さて、今まで青空表現を中心にNX StudioのExpeed4相当処理と、6相当処理の違いを見てきましたが、今回は植物の緑を代表する、水田の表現を見ます。下に左半分が4相当、右半分が6相当の画像を掲げます。撮影はNikon D5500です。
右半分の稲の方が、緑っぽく、左半分の方がやや黄緑がかっています。ヒストグラムの違いでその傾向の違いを確認します。
ヒストグラムを確認すると、Expeed4相当処理は、Expeed6相当処理に比べ、B値、R値が高めなことが分かります。Expeed4相当ではGとRの接近が、やや黄緑がかって見える要因となっています。ただしBも上がっているので、過剰に黄緑がからなく見えています。Expeed6相当では、B, Rとも下がり気味なので、より緑緑しているはずです。またB値が特に下がっているので、その分より色が濃くなっています。因みにRawTherapeeで、ニュートラルで読み込むとヒストグラムは以下のようになります。
ニュートラルですと、おおむね、R値がG値の7割前後、B値はR値の半分前後程度(但し4~6割前後とやや変動幅は大きい)というような傾向です。
次にNX Studioで処理したRGB値も見てみましょう。
RGB値も比較します。空と違ってテクスチュアが均一ではなく同じ場所を選んでいるわけでもないので、あくまで参考程度ですが、上のヒストグラムの傾向を裏付ける結果が出ていると思います。Expeed4では、R値がG値の7割前後程度にとどまっているのに対し、Expeed6では、6割前後ぐらいまで下がっています。Expeed4の方がニュートラルの値をそのまま明るくしたような傾向で、Expeed6は意図的に黄色味を減らす方向に補正していると言えるでしょう。
空の表現ではExpeed6相当処理は4相当処理に比べて、B, Rとも高めに出ていましたが*1、水田の表現では逆にB, Rとも低めに出るという反対の結果になりました。それに対しGは変化が少ないです。ただExpeed6の方が微妙に低めかという感じです。Expeed6の方が、B, Rのダイナミックレンジを拡大するような方向に動かし、彩度を上げるように調整しているのかなという気もしますが、もうちょっと様々な画像で検証しないとはっきりしたことは言えません。
今まで検証した結果では、両ピクチャーコントロール間で、ヒストグラムにおけるGの山の異同が少ないので、基本的にはG値を固定し、色相によってB, R値を動かす方向を決め彩度を増強するという方針が取られているのではないかと推測します。
なお、最後に参考までに、Expeed4相当とAdobe Standard DCPプロファイルを掛けた画像を比較します。Adobe Standardを使ってRawTherapeeで現像しています。
Adobe Standardは、明確に、より黄色いです。空の傾向と同じです。ヒストグラムも確認してみます。
真ん中がAdobe Standard プロファイル適用です。これだとやや暗くなるのでGのピークをExpeed4に合わせるように露出を開けたのが、一番下です。Adobe Standardの傾向は、Expeed4に比べるとBもやや上がっていますが、やはりG値とR値が接近している傾向がはっきりしており、より黄緑色に調整されています(緑系統ではRとGが近接すると黄緑色の方向に色が動く)。空の時とは違い、B値が下がる傾向はありませんが、空も含め、より黄色っぽい方向に調整されているのは明確です。
露出を開けた状態でRGB値を測ってみると以下のようになりました。
大体、R値がB値の8割前後になっており、黄緑がかっている傾向は明らかです。植物の緑がどれぐらいの値であるべきかは好みもあって難しいですが、新緑っぽくしたい場合は、黄緑がかったほうが、盛夏らしく落ち着かせたい場合は、緑~青緑の方向に寄せるべきかと思います。Expeed6相当で大体RがG値の6割前後、Expeed4相当で7割前後、Adobe Standardで8割前後という結果になりました。個人的にはExpeed4相当あたりが妥当な線のように思われます。RがGの6割だとやや低すぎて、緑が強すぎるように思います。
なお、直射日光が当たり、それが植物を半透過している状況を表現するには、やや黄緑に寄せたほうがよいのですが、方法としては、RをG値に接近させるのと、B値を下げるという2つの方法があります。おそらく新緑、5月の水田であればRをG値に接近させたほうが、盛夏に近い場合はB値を下げるのが良いのではないかと思います。
また、もし、Nikonのカメラ+Lightroomをお使いで、緑が黄緑がかって気になるという方は、NX Studioでかつ最新のピクチャーコントロールを使った現像を行うことを強くお勧めします。ニュートラルの画像でR値がG値の7割前後であることを考えると、Lightroom を使っていて、画像を読み込んだデフォルトで、空にしろ、植物にせよ、黄色がかるのは、Adobeの意図的な色づくりの結果であることは間違いありません。もちろん、Adobe Standardではなく、カメラ固有DCPプロファイルを適用したり、色温度を調整しても良いのですが、Nikonの純正ソフトは色収差補正の特筆すべき優秀さなど結構メリットが多いということが分かってきましたので、Nikonの純正ソフトで現像したTIFFファイルをLightroom等、サードパーティのRaw現像ソフトで処理するワークフローの方が有利なのではないかと思います。
なお、黄色味がかるのはLuminar3でも同じ傾向でした。ヒストグラムを掲示します。
Bの山の形がちょっと違いますが(ピークがややシャドウ寄り)、RとGの山は露出調整前のAdobe Standardに酷似しています。Luminar3が、Adobe Standardに近い色の方向性を志向しているのは、空の画像と同じです。
なお、これを検証する過程で一つ分かったことがあります。NS Studioの環境設定で、デフォルトの処理を「最新のピクチャーコントロール」にしておいた場合、ピクチャーコントロール設定ダイアログで、[最新のピクチャーコントロール]になっていたとしても、その下で[撮影時の設定]になっていると、カメラのオリジナルのピクチャーコントロール(つまり古いピクチャーコントロール)が適応されます。
この場合、最新のピクチャーコントロールを適用したい場合、例え撮影時の設定がSDとなっていたとしても、改めてメニューからSDを選びなおさないといけません。
一方、環境設定でピクチャーコントロールの適用が[カメラ互換]になっている場合は、ピクチャーコントロールの設定で、[最新のピクチャーコントロール]を選べば、その下が[撮影時の設定]になっていても、直ちに、最新のピクチャーコントロールが適用されます。そして[カメラ互換]に戻せば、古いピクチャーコントロールの適用になります。この点動作の仕方が異なって紛らわしいので注意が必要です。
環境設定では、最新のピクチャーコントロールを常用しないのであれば、デフォルトのピクチャーコントロール適用を[カメラ互換]にしておいたほうが紛らわしくなさそうです。
*1:以下のページをご参照ください。