省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

高崎近郊信越線ローカルで運用されたクハニ67902 (1975.10)

 先日、本車の僚機であるクハニ67900の写真を紹介しましたが、こちらは902です。やはり伊東線用にクハ55から改造されましたが、1964年に伊東線113系化と共に、列車や気動車で運行されていた信越本線高崎-横川区間運転の置き換え用に新前橋に移ってきました。伊東線伊豆急との直通運転が開始後、乗客が大幅に増加し、重要路線として横須賀線と同時に113系が行われました。一方の、高崎-横川間は、1962年の横軽間アプト式廃止と共に電化されたようですが、本車によって置き換えられるまで、依然この間の区間運転は気動車やEF53が牽引する客車列車によって行われていたようです。

 900との違いは、本車は1941年製、末期のクハ55から改造されており、そのためリベットがなく溶接になっていたこと、および最後まで全面窓がHゴム化されていなかった点です。

f:id:yasuo_ssi:20210802095844j:plain

クハニ67902 (高シマ)

f:id:yasuo_ssi:20210802100228j:plain

正面
続きを読む

darktable 3.6.1でbase curveを使わずNX Studioに現像結果を似せる

f:id:yasuo_ssi:20211128195339p:plain

 ここのところNX Studioの現像内容を検討してきて、NikonカメラのRawファイルは、やはりNX Studioで現像するのが基本だな、という思いを強くしてきました。デフォルトでカメラ設定を反映してくれること、そしてやはり梅レンズが松レンズになる色収差補正能力の高さは特筆ものです。さらに、オールドモデルのカメラでも最新のピクチャーコントロール等が使えます。撮影当時より、より良いイメージで現像できる可能性が広がります。

 しかし、先日、darktable3.6.1の、高ISOのノイジーな画像に対するノイズ低減効果の劇的改善を見て、少なくとも高ISOノイジー画像の現像には、darktableの選択は十分ありと思わされました。特にdarktableのdenoize(profiled)はRawファイルでないと有効に動かないので、現像から行う必要があります。となるとdarktableの現像結果をNX Studioに近づけるにはどうしたら良いか、ということを考えざるをえません。

 ただ、darktableの現在向かっている路線は、今までのRaw現像ソフトの路線を否定するところにあります。RawTherapeeやARTならカメラ固有の特性を反映したDCPを適用することでかなり似せることができますが、darktableでは一筋縄ではいきません。

 そこで、ここのところ何度も登場しているサンプル画像です。まずNX Studioでの現像結果をお示しします。

f:id:yasuo_ssi:20210812235946j:plain

NX Studio デフォルト

 いわばカメラメーカーレファレンスの絵作りです。灯りの温かさが感じられます。因みにニュートラルで現像したものは以下です。NX Studioのデフォルトと色がかなり違っており、NX Studioで、カメラ固有のルックアップテーブルが適用され、色づくりがされていることが分かります。

f:id:yasuo_ssi:20210812235121j:plain

ニュートラルで現像
続きを読む

Olympus Workspaceを使ってみる

f:id:yasuo_ssi:20210826231613j:plain

 さて、今メインで使っているカメラはNikonですが、以前はOlympusの4/3のカメラを使っていました。今も家には4/3のE-5とm4/3のE-P3が転がっており、サブとして使うこともあります。いずれも10年前の機種で、あまり性能のよろしくない、と言われていたパナソニックのセンサーを使っていた頃の機種です。

 Olympusの純正Raw現像ソフトは以前はOlympus Viewerで、私も使っていましたが、いつの間にかOlympus Workspaceに代わっていました。それでこれもインストールしてみました。

 Olympusの純正現像ソフトは、多くの他社ソフトと異なり自社開発なので、カメラ内現像の結果が忠実に再現されると言われていました。ネットで書かれていることを見ると、OlympusCanonは自社開発、Sonyは自社開発だが、自社開発の純正現像ソフトは出来が悪く、Sonyユーザーなら無料で使えるCapture One Express for Sonyを使った方が良い、Panasonic, Fuji, Pentax, Nikonは市川ラボのOEMだから、カメラ内現像と同じ結果が出ない... etc.

 この手のうわさがどこまで本当なのかどうか分かりませんが、少なくとも Nikonに関しては、NikがGoogleに買収され、急遽Capture NX-Dに切り替えられた当初はともかく、現在では当てはまりそうもないということは確認できました。特にNX Studioは、速度が速くなったこと、そしてカメラ内の種々の設定や補正がデフォルトで反映される点で、いちいち設定をいじらなくても済み、かなりメリットが大きいことが確認できました。色収差補正の優秀さも特筆ものです。

 そこで、今回Olympusの純正現像ソフトを久々に更新して使ってみました。ただ、このソフトウェアいまだに32bitアプリですね ([追記] 本記事執筆時点。OM 分社時点で 64bit 化されたようです)。もちろんパフォーマンスが良ければ32bitでも構わないのですが... 読み込んだのはE-5で撮影したRawファイルです。NX Studioだったら、ゆがみ補正や色収差補正など基本的な補正がデフォルトで読み込んだ段階でかかりますが、Olympus Workspaceでもかかるようです。

f:id:yasuo_ssi:20210914112814p:plain

Olympus Workspaceで読み込んだところ
続きを読む

ART / RawTherapeeとカメラプロファイル

f:id:yasuo_ssi:20210904211415j:plain

 さて、ART1.9.3のカメラプロファイルの扱いですが、RawTherapee5.8と違っている点に最初に気づいたのは、カメラ固有プロファイルを適用したときのトーンカーブの自動調整の扱いです。前にも述べましたが、本家5.8だとカメラのDCPプロファイルを指定し、トーンカーブを流用した場合、露出タブのトーンカーブの自動調整を使うと明るすぎます。このトーンカーブの自動調整は、Rawファイルに含まれるプレビュー用Jpeg画像から生成されますが、DCPプロファイルのトーンカーブを流用するとDCPプロファイルのトーンカーブと、プレビュー画像から生成されたトーンカーブが、何かの拍子で二重にかかってしまうため、過剰に明るく補正されることが多いです。一応は、自動生成のトーンカーブからDCPトーンカーブを差し引くことになってはいるようなのですが。しかしARTだと自動生成されたトーンカーブからDCPプロファイルのトーンカーブを差し引いた差分が確実に指定されるため、DCPプロファイルを流用した場合でも、トーンカーブの自動調整がおかしくなりません。

 そこで、ARTにおける、カメラプロファイルとトーンカーブヒストグラムの関連を探ってみました。

 まず、ARTにNikon D5500で撮ったRawファイルをデフォルトの状態で読み込んでみます。

f:id:yasuo_ssi:20210910220743p:plain

ARTでデフォルトで読み込んだ状態
(カメラの標準的プロファイル+トーンカーブ自動調整)

 次に、AdobeのD5500カメラ固有プロファイルの中の、StandardのDCPプロファイルを、ARTのDCP Profileディレクトリに、NIKON D5500.dcpと名前を変えて置きます。というのはARTにはRawTherapeeと同様予めD5500のカメラ用DCPプロファイルが用意されていないからです。この状態で先のファイルを、現像設定(サイドカー)ファイルを削除して、もう一度読み込みます。

f:id:yasuo_ssi:20210910221025p:plain

ARTにD5500用カメラプロファイル適用
(カメラ固有のプロファイル+トーンカーブ自動調整)
続きを読む

ART / RawTherapee 機能紹介 - メタデータ編集

f:id:yasuo_ssi:20210904211415j:plain

 今回は、ART / RawTherapeeにおけるメタデータ編集機能に関して紹介します。メタデータ編集機能に関して、RawTherapee本家と大きく違うのはメタデータ編集エンジンにExiftoolを使っている点です。このため、RawTherapeeに比べて、編集できる余地が大きく増えています。

 そもそもメタデータ(Exifデータ、およびIPTCデータ、つまり画像ファイルに対するコメントや撮影情報データ)を編集するフリーソフトに関してですが、少なくとも日本語が扱える、GUI対応のメタデータ編集ソフトだと、扱える画像形式が限られるなど制約の大きいものばかりです。これに対してコマンドライン(CUI)対応のExiftoolは、現状、最も様々な形式のファイルを扱え、また編集できるデータの範囲も最も広いですが、コマンドラインからでしか扱えず、コンピュータに詳しくない方にはちょっとハードルが高いのが難点です。

yasuo-ssi.hatenablog.com

 これに対して、Exiftoolを使いやすいようにGUI化するツール(GUIフロントエンドソフト)も存在しますが、いずれも海外製で日本語データ(UTF8)を扱うのに難があります。

 ARTの良い点は、ARTのメタデータ編集機能のエンジンとしてExiftoolを使っているため、Exiftoolの日本語対応フロントエンドソフトとして使えるという点です。ただし、Raw ファイル自体は書き換えないので、サイドカーファイルは保存しておく必要があります。

 以下、本家とARTのダイアログの違いを比較します。

Exifデータ

f:id:yasuo_ssi:20210909170725p:plain

Exifデータダイアログ

 ダイアログの形式が若干違いますが、Exifデータの閲覧に関しては両者に機能差はありません。しかし編集できる範囲が異なります。ARTでは編集が可能なのは、デフォルトでチェックが付く、ベーシックのすべてが編集可能です(それ以外は編集不可)。しかし、RawTherapee本家では、次の4項目しか編集できません。

 なお日本語を使う場合はImageDescriptionをcharset=Unicodeにしてください(UTF-8だと受け付けてくれません)。無効なパラメータを書きこもうとすると、受け付けません。Exifデータに無効なパラメータを指定すると、そもそも画像ファイルが読み取れなくなることがあるので、好ましい設定です。

f:id:yasuo_ssi:20210909171136p:plain

RawTherapeeで編集可能なExifタグ

IPTCデータ

f:id:yasuo_ssi:20210909172519p:plain

IPTCダイアログ

 こちらはARTでどれほど編集可能な項目が増えているか自明です。

 なお、メタデータ編集で項目を編集しても、オリジナル画像ファイルのメタデータが変更されるわけではありません。あくまでも、この情報を基に出力した画像ファイルのメタデータがオリジナル画像のメタデータから変更されるという点にご注意ください。

 ただ、ここで編集した内容は現像設定ファイル(サイドカーファイル)に保存されるので、再びオリジナルファイルを開いたときに変更された内容はそのまま出てきますが、決してオリジナル画像ファイルのメタデータが変更されているわけではないので誤解のありませんように。

 なお、Linux版の場合ExiftoolとARTは別々にインストールしなければなりませので、ARTとExiftoolのバージョンの不整合があると、Raw画像の読み込みに支障が起こる場合があります。Windows版ではARTインストールの際に、ExiftoolもARTのディレクトリ内にインストールされますので、問題は起こりません。

Raw現像ソフトが利用可能なカメラプロファイルの形式

f:id:yasuo_ssi:20210826231613j:plain

 一般に、Raw現像ソフトはカメラRawの発色やトーンの割り付けをコントロールするカメラプロファイル情報を使っています。

yasuo-ssi.hatenablog.com

 代表的なカメラプロファイルとしては、Adobeが規格を決めたDCP (DNG Camera Profile) プロファイルがあります。DCPプロファイルは、Adobeが無償で配布している DNG Converterもしくは、最新版 Camera Raw Plugin を入手することによって手に入れることができます。 また、カメラの対応状況の一覧はこちらにあります。

 ただAdobeのRaw現像アプリケーションソフトはDCPプロファイルを参照できますが、当然ながら他社のソフトでは必ずしもDCPプロファイルが利用可能とは限りません。そこでWeb上の情報、あるいは実際にソフトウェアを確認して、Adobe製を除く (Lightroom が読み込めるプロファイルは、当然 DCPプロファイルなので) 主要な各Raw現像ソフト が利用するカメラプロファイル情報についてみてみたいと思います。なお、こういう観点からのRaw現像ソフト紹介はほとんど(全く?)ないと思います。

 

Raw現像ソフト カメラプロファイル形式 備考 確認方法
RawTherapee DCP および icc   現物確認
ART / RawTherapee DCP および icc RTよりもいち早く対応 現物確認
darktable 独自内部データ / iccプロファイル認識可能

$DARKTABLE/share/darktable/color/in

iccプロファイルを置く

参照先
Capture One icc   参照先
Luminar fpmcp形式(独自) / DCP認識可能   参照先1
参照先2
DxO Photolab DCP および icc   参照先
Affinity Photo 独自データ   参照先
Zoner Photo Studio DCP認識可能   参照先
Corel Aftershot Pro icc   参照先

 なお、darktableは、3.6からデフォルトとなった、シーン参照ワークフロー(リニアワークフロー)において、ベースカーブ (カメラプロファイルに付属するカメラ特性に応じた基本的トーンカーブ、DCPトーンカーブ) を使わないことを推奨しています。つまりメーカー推奨の色づくりを否定しています。これは、カメラプロファイル付属のトーンカーブが非リニアな色空間を前提しているためと思われます。

 

 SILKYPIXは不明ですが、たぶん内部独自データで対応しているものと思われます。CyberLink PhotoDirectorはそもそもカメラプロファイルがないとされます*1。ただ、これはユーザが分からないところで自動的にプロファイルが適用されているのか、それともdarktableのシーン参照ワークフローのようにカメラ固有のトーンカーブやLUTを使うべきでないと考えているのか分かりません。

また、カメラメーカー純正のRaw現像ソフトの大半はデータを独自内部データとして持っていると思われます。

Affinity Photoは出力プロファイルとしてはiccプロファイルを利用可能ですが、入力プロファイルとして使うことはできません。

 

 なお、DCPをiccカメラ入力プロファイルとして変換するツールが以下にあります。

sourceforge.net

 逆にiccプロファイルをDCPプロファイルに変換ツールが以下にありましたが、試していないのでうまく動くかどうか分かりません。ただDCPプロファイルはiccプロファイルより項目が多いはずですので、うまくいかない可能性が高いです。

github.com

こちらは、dcamprofです。これでもDCPプロファイルからiccプロファイルが作れるようです。

github.com

 また、既存のDCPを編集できるソフトがあります。dcp toolです。dcpを一旦xmlに変換し、編集してから再度DCPのバイナリーファイルを作るということを行うようです。これを使うと、例えば、本来他カメラのプロファイルが流用できないRaw現像ソフト(LightroomやCamera Raw等)で、流用することができたりします。RawTherapeeやARTであれば、わざわざそんなことをする必要はありませんが...

sourceforge.net

*1:以下の記事参照。

www.pcmag.com

darktable3.6.1で、高ISOノイジー画像のノイズ低減効果が劇的改善

f:id:yasuo_ssi:20210826231613j:plain

 バージョンが3.6.1になって、ようやくWindows環境でdarktable3.6が使い物になるようになりました。そこで今動作確認中です。まず、すでに指摘したと思いますが、3.4から3.6に変わって、デフォルトのワークフローが、ディスプレイ参照ワークフローから、darktableで推奨するシーン参照ワークフロー(リニアワークフロー)に変わりました。

 それと前にいじっていた画像を再び読み込んで動作の違いを見ているところですが、高ISO画像におけるノイズ低減が大幅に改善されました。これは特筆ものです。以下サンプルを示します。

 まず、一切補正のないRawTherapeeによるニュートラル現像結果を再掲します(Nikon D5500で撮影)。

f:id:yasuo_ssi:20210812235121j:plain

ニュートラルで現像
続きを読む