省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

黄変ネガ写真補正 Bチャンネル再建法ツール Ver. 5.5 (リリース版) を使った、削減した黄色味の復元実験

f:id:yasuo_ssi:20210310145522j:plain

 Bチャンネル再建法ツールの改良をここのところ重ねてきましたが、一体、Bチャンネル再建法ツール Ver. 5.5 を使うとどこまで本当にオリジナルを復元できているのか、実験してみました。正常な画像に一旦 B チャンネル再建法ツールを適用して、黄色を削減した画像の黄色味をどこまで戻せるか、という実験です。

 実はこの実験、Ver. 5.5 試作中に一旦やってみて先日記事にしました。またかと思われるかもしれませんが、前回の記事は試行錯誤をそのまま記事にしたので整理されていないのと、試作と正式リリースで仕様が異なっているので、懲りずにまた試してみました。

 因みに、試作版と正式リリースで異なっているのは、試作版では、緑調整レイヤーを、拡張疑似フラットフィールド補正および G チャンネルミキシングを行った補正 B チャンネル画像を暗くしたうえで、緑領域透過マスクを掛けて作成しましたが、正式リリース版では、オリジナルの B チャンネル画像にそのまま緑領域透過マスクを掛けて緑調整レイヤーとしました。よく考えると実質的にわざわざ調整済み B チャンネルを暗くした画像を使う意味がないと考えなおしたためです。

 

 まず、フィルムスキャンした正常な画像に一旦 B チャンネル再建法ツールを掛け、黄色味を削減してみます。まず正常なオリジナルから...

正常なオリジナル

 上にB チャンネル再建法ツールを掛け、徹底的に黄色味を削減した結果です。

上にBチャンネル再建法適用 (緑、褐色調整レイヤー不使用)

 かなり、色あせ感が出ています。次に、Ver. 5.4, 5.5 で追加した黄色戻し補正レイヤーを掛けてみます。また近景補正レイヤーでも黄色い部分 (左下の黄色い花) の補正適用除外のためのマスク編集を行います。その上で RGB 合成を掛けた結果が以下です。

緑、褐色調整レイヤーを使って黄色味を復元
黄色部分補正適用除外編集適用

 かなり、オリジナルが再現できています。97, 8点程度はあげられるのではないでしょうか。

 

 次に、上の画像を基に人工的に不均等黄変画像を作って、効果を確かめてみます。

人工黄変をつけた画像

 自由選択で範囲指定して、その部分の B 値をトーンカーブを使ってリニアに引き下げました。化学変化による黄変とはかなり違って、黄色味がきつい感じですが、実験ですので...

 これに B チャンネル再建法を適用して出力した結果が以下です。

B チャンネル再建法適用出力結果

 周辺補正、遠景補正レイヤーは使用せず、他のマスクの編集も行っていません。今考えると、近景補正レイヤーマスクにおいて、こちらでも黄色い花の部分の補正適用除外編集を行うべきでしたが、やり忘れました... もしやっていれば左下の黄色い花の黄色味は、上の事例と同様、ちゃんと回復しているはずです。

 ただ、人工的できつい黄変のためか、山や紫の花にまだ微妙に黄色味が残っています。空もごく僅か黄色味が残しています。そこで、さらに黄色味を取るために相対RGB色マスク画像作成ツールを使った追加補正を試みます。ただ科学的なフィルム変成による黄変だとほぼ追加の黄変補正は必要ないケースが多いと思われます。

 上の、人工黄変画像に対して、相対RGB色マスク画像作成ツールを使ってイェロー透過マスクを作成します。

マスク作成過程1

 閾値を 40, 輝度範囲を 0~255 でイェロー透過マスクを作成し、TIFF ファイルとして出力します。ここでは輝度範囲を制限せず、不要部分は、GIMP上で編集することにしました。

マスク画像を GIMP のレイヤーに読み込む

 このマスク画像を、GIMP上で、オリジナルを複製したレイヤーに対してマスクとして読み込みます。次に、そのマスクの編集 & 表示モードに切り替えます。

マスク作成過程2

 黄変以外の部分に対するマスク効果を除外するため、マスク上で範囲指定を行い、除外部分を黒塗りしていきます。

マスク作成過程3

 不要部分を黒塗りしたところで、トーンカーブを使って B 値を引き上げます。

色調整過程

 山や空の残像黄変はだいぶましになりましたが、花びらの黄変が取り切れません。範囲も狭いので、マスク画像を作成することはせず GIMP の類似色範囲指定を使って補正することにしました。

 画面の赤紫の部分を指定し、さらに自由範囲選択を重複モードで掛けて、適用範囲を狭めます。

範囲指定

 その上で再びトーンカーブを使って青の値を引き上げます。

花びらの青補正中

 上の編集を出力したものが下記です。

復元結果

 比較のため再度オリジナルを掲げます。最初に黄色い部分の適用除外編集を忘れていなければ、黄色い花の黄色味も維持できていたはずです。その点を除けば、完ぺきとはいきませんが、オリジナルにまずまず近づいた結果が得られました。90点以上はあげられるでしょう。

正常なオリジナル

 実際に黄変したネガフィルムのスキャン画像ではオリジナルの画像を得ることができませんが、本ツールを使えば、この程度の復元が可能であろうことが推測できます。

 

----

 次にデジタルカメラで写した画像でも、正常な画像から、一旦黄色味を除いて、そのあとどこまで回復できるか試してみました。まずオリジナル画像です。以前にもお見せしたことがありましたが、新緑が写っており、もともとかなり黄色味の強い画像です。

オリジナル

 次に Ver. 5.5 を使って徹底的に黄色味を削減した状態です。暗部補正、近景補正、オリジナル B レイヤーのみ使っています。当然黄色味を戻すレイヤーは使っていません。

黄色味削減状態

 当然ですが、かなり色あせた感じになりました。

 ここから、褐色及び緑調整レイヤーをオンにして、復元を図ります。しかし...

黄色味復元 (default)

 今一つ黄色味の戻りが良くありません。そこで...

黄色味復元 再調整

 緑調整レイヤーのマスクの明るさを明るくしたり、塗潰しレイヤーの明るさを暗くしたりしてここまで戻しました。ただ、緑調整レイヤーのマスクを無効にしないと、完全には元通りにはならない感じです。

 なぜこうなるのか原因を探ってみます。

 まず、オリジナルの B チャンネルを確認してみます。

オリジナル B チャンネル

 それに対して B チャンネル再建法 (褐色・緑調整レイヤー使用) で再構成した B チャンネルは...

復元補正後の B チャンネル

 黄色味を戻すレイヤーを有効にしているにもかかわらず、オリジナルの B チャンネルと比べると、木の先端の若芽が出ている明るい部分を中心に、全般的に結構明るくなってしまっています。B チャンネルが明るいと青みが強くなるので、これが問題です。

 緑復元マスクを確認してみます。

緑調整レイヤーマスク

 先ほどの若芽などの明るい部分は、透過度があまり高くなく、やや黒っぽいです。このため黄色の戻りが良くないことが分かります。緑調整レイヤーのマスクは、緑~黄緑では、透過度が高くなるようにパラメータを設定していますが、純黄色に近づくと、透過度は低くなるように設定しています。そのため若芽などの明るい部分はかなり黄色に近いのでこのようになるようです。

 ただ、このパラメータ設定は、黄変部分に関してはあまり黄色みを戻したくないためなので仕方ありません。となると、黄色い部分を残したい場合は近景補正レイヤーのマスクを編集してもらうしかありません。

 というわけで、近景補正レイヤーマスクも確認します。

近景補正レイヤーマスク

 当然ながら青空以外はほぼ全面透過に近くなっています。やはり、根本原因は、新緑の明るい部分はかなり純黄色に近いため、B チャンネル再建法の黄色戻しのためのレイヤーだけでは、戻しきれない、ということになります。従ってこのケースの場合、オリジナルに近く戻したいなら、近景補正レイヤーマスクにおいて、黄色味の強い部分に対し、補正適用除外マスク編集を行って対応するのが一番正解ということになります。

 そこで、近景補正レイヤーを編集する必要がありますが、どうしようか考えて、R チャンネル画像を反転したものを、元々の近景補正レイヤーマスクと比較暗で複合したものを、新しい近景補正レイヤーとすることにしました。その理由は、そもそもかなり黄色味が強い (= 黄色の彩度が高い) 場合、光の三原色の原理上、R の値も高いためです。つまり黄色の彩度と R の値の高さは比例するためです。

 まずオリジナルの R 画像です。

オリジナル R

 上の画像を反転します。

反転 R

 これをオリジナルの近景補正レイヤーマスクと、比較暗で統合します。

編集済み近景補正レイヤーマスク

 このマスクを近景補正レイヤーにつけて B チャンネルを再構成すると...

再構成 B チャンネル

 かなりオリジナルの B チャンネルに近づきます。これを使って RGB 合成を行うと...

上の再構成 B チャンネルを使った RGB合成結果

 かなりオリジナルに近く再現できています。

 上で、なぜ元々の近景補正レイヤーマスクに、R 画像を反転した画像を比較暗で合成した画像を新たな近景補正レイヤーマスクとしたかというと、黄色というのは、B 値が低く R, G 値が高い色です。もし G だけが高く、R (と B) が低いと純緑に近くなります。ということは R 値が高いと、黄色味が高い可能性が高まります。

 そこで、R 画像を反転すると、黄色味が強い可能性のある場所が黒っぽくなるはずです。それを従来の近景補正レイヤーと比較暗で合成すれば、黄色味の強い部分の補正を抑制し、黄色を保全するマスクになる、という訳です。

 B チャンネル再建法とは、基本的に画像中の黄色い部分を削減する方法ですので、逆に黄色い部分で保持したい部分がある場合は、近景補正レイヤーのマスクを編集することが必須です。その際保持したい黄色い部分の形状が複雑だと面倒です。そこで、反転した R 画像を既存の近景補正レイヤーマスクと比較暗で合成する方法は、比較的簡単に、近景補正レイヤーマスクにおいて、黄色を保持したい補正除外部分のマスク編集を可能するテクニックとして使えると思います。

 なお、この実験の結果を受けて、今回の Ver. 5.5 にはこの編集のための画像 & レイヤーを追加することにしました。それが、近景補正マスク補正除外編集用画像: ******_Fg_Mask_Yrsv.tif です。なお、黄色の彩度がとりわけ高いわけではない場合、わざわざここまで手間をかける必要はありません。というのはある程度緑 or 褐色調整レイヤーで黄色い部分が復元されるためです。

 

 いずれにせよ、B チャンネル再建法 Ver. 5.5 において、削減しすぎた黄色味を戻す方法は下記のとおりです。

1. 緑色部分 → 緑調整レイヤー適用

2. 褐色、肌色部分 → 褐色調整レイヤー適用
 (なお元々マゼンタに寄った画像の場合はマゼンタ被り用褐色調整レイヤー使用)

3. 黄色部分 → 近景補正レイヤーのマスクにおいて補正適用除外部分を編集