黄色味が取れてかなりマゼンタに傾きます。そこでちょっと対策を考えることにしました。というわけで...

 

■バージョンアップ内容

1. 褐色補正レイヤーの追加

 褐色部分の黄色みが取れすぎなので、黄色味を戻す補正レイヤーを追加することにしました。褐色を中心に赤みのある部分の黄色味を戻します。なおこの補正は、黄変補正の適用除外で対応するのではなく、一旦黄変を除去してから独自の計算で黄色味を付加しています。そのため、スキャナドライバーなどの影響でマゼンタに傾いた場合でも補正が効きます。

 この新しいレイヤーを読み込むために、GIMP の読み込みプラグインも更新することにしました。新バージョンの GIMP プラグインも導入しないと新しいレイヤーを読み込みませんのでご注意ください。

 新規に追加した褐色補正レイヤー用ファイル名は、オリジナルファイル名 + brownC_layer.tif です。brown correction layer の意味です。またこのレイヤー用のマスクファイル名は、オリジナルファイル名 + brownC_layer_mask.tif となります。

新規追加 褐色補正レイヤーの位置

 前のバージョンと補正結果を比較した事例をお見せします。まず補正前から...

補正前 オリジナル

 フィルムスキャナでスキャンしたデータですが、黄変部分を除くとスキャンした時点ですでにかなりマゼンタに傾いています。

 次は従来バージョンです。褐色補正レイヤーがありません。

Ver. 5.3 のみ適用

 鉄錆色のバラストがマゼンタに傾いていますが、これはほぼオリジナルのままです。

 次は Ver. 5.4。

Ver. 5.4 のみ適用

 マゼンタがかっていたバラストの色が大きく改善しています。車体のクリーム色も心持ちやや赤みがかっています。

 別の例です。

補正前

 次は Ver. 5.3 適用結果です。

Ver. 5.3のみ適用

Ver. 5.4 のみ適用

 補正前画像が元々マゼンタに傾いているので分かりにくいかもしれませんが、Ver. 5.4 の結果と Ver. 5.3 の結果を比べると Ver. 5.4 の方が、床下や線路回りなどマゼンタへの傾きが少なくなっており、やや脱色感が減っています。

 あるいは下のケースの方が違いが分かりやすいかもしれません。

補正前

Ver. 5.3のみ適用

Ver. 5.4 のみ適用

 上と下とでは、明確に土の色が違います。褐色の補正効果が効いています。また線路の鉄錆色なども、マゼンタに寄っていたのがかなり修正されます。

 これにより、褐色部分の脱色感はかなり改善すると思いますが、一方で赤い部分がやや朱色に寄ったり、また、当然ながらマゼンタ味のある褐色は、マゼンタ味が消えたりします。これで特に影響がありそうなのは、旧形国電や電機、客車に使われたぶどう色2号で、このレイヤーを適用すると、鉄錆の赤褐色と区別がつかなくなる可能性があります。

 この場合、褐色補正レイヤーのマスク上で、黄色戻しの適用を除外したい場所を黒塗りにすると、その部分は黄色戻しが適用されません。また灰色に塗ると、黄色戻しの適用量が減ります。

 また、全体として黄色戻しの量が多すぎると感じられる場合は、褐色補正レイヤーの不透明度を調整してください。

 

2. リニア画像の処理方法の変更

 トーン再生カーブ (TRC) がリニアな画像の場合の処理方法を変更しました。リニアな場合は、一旦、通常の画像で使われる sRGB式 TRC を掛けた上でマスク画像を作成し、最後マスク画像を除いたレイヤーの塗りつぶし画像をリニアに戻す形にしました。なお通常の画像ファイルは知覚的 TRC がかかっているのが普通ですので、ユーザが意図的にリニア画像を作成しない限りは、リニアであることはない筈です。

 リニア画像をリニアのまま処理すると、人間の目が敏感なシャドウ部の階調が荒くなってしまうため、作成されるマスクがあまり効果的でなくなってしまうようです。マスク作成は知覚的な TRC を掛けた上で行った方がより良い結果が得られそうなのでこのように処理方法を変えてみました。

 なお、リニアな画像を扱う場合は、シャドウ部の階調が荒くなるので、極力 16bit 以上のビット深度がある画像を使ってください。リニアな 8bit 画像の使用は全くお勧めできません。

 なお、ImageJ はカラーマネジメント非対応であるため、画像がリニアか知覚的かは自動的に判定することができません。リニアな画像を扱う場合は必ず手動でリニア画像であることを指定してください。

 本プログラムのダウンロードはこちらからどうぞ。

 なお、まだ細かいアルゴリズムの見直しやパラメータの見直しで改善の余地がありそうなので、今後とも検討していきます。

 本ツールのUIの変更はありませんが、編集レイヤーが一つ増えましたので、改定した 5-3 マニュアルを公開する予定です。

5-1. 具体的な補正実施手順 - 準備

5-2. 具体的な補正実施手順 - ImageJによる作業

5-3. 具体的な補正実施手順 - GIMPによる作業

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 なお、本記事で紹介した写真補正技法やソフトウェア (Plug-in) は個人的用途および非営利目的であれば自由に使っていただいて構いませんが、本技法を使って何らかの成果 (編集した写真等) を公表する場合は、本記事で紹介した技法を使った旨クレジットをつけて公表していただくことをお願いします。

 また、本ソフトウェアは現状のまま提供されるものし、作者はこれを使ったことによるいかなる損害補償等にも応じられないことを了解の上使っていただくものとします。
 但し、もしソフトウェアのバグがありましたら、ご連絡いただければなるべく改善するよう努めたいと思います。

 営利・営業目的で使用される方は別途ご相談下さい。

 また、私の作成したPlug-inも自由に改変して使用していただいて構いませんが、その成果を公表する場合はご一報下さい (公表しない場合は特に連絡は必要ありません)。またその改良した結果を私の方で自由に利用させていただくこともご了承下さい。

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