省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

GIMP 写真補正テクニック / レイヤーモード: スクリーン - 粒子の荒れを抑えて画像を明るくできる

 Akkana Peck氏の "Beginning GIMP: from Novice to Professional" というGIMPの入門書が良さそうなので入手しました。Apressという、コンピュータ解説書を中心に出しているアメリカの出版社から出ていたものですが、既に絶版になっています。そこで中古をAmazonで入手しました。

 本当は 2014年に出た第3版を購入したかったのですが、中古でも全く在庫がなく仕方なく、2008年に出た第2版を入手しました。Ver. 2.4の時代ですが、2.6の方向性まで見据えた内容になっています。

 結構いい内容なので、絶版になっているのが残念ですが...

 なお筆者による関連ウェブサイトがこちらです。

gimpbook.com また、作者の個人webサイトはこちらです。

shallowsky.com

 本書のなかのAdvanced Compositingとして紹介されている中から、今まで知らなかった写真補正テクニックを紹介していきたいと思います。

 まずは、レイヤーのスクリーンモードについて... この本の中では"Using Screen Mode for Dark Images" として紹介されています。

 通常、暗い画像を明るく補正すると、結構粒子の荒れが目立ちます。しかし同じ画像をレイヤーとして複写し、重ねるときにスクリーンモードを選んで重ねると、粒子の荒れが目立たずに画像を明るくすることができるというのです。

 因みに公式マニュアルではレイヤーモードの解説は下記にあります。

docs.gimp.org

 ここにも当然スクリーンモードは紹介されていますが、ここに説明されているこの式を見てもピンときませんよね。

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スクリーンモードの式

 因みに、Mが上のレイヤーの画素の値、Iが下のレイヤーの画素の値で、Eがスクリーンモードで重ねたがその値です。要は、255から上のレイヤーの画素を反転した値と下のレイヤーの画素を反転した値を掛けて255で割ったものを差し引いたものが、スクリーンモードで重ねた時の画素の値になるというのですが... もちろん、計算式で書かれている計算自体は小学生でもわかります。しかし計算手続きとして分かるということと、その式の意味を分かることは異なります。簡単な式ではありますが、式の意味はこれを見ただけでは分かりません。GIMPの平滑化が、変褪色した写真の補正に効果があるということがあまり知られていないのも、そのためでしょう。しかし、本書の解説によりますと、上記のような用途に使える、というのです。

 

 そこで試してみました。以前お示ししたことのある福塩線のクモハ51の写真です。逆光で露光不足になってしまったものです。以前お示ししたときは、RawTherapeeの「CIE色の見えモデル2002」で補正を掛けました。これを今回、スクリーンモードで重ねてみます。補正前オリジナルはこちらです。

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補正前オリジナル

 これをGIMPで読み込み、オリジナルレイヤーを複写します(下図)。

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 そして上のレイヤーの、レイヤーモードをスクリーンに変えると、下記のようになりました。

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スクリーンモードで重ねた画像

 さらに darktable のフィルミックRGBでコントラスト調整してみました。

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フィルミックRGB調整後

 なかなか悪くありません。効きが悪いと思ったらさらに何枚か重ねますし、効きすぎだと思ったら重ねるレイヤーの透明度を下げます。

因みに前に色の見えモデルで補正したときは下記のようになりました。

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クモハ51043 (岡フチ) 福山駅

 RawTherapeeの色の見えモデルで補正するよりGIMPのスクリーンモードを使ったほうが粒子の荒れという点では良好だと思います。ただ、RawTherapeeの方はマイクロコントラストが上がっているようで、よりシャープに見えます。それとのトレードオフの関係かもしれません。このスクリーンモードと、マスクを組み合わせると、いろいろと面白い補正ができそうです。今後積極的に活用していきたいと思います。

 なお、ヒストグラムの変化ですが、下記のようになりました。

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オリジナル

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スクリーンモードで1枚重ねたもの

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スクリーンモードで2枚重ねたもの

 スクリーンモードで重ねていくと、単純にヒストグラムが明るいほうに上昇するのではなく、ハイライト部分の比重が増していきます。一方ミッドトーン部分はあまり大きな変化が見られないという特徴を示しました。

 因みにRawTherapeeの色の見えモデルで補正した画像のヒストグラムは下記です。

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色の見えモデルで補正

 

  因みに、Photoshopでもスクリーンモードはありました。例えばこんな解説がありました。

www.wave-inc.co.jp 一応、同じレイヤーを重ねていくと明るくなると指摘してありますね。ただ、単に明るくなるだけではなく明るく補正しても粒子が荒れにくいという特徴は重要かと思います。この解説ではそのあたりの指摘がありません。

 スクリーンモードの解説というと、たいていはカラーの画像にグレースケールの画像をスクリーンモードで重ねると、元の色が反映された画像が付け加わるというような解説がほとんどですが...

 ただ、異なる画像や色をスクリーンモードで重ねる場合は、次のような機能として理解するのが良いかと思います。

 通常、光の色(透過色)を重ねると、反射色(絵の具など)とは異なり、だんだん白っぽくなります。R, G, Bの原色を重ねると真っ白になります。その光の色の混色を再現するのがスクリーンモードということかと思います。ちょうどスクリーン上に光を重ねるのに似ているので、スクリーンモードという訳ですね。

 参考までに、adobe Photoshop公式の描画モードの説明へのリンクも貼っておきます。いちおうスクリーンモードを使うと明るくなるとは指摘されています。

helpx.adobe.com