省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

田園風景 - Expeed3 /6 / Adobe Standard 相当処理の違い

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 さて、先日芝生の緑における Expeed3 /6 / Adobe Standard の違いを見ましたが、緑のある風景ではどうでしょう。という訳で簡単に結果を見ていきます。カメラはNikon D3200です。

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NX Studio Expeed3互換

 

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NX Studio Expeed6相当

 NX Studioで、最新のピクチャーコントロール適用の結果ですが、パッと見て彩度が高いのが分かります。主にその原因は緑の違いで、手前の緑の部分はR値がG値の6~7割と低めになっています。Expeed3互換では8割前後でした。B値の比も低めです。そのため彩度が高く感じられまた、黄色味も少なく感じられます。

 家の部分は赤みのある部分が、Expeed3互換に比べて微妙にR値が高めです。やはり、Expeed6相当に比べると、主として植物の緑色のため、Expeed3互換の方が黄色っぽくかつ彩度が低い分、地味目に感じられます。

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RawTherapee Adobe Standard DCPプロファイル適用 + 露出調整

 こちらは、RawTherapeeにAdobe Standard DCPプロファイルを適用し、その後なるべくExpeed3に似せるため、ヒストグラムの主要な山がExpeed3のヒストグラムとなるべく一致するように露出やトーンカーブを調整した結果です。

 値の上下の違いはありますが、R, G, Bの相互の比を見てください。家の部分は、明るさは微妙に違いますが、色相自体はほぼそんなに変わりはないように思えます。植物の緑も似ていておおむね黄緑気味ですが、こちらの方が微妙にB値の比が高めです。そのためExpeed3より微妙に地味目な感じを受けます。前回芝生の写真で比較検討したのと全く同じ傾向です。

 田園風景の写真でも、芝生の写真と全く同じ傾向が確認できました。Expeed3やAdobe Standardは植物の色に関して黄色っぽいという傾向は間違いありません。Expeed3以前のNikonのカメラをお使いで、黄色っぽいのが我慢できないという方は、NX Studioを使って、最新のピクチャーコントロールで現像するのが、一番悩まずに済むように思います。それで足りない場合は、他のサードパーティーのRaw現像ソフトやGIMP, Photoshopのようなフォトレタッチソフトに、NX Studioで現像済みの16bit TIFFファイルを読み込ませて修正するのが良いと思います。

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 今まで、NX Studioの各処理やAdobe Standardとの違いを見てきましたが、ここで一旦、一段落としたいと思います。今まで検証した結果をまとめると以下の通りです。

 

素材 青空の青色 植物の緑色 肌の色 その他(褐色, 赤, 灰色等)
NX Studio Expeed3互換 やや青い B Ch.+ 黄緑傾向 GとR Ch. 近接 未検証 ニュートラル傾向
NX Studio Expeed4互換 やや青い B Ch.+ ニュートラル傾向 ニュートラル傾向 ニュートラル傾向
NX Studio Expeed6相当 やや藤色寄り
 B Ch. +および R Ch. +
緑が強まる傾向
GとR Ch. 乖離
ややオレンジ寄り
R Ch. +  B Ch. -
ニュートラル傾向
Adobe Standard / Luminar3 やや黄色い B Ch. - 黄緑傾向 GとR Ch. 近接 やや蒼白寄り
 B Ch. + G Ch. +
ニュートラル傾向

 Nikonが黄色いと言われるのは、Expeed3互換の現像結果で緑が黄緑寄りになるためだと思われますが、Expeed4互換やExpeed6相当の処理では当てはまりません。またExpeed3互換処理が黄色いと言ってもAdobe StandardやLuminarとほぼ同程度です。またAdobe Standard等では空の青空もやや黄色めですが、これはExpeed3互換処理では当てはまりません。

 また、NX Studioによるデフォルトの現像結果は、他の現像ソフトを使ったデフォルトの現像結果よりも、どうやらハイライト圧縮が掛かって明るめになっているようです。

 結論としては、現行のNX StudioはNikonのカメラ設定を最大限反映するRaw現像ソフトに仕上がっています。基本、Nikonのカメラを使っていてその特性をフルに生かすなら、まずNX Studioで現像すべきであり、それで足りない場合サードパーティーのRaw現像ソフトやフォトレタッチソフト(GIMP, Photoshop)を使うべきかと思います。最近のNikonのカメラでは、撮影時にアクティブDライティングやノイズリダクションなど、その時その時の露光条件や、使用しているレンズ等によって、自動的に働いたり、あるいはユーザが色合いなどを調節するピクチャーコントロールを選んだりできますが、サードパーティー製現像ソフトを使うことでそれらの設定の多くがキャンセルまたは無効になってしまいます

 もちろん、サードパーティーのRaw現像ソフトでは、Nikonのカメラのピクチャーコントールのバージョンの差 (Expeed 3, 4, 5, 6など) もRawファイルに含まれるJpegプレビューイメージを除いては、全く関係ありません。つまり、カメラの持ち味を殺して現像したいという場合は、サードパーティ製Raw現像ソフトを使って現像するのが良いと思います。

 また、Expeed3以前対応のカメラで、黄色いのが気になるという場合は NX Studioで最新のピクチャーコントロールを使って現像するのが良いと思います。Expeed4以降のカメラでは黄色くなるという事実はないと思われます(Expeed6相当ではより緑が強く出るのは確かですが、さりとてExpeed4が黄色いとは言えません。むしろ植物の緑に関してはニュートラルに近いと思います)。もし、Expeed4以降のカメラRawを現像して、黄色いと感じるとすれば、サードパーティー製Raw現像ソフト(特にLightroomやLuminar)でAdobe StandardのDCPプロファイルを使って現像していることに起因すると思われます。

 またサードパーティーの現像ソフトやGIMP等に持っていく場合も、カメラ特性を生かすつもりなら、通常は、NX StudioでRaw現像した16bit TIFFファイルで読み込ませるべきかと思います。

 とはいえ、NX Studioもレタッチブラシ、Capture NX2から定評のあったカラーコントロールポイント、トリミング、傾き、ゆがみ補正、さらにはトーンカーブ、彩度、色相の補正機能を備えていますので、通常の写真の補正で必要な機能は一通り備えていると思います。サードパーティー製Raw現像ソフトが必要な場面はそう多くないかと...

 但し、カメラでネガフィルムのデュープをした場合などは、NX Studioは簡単なネガポジ反転に対応していませんので、darktableやART, RawTherapeeで現像することを推奨します。D850などではネガポジ反転機能を持っていますが、NX Studioではその機能は反映されていません。NX Studioでもトーンカーブを苦労していじればネガポジ反転はできますが、面倒ですのでお勧めしません。

 なお、他メーカーでも、やはり純正ソフトで現像することが基本になるべきなのではないかと思いますが、Nikon以外のメーカーで純正ソフトの出来がよろしくない、純正ソフトを使っても、カメラ内現像の結果を忠実に反映できない(純正ソフトがOEM供給されているなど)という場合は、最初からサードパーティーのRaw現像ソフトでの現像が積極的に考えられてもよいでしょう。

 とはいえ、純正ソフトで本当にカメラ内現像や設定が反映されないのかは、きちんと検証されるべきかと思います。Capture NX-Dも、市川ソフトラボラトリーのOEMだから、カメラの設定が反映しないというようなことがWikipediaに書かれていますが、Capture NX-2から急遽NX-Dに切り替えられた当初はともかく、現在では不正確な情報だと思います。D7000で撮ったRawファイルを最新のCapture NX-Dで現像して絵が違うから、これはカメラ設定が反映しないんだと断定しているWeb記事も見かけましたが、むしろ新しい純正ソフトではデモザイクの方法などの進化が反映されているためかもしれません。

 結構ネットのうわさが独り歩きしているところもありますので、しっかりと自分自身で見極めることが必要です。

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 因みに、ネット上で「私はLightroom上でAdobe Standardを使って現像しているから黄色く感じない」などと書いている人のカメラの色彩評は信じられません。Adobe Standardこそ黄色いですし、Luminar3も同傾向(おそらくAdobe Standard準拠)です。

 とはいえ、多くのLightroomユーザがAdobe Standardで満足されているだろうことを考えると、黄色がかっていることは欠陥とは言えず、趣向の問題です。またやや黄色がかっていると、艶が乗って見えたり、若草の表現のように生気がかって見えるような効果もあると思います。