省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

クモハ51043 写真再調整 / 逆光による露光不足をGIMPスクリーンモード+マスクで補正する

f:id:yasuo_ssi:20210627103216p:plain 先日、GIMPレイヤーモードのスクリーンでの補正を紹介する (粒子の荒れを目立たせずに暗い画像を明るくできる) 際にサンプルとして用いた福塩線クモハ51043の画像ですが、スクリーンモード+マスクで再補正を試みました。

 

 再び、オリジナル写真の掲示から...

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補正前オリジナル
クモハ51043 (岡フチ) 福山駅

 結局この写真をどのように補正したいのか、というと...

・手前の黒っぽくなってしまっている逆光部分を明るくする。

・その一方で黒っぽくなってしまっている部分を明るくしたからといって、過度に白浮きするのも望ましくない。

・明るい部分と暗い部分の差を詰める。かといってあまりにもメリハリのない画像では困る。

 というかなりないものねだり的な補正をやろうということになります。

 もう少し具体的に言うと、手前の線路部分や床下は、ある程度黒っぽくても良いが、車体はもう少し明るくしたい、そして車体の中で明るい部分と暗い部分の差を詰めたい、というあたりですが、問題は、逆光になっている車体の方が手前の線路よりも暗い点です。元々車体の青色20号がやや暗めなのでそうなってしまっています。このままでただスクリーンモードを掛けると、線路の方が明るくなり、車体は相対的に沈んでしまいます(前のスクリーンモードの紹介記事でそうなっています)。かと言って車体だけマスクをかけて明るく浮かせると不自然になりがちです。

 そこで、次のような対策を取ってみました。シャドウ域に青色透過マスクをかけたレイヤーを作成し、それをスクリーンモードでオリジナルレイヤーに重ねる。また全体的に明るさが足りない場合は、グローバルにスクリーンモードを掛けるレイヤーをレイヤーで調整する。

 そこで、まず汎用色チャンネルマスク作成ツールを使って、シャドウ部分の青透過マスクを作ります。青透過マスクなら、線路・道床・床下部分の方が、車体部分より暗く(透過度が低く)なりますので、スクリーンモードで重ねても車体の方がより明るくなるはずです。

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シャドウ域青透過マスク
Bチャンネル輝度範囲 14-80 / B閾値 + 15

 

 これを掛けたレイヤーをスクリーンモードでオリジナルレイヤーの上に載せます。結局同じものを2枚載せました。さらに、もうちょっと明るくしたいので、不透明度を28%にした、マスクを掛けないオリジナルレイヤーのコピーを、スクリーンモードでオリジナルレイヤーの上に載せます。以上のレイヤーの順番は下図の通りです。

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GIMPで補正中

 一番下がオリジナルレイヤー、次が不透明度28%のマスクなしレイヤー、そしてマスク付レイヤーを2枚載せました。いずれもスクリーンモードで重ねました。これをTIFFで出力すると以下のようになりました。

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GIMP補正後の画像

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GIMP補正後のヒストグラム

 さらに、出力したTIFFファイルをdarktableでホワイトバランス、露出をマニュアルで補正し、さらにフィルミックRGBでコントラストを補正したものが下記です。

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darktableによる補正後

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darktable補正結果ヒストグラム

 またRawTherapeeでもやってみました。コントラストを補正するのにLab調整で以下のようなトーンカーブを掛けました。黒の浮きを抑えるために、最暗部を直線にし、そこから緩やかな上向きの円弧で補正を掛けています。また若干霞除去やノイズ低減なども掛けてみました。

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トーンカーブ補正

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RawTherapeeによる補正結果

 RawTherapeeを使ったほうが、色相があまり変わらないようでベターです。但し色数は、darktable 129万6305色に対して、RawTherapeeは、68万2609色でした。

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RawTherapee補正結果ヒストグラム

 原因はdarktableによる補正だとR, G, Bのカーブのずれが大きいのに対し、RawTherapee の方は、ずれが少ない、というあたりにありそうです。この場合は色数はあまり気にしないほうが良いように思います。因みに、5月に掲示したRawTherapeeの「ICE色の見えモデル」を使って補正した結果は下記の通りでした。色数は104万1318色でした。

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ICE色の見えモデル2002 適用結果

 色数は少なくても、「色の見えモデル」を使ったり、全面的にトーンカーブ等で補正するよりは、マスク+スクリーンモード+RawTherapeeによるコントラスト補正の方が、粒子の荒れが抑えられている点、色相の変化の少ない点、さらに画像コントラスト面で良い結果が得られているように思います。

 なお、当ブログで何度か言及しておりますが、GIMPで補正した後、最終的にフリーのRaw現像ソフトで微調整 & カラースペースやファイル形式の変換等を行うことを強く推奨します。これはこれらのRaw現像ソフトには色の補間効果があり、最終的にRaw現像ソフトで調整やファイル形式の変換を掛けると、GIMPの編集で発生したトーンジャンプの穴埋め・補間を行ってくれるからです。

 このテクニックはフィルム写真のみならずデジタル写真でも有効に使えると思います。とはいえ、露光不足部分で粒子の荒れが大きくなりがちなフィルム写真で、より大きい有効性があるのは間違いありません。

 

 なお、同様の補正は、拙作の汎用色チャンネルマスク作成ツールを使っていただければ、Photoshopのスクリーンモードでも可能です。