11月に本ツールをバージョンアップして褐色補正レイヤーを追加しました。今回、その後さらに見直してさらにいくつかの大きな変更を付け加えました。特に出力するレイヤー構成を再度見直したため、今回 GIMP 用のファイル読み込みプラグインの更新も必要になっています。
今回のバージョンアップは、昨年夏に行った黄色削減アルゴリズムの見直しに次ぐ、大きな改変となっています。今回のバージョンアップにより、追加補正の必要性がなくなるケースが増えていると思いますが、スキャン時点で黄変以外のカラーバランスが崩れている場合では、依然として追加補正が必要です。特にスキャナドライバで自動ホワイトバランス補正が掛かるような場合、スキャン時点で黄変があるため、バランスを取ろうとして他の部分がマゼンタに傾いているケースがありますが、そのような場合はやはり追加補正が必要になります。
また、次のような場合は、そもそも本ツールでうまく補正できないことがあります。(1) B チャンネルのレベルが極端に低下して、全体的に真っ黄色に変色している画像、(2) 元々、原色など、単色の人工物が画像面積の大半を占めている画像。
(1) に関しては、本ツールは、B チャンネルの情報が損傷しながらもある程度残っていることを前提として組み立てているため、B チャンネルの情報の大半が失われていたり、本来の値の高低関係が滅茶苦茶になっている (例えば本来値が高かったピクセルと低かったピクセルの値が逆転したり、同等値になっているような) 状態では、本ツールの枠内では救済編集が困難です。このようなケースの補正についてはこちらの記事をご参照ください。なお、画像を一見しただけでは救済可能な画像かどうかの判断は困難です。
(2) に関しても本ツールは、R, G, B の各チャンネルが、本来相互にある程度相関が高い (似ている) ことを前提としています。このため、原色など、単色の人工物が画像面積の大半を占めていると、R, G, B 相互が大きく異なるため、本ツールでは修正が困難となる可能性があります。補正困難な場合、このような画像は、手探りで一つ一つアドホックに編集作業を行うしかありません。
今回の大きな変更点としては以下のようなものがあります。
・B チャンネルのレベルが褪色のため低下して黄色くなっている画像を読み込むと、自動でレベル調整を行ってから補正ファイルを作成する (但し 16bit よりビット深度が深い画像のみ)
・緑保護オプションを廃止して、その機能を緑調整レイヤーを追加して引き継いだ。この際アルゴリズムも見直し、以前のバージョンで緑保護オプションをオンにしたときに、黄変の影響で不自然な結果が出てしまう場合があったのを、極力抑え、なるべく自然な結果が得られるようにした。
・褐色調整レイヤーを2重に設定するようにし、一枚は通常の画像用、もう一枚はスキャン時に既にマゼンタに傾いた画像用とした。
・以上に伴う全般的なレイヤー構成の見直し
なお以上の変更にかかわらず、以下のようなマスク編集は引き続き必要になります。
1. 周辺補正レイヤー使用時の周辺補正レイヤーマスクの編集
(使用しない場合は編集不要)
2. 遠景補正レイヤー使用時の遠景補正レイヤーマスクの編集
(使用しない場合は編集不要)
3. 元々黄色い部分がある場合は、近景補正レイヤーマスクに対して、黄色味が削られないようにするため該当部分を黒塗り編集する必要にある場合がある。
4. 紫系統部分は、褐色補正レイヤーにおいて、補正適用除外のためのマスク編集が必要になる場合がある。
3. に関しては、褐色調整レイヤーをオンにすると、ある程度、本来黄色い部分の黄色味も戻ります。しかしそれでも足りない場合、この編集が必要になります。但し、今回のこの編集をサポートするための補助画像をつけました。
ともあれ、なるべくマスク編集を減らしたり、楽になるような方向に改良を進めてきたつもりです。
なお、上で述べたように今回のバージョンアップにより、B チャンネル再建法適用後の追加編集が必要なケースが減っているはずです。但し、B チャンネル再建法はあくまでも B チャンネルの編集調整しか行いません。従って他チャンネルの編集が必要な場合 (特にマゼンタ被りなど) は、引き続き追加編集が必要です。
特にマゼンタ関係の追加編集 (G チャンネルの編集) が必要な場合は、次の2ケースです。
1. フィルム黄変がややオレンジがかっているため、黄変を取り除いた後にマゼンタの汚れが残る場合
2. そもそもフィルムスキャン時点で、ややマゼンタに寄っている、マゼンタ被りが見られる場合
■バージョンアップ内容詳細
1. B レベル低下画像の自動レベル調整
B レベルが低下して全体的に黄色くなっている画像の B レベルを自動的に引き上げて補正します(B チャンネルの平均明度が他チャンネルの平均明度の70%未満の場合適用)。但しこの補正過程は、諧調間隔の調整を何度か繰り返しているため、8bit画像だとビット深度が不足し、丸め誤差、トーンジャンプの盛大な発生のため適切な結果が得られません。従ってこの機能は 16bit 以上の画像に限定しています。8bit の画像で利用されたい場合は、必ず一旦 16bit 画像に直してから本ツールに掛けてください。
ただ、黄変がかなりひどいケースの場合は、自動レベル調整を無効にしたほうがかえって良い場合も見られますので、適用するかどうかはケースバイケースで判断してください。
2. 緑保護オプションを緑調整レイヤーに変更
今回、緑保護オプションを廃止する代わりに、緑調整レイヤーを新設することにしました。そのほうがより適切な編集が行いやすいためです。この調整レイヤーを使用しない場合は非表示にしてください。緑調整レイヤーの編集方法については、下にリンクのはってあるマニュアル 5-3 をご覧ください。
3. 褐色調整レイヤーの二重化
前回の Ver. 5.4 から褐色調整レイヤーを追加しましたが、今回二重化しました。1枚目は、黄変している点を除いてはオリジナル画像のホワイトバランスが取れている (マゼンタ被りが見られない) 画像向けで、もう1枚は、フィルムスキャンした時点で既にマゼンタ被り、偏りや周辺青変褪色が見られる画像用です。Ver. 5.4 で追加したレイヤーと同じものは2枚目の褐色調整レイヤーです。デフォルトでは2枚目が可視化され、1枚目は不可視化されていますが、オリジナル画像の状態によってどちらかを選択して使って下さい。画像の変褪色の程度が軽い場合は1枚目を使ったほうが良い結果が得られ、マスク編集の手間も少ないと思いますが、そうでない場合は2枚目を使ったほうが良好な結果が得られます。
このレイヤーは褐色を中心とした赤系統が強い部分の黄色味を戻すレイヤーですので、褐色のみならず、クリーム色、肌色などの黄色味も戻します。
4. 前景補正レイヤーマスクの統一
Ver. 5.4 以前では前景補正レイヤーに掛けるマスクのタイプを選択できるようにしていましたが、今回から Type2 マスクに統一しています。これは、緑保護オプションを廃止して Type3, 4 マスクが不要になったためと、コード量を減らすために、最初に採用した Type1 マスクを廃止したためです。
そもそもマスクを掛けたくない場合は、GIMP 上でマスクを無効にしてください。
5. 近景補正用レイヤーマスク補正除外編集用画像
近景補正用レイヤーのマスクに対して、黄色い部分を維持するための補正除外編集をサポートするための素材画像ファイルをつけました。これを使った近景補正レイヤーの適用除外編集の方法については、近日中に別稿でアップします。
6. 作成するファイル名一覧
Rチャンネルイメージ: ******_R.tif (編集はしないが必須)
Gチャンネルイメージ: ******_G.tif (編集はしないが必須)
暗部補正イメージ: ******_Shadow.tif (暗部の黒の締りがないときのみ使用)
遠景補正イメージ: ******_B_Bg.tif (効果があればケースバイケースで使用)
緑補正イメージ: ******_Green_Adjst.tif (必要に応じて使用) (Ver. 5.5より追加)
褐色補正イメージ: ******_Brown_Adjst.tif (概ね使用したほうが良い) (Ver. 5.4より追加)
周辺褪色補正イメージ: ******_Periph_Adjst.tif (周辺青紫化褪色がある時のみ使用)
近景補正イメージ: ******_B_Fg.tif (必須)
オリジナルB Ch.イメージ: ******_B.tif (必須)
近景補正マスク: ******_Fg_Mask.tif (マスク編集リセット用バックアップ 以下同)
遠景閾値マスク: ******_Bg_Thld_Mask.tif
周辺補正マスク: ******_Periph_Adjst_Mask.tif
暗部補正マスク: ******_Shadow_Mask.tif (Ver. 5.1より追加)
緑補正マスク: ******_Green_Adjst_Mask.tif (Ver. 5.5より追加)
褐色補正マスク: ******_Brown_Adjst_Mask.tif (Ver. 5.4より追加)
近景補正マスク補正除外編集用画像: ******_Fg_Mask_Yrsv.tif (Ver. 5.5より追加)
今回、新しいレイヤーを追加しただけではなく、周辺補正レイヤーの位置を、近景補正レイヤーのすぐ上に移動させました。
本プログラムのダウンロードはこちらからどうぞ。
今回のバージョンは、UI の変更、ならびにレイヤー構成の大きな変更があるため、改定した 5-2, 5-3 マニュアルを近日中に公開する予定です。詳しい編集手順に関しては、改定後の 5-3 マニュアルをご覧ください。
5-1. 具体的な補正実施手順 - 準備
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なお、本記事で紹介した写真補正技法やソフトウェア (Plug-in) は個人的用途および非営利目的であれば自由に使っていただいて構いませんが、本技法を使って何らかの成果 (編集した写真等) を公表する場合は、本記事で紹介した技法を使った旨クレジットをつけて公表していただくことをお願いします。
また、本ソフトウェアは現状のまま提供されるものし、作者はこれを使ったことによるいかなる損害補償等にも応じられないことを了解の上使っていただくものとします。
但し、もしソフトウェアのバグがありましたら、ご連絡いただければなるべく改善するよう努めたいと思います。
営利・営業目的で使用される方は別途ご相談下さい。
また、私の作成したPlug-inも自由に改変して使用していただいて構いませんが、その成果を公表する場合はご一報下さい (公表しない場合は特に連絡は必要ありません)。またその改良した結果を私の方で自由に利用させていただくこともご了承下さい。
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