以前、NX Studioの色収差補正能力を、キットレンズであるAF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VRを使って検証しました。今回別のレンズを使って検証してみます。
また比較対象とするRaw現像ソフトは、比較的色収差補正能力の高いART / RawTherapeeです。
まずは、Nikon AF-P DX Nikkor 10-20㎜ f/4.5-5.6G VRです。若干開放F値は暗めですが、広角レンズが大きくなりがちな、センサーサイズの小さめなAPS-Cカメラにあって、非常に軽くて携帯性が良く、しかも価格も安いというお得レンズです。神社仏閣などの建物を写そうとすると、標準ズームでは建物の全景が入らず切れがちですが、そのような場合に必携のレンズです。カメラはD5500です。
まず、色収差補正オフで現像してみました。オフでも以前見たキットレンズに比べ色収差はましなような気がします。EDレンズを使っているわけでもないのにまずまずです。
因みにキットレンズの方。これもキットレンズにしてはよく写ると言われていましたが、色収差補正offだと、明らかに色収差が大きいです。
ARTのRawタブにある色収差補正をオンにしてみます。ARTおよびRawTherapeeの色収差補正はかなり優秀ですが、ごくわずかにピンクっぽいずれが見られます。
NX Studioでは、ほぼ色収差はほぼ皆無です。
次は、やや広角寄りの標準ズーム、Nikon AF-S DX NIKKOR 16-85mm f/3.5-5.6G ED VRです。EDレンズを使って、色収差の補正を図った竹クラスのレンズです。後継のAF-S DX NIKKOR 16-80mm f/2.8-4E ED VRが出ましたが、併売されました。フルサイズ換算で24mm始まりの標準ズームは非常に使い勝手がよく、レンズ一本だけ持って行けと言われたら、迷わず選ぶレンズです。広大な風景、というのがありますが、その広大感、広がりの感覚を表現するにはフルサイズ28mm相当(APS-C 18mm)ではどうしても出ず、最低、24mm相当(APS-C 16mm)は必須です。APS-Cではカタログ上その焦点距離の差はわずか2mmですが、視覚心理的に言うと、その差には決定的な違いがあると思います。その一方、20mm未満は完全に視野角を超えるので、特殊効果の領域になっていきます。
今見たら、この両方ともディスコンになっていました。少なくともあとから出たAF-S DX NIKKOR 16-80mm f/2.8-4E ED VRはそう簡単にディスコンにしたらいかんだろうと思いますが... 軽くて電池の持ちの良いD5600とこのクラスのレンズはディスコンにしてほしくなかったところです。NikonはどうもDXの一番便利な製品をディスコンにして、無理やりZシリーズへの移行を促そうという戦略なのでしょうか。止めてほしいです。
少なくとも一眼とミラーレスでは電池持ちの時間に関していうと、カタログ値で4倍の差があります。長時間ファインダーを見ながらシャッターチャンスを待つような使い方をすれば、その差はもっと広がります。電池持ちの差がもっと縮まるまでは、一眼をディスコンにされては困ります。
まず色収差オフです。キットレンズより色収差が抑えられているのが分かります。明るいほうが、絞りが絞られているせいか、窓枠などの収差はより少なくなっているように見えます。ただNikon AF-P DX Nikkor 10-20mm f/4.5-5.6G VR との比較では、EDレンズを使っているにもかかわらず、さほど大きな差ではないようです。その分、ここ最近レンズの設計技術が進歩している、ということでしょう。
ARTで色収差補正をオンにしてみました。かなり補正されましたが、ごくわずか微妙にピンクの収差が残るのは上と同じです。家の壁面のテクスチャが若干収差のためピンクがかる印象はありますが、収差と明確に認識できないかもしれません。NX Studioと比較しなければこれでも十分と感じられるでしょう。
NX Studioです。さすがピンクがかりが一掃され、葉の輪郭も若干しっかりしている印象です。
次は、AF-S DX Zoom-Nikkor 12-24mm f/4G IF-ED です。ちょっと古めですが、EDレンズを2枚使っており、インナーフォーカスレンズです。
比較の中では、オフでも最も色収差が少ない印象です。
ARTで色収差補正をonにしてみました。窓枠部分は良く補正されていますが、葉の部分の色収差補正は今一つの感じがあります。
ARTもかなり頑張っていますが、NX Studioが最もはっきりしているのは自明です。色のずれは全く感じられません。
次はメーカーを変えてみます。Olympus ZUIKO DIGITAL 11-22mm F2.8-3.5で、カメラはE-5です。
まず、ARTで色収差Offで見てみます。Nikonに比べ色収差が少ないようですが、Rawファイルに既に補正用のレンズプロファイルデータが書き込まれているためのようです。
しかし、なお、ARTで色収差補正onにしてみると、わずかに残った色収差もほぼ完璧近く消えます。
さらに、ARTで色収差補正Offのものを16bit TIFFに出力して、NX Studioで読み込みなおし、倍率色収差補正を掛けました。結果はほぼARTで補正を掛けてものと互角です。とはいえ、他社カメラ、レンズの組み合わせでもNX Studioの色収差補正が有効なのは確認できました。また、Rawからではなく現像済みのファイルからの補正は不利なはずですが、ARTと互角な結果が出ている点も特筆すべきです。
レンズを変えても、やはりNX Studioの優秀性は揺るぎません。ただ、キットレンズだとやや色収差が大きいので、それをNX Studioで補正すると、キットレンズでもここまでビシッと決まるか、と感動しますが、元々色収差の少ない高級レンズを使っていると、NX Studioの優秀性が今一つ感じられないかもしれません。Nikonの純正現像ソフトの優秀性が今一つ伝わらないのも、プロやハイアマは高級レンズを使っているケースが多いと思いますので、そのあたりのメリットをあまり感じないせいかもしれません。