目次: ART を使った不均等黄変ネガフィルム画像の補正テクニック
(1) チャンネル再構成で黄色味を消す
(3) 青色の中の相対的黄色部分を指定する (本ページ)
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ART を使った不均等黄変ネガフィルム画像の補正テクニックも三回目になりました。今回は青色の中で相対的に黄色い部分を指定する方法です。フィルム画像の青い部分が黄変しているケースです。このような部分は「客観的に」黄色いわけではないので (客観的に黄色いとは、RとG の平均値が B の値を上回っていることです)、色範囲指定として至難の業です。このような色範囲指定は拙作のツール以外ではほぼ不可能かと思います。同様なパターンとしては、論理的には、例えば赤の中の相対的シアン、だとか緑の中の相対的マゼンタ、あるいは黄色の中の相対的青なども考えられますが、フィルムの褪色に伴う変色パターンとしてはちょっと考えられないので、それらについては割愛します。
このような変色パターンがある場合、青のなかの黄変は、他の部分の黄変とかなり色レベル的に差があるので、他の部分の黄変は補正できても、青のなかの黄変は残ってしまいがちです。
そこで、今回青の中の黄変を指定する方法に特化して説明します。まず以下のサンプル画像をご覧ください。
山小屋の青い屋根に黄変があります。それ以外の部分も黄変が掛かっていますが、今回は説明の都合上そちらは無視します。
今回は、相対色領域補正 CTL スクリプトを使いますが、基本的には、チャンネル再構成スクリプトを使っても範囲指定の仕方自体は同じです。
では相対色領域補正 CTL スクリプトを有効にし、色領域を黄色、そして対象色領域表示にチェックを入れましょう。
但し、このままだと屋根の部分はほとんど含まれません。そこで閾値調整で範囲を拡大します。
閾値調整で 0.123 更に対象色の傾きで右に思いっきりスライダーを動かしました。青色以外の部分もかなりマスクの強度が上がりましたが、ここでは青色部分の方変のみ考えます。これで青色の黄変部分がほぼカバーできたように思われます。
次にこの範囲指定を屋根部分のみに制限するため、パラメータ指定マスク (色相) とエリアマスクを組み合わせます。分かりやすいようにマスク表示を有効にします。
この上で、一切のマスク表示をオフにし、色のスライダーを使って補正を掛けます。
ブルーのスライダーを右に寄せると、きれいに屋根上の相対的黄変が消えました。なお、屋根の青に不均等な部分がなお残っています。画面の右上端ですが、これは、周辺青変褪色が起こっているためですので、別途補正します。なお、周辺青変褪色の補正に関しては、次回以降解説します。
なお、青い部分の黄変と他の部分の黄変がある場合は、先の編集インスタンスで青い部分の黄変を修正し、その次のインスタンスで他の部分の黄変の補正を行うのがよいと思います。ちなみに ART のカラー/トーン編集における編集インスタンスの上下関係ですが、下のインスタンスは、上のインスタンスで補正した結果に対して、補正を加えるようになっています。