Raw現像を処理エンジンを変えて検討してみるシリーズの次は、肌の色です。おそらく空の青、植物の緑と並ぶ、写真の3大自然色要素の一角です。以下のサンプルはNikon D5500で撮影しています。
肌の色に関してはExpeed4相当と6相当の違いは肉眼ではほとんど分かりません。若干左半分(Expeed6)の方がごく僅か黄色がかっているかどうか、というところです。境界線はほぼ分かりません。次はAdobe Standardと比較します。
なおAdobe StandardはデフォルトではExpeedより暗めになります。そのため、ダイナミックレンジをExpeedに合わせるため露出調整をしています。さて、Adobe StandardとExpeed間はかなり差がはっきりしており、Expeedの方が黄色っぽく、Adobe Standardは白っぽい(青っぽい)です。空も植物の緑もAdobe Standardの方が黄色っぽいのに、肌の色は反対です。やはりこれは白人が白い肌を好むせいでしょうか。ともかく、特にExpeed6とAdobe Standardはことごとく正反対の傾向という気がします。
ヒストグラムを見て確認してみましょう。
Expeed4と6を比較すると、6相当の方が、Rの値が高め、且つBのピークも低めです。これがやや黄色いという印象を生んでいると思います。Adobe Standard (露出補正済) との比較では、Expeed4に比べBの山がなだらかで、すそ野が上の方に広がっています。Gはやや低めでマゼンタ方向にやや寄っているものと思われます。またRがハイライト方向にあまり寄っていません。おおむね紫寄りと言えるのではないでしょうか。これが黄色っぽくないというか、やや生気のない、肌の蒼白な方向に寄っている印象を作っているように思います。
RGB値も確認したいと思います。
おおむね、Expeed6の方が、4より、R, G, B値が上回っています。ただ若干B値の上がり方が鈍い傾向のように思います。それが微妙に黄色い印象を作っているのかもしれません。Expeed6のほうが、わずかに肌の生気がある印象です。とはいえExpeed4の方が中庸で良いという評価もありうると思います。
Expeed4とAdobe Standard(露出調整済)との比較では、Adobe Standardの方が、G, B値が高く、かつB値の上昇量が高めです。肌が蒼白という印象はここからくるものと思われます。なお、Expeedの方が自動的にノイズ低減[高画質2013]がデフォルトで掛かっているためか、肌がスムーズに見えます。なお、ノイズ低減[高画質2013]が自動的にかかっているのは、撮影時やや暗い環境で撮影したためです。その撮影時のカメラ設定をNX Studioはデフォルトで自動的に引き継いでいます。Nikonのカメラで、肌をスムーズに撮るにはノイズ低減が自動的にかかるやや暗めの環境で撮影し、純正ソフトで現像するのが良いかもしれません。
因みにWikipediaにはニコンの純正現像ソフトはSILKYPIXのOEMだから、これを使ってもカメラ内現像と同じにならない、と書かれていますが*1、現在は当てはまらないのではないでしょうか。現在の純正ソフトはSILKYPIXのサブセットとは言えないように思えます。少なくとも現在のNikonの純正ソフトは撮影時の設定を、特に面倒な操作なく、そのままデフォルトでRaw現像に忠実に反映させるという方針で作られていることは明確です。NX Studioで現像した結果を、補正の原稿ファイル、出発点として使うメリットは非常に高いと思います。
という訳でExpeedの方がやや黄色~赤め(生気のある肌)なのに対し、Adobe Standardはやや肌が蒼白(やや生気がない肌)という印象になる傾向が明らかになりました。ただ白人の肌だと、このAdobe Standardの傾向が透明感のある透き通った白い肌という印象を生むのかもしれません。
やはりAdobe Standardは欧米系の趣向に合わせて調整されているのではないでしょうか。
*1:以下の記述参照。