省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

日本語フォントフェイスの比較 (ゴシック体) Windows標準 vs. フリーフォント

 darktableの日本語表示を確かめるために、いろいろゴシックフォントをダウンロードしてきて確かめてみました。ついでに、ゴシック体のタイプフェースの比較をしてみたいと思います。Linux 上でフリーのゴシック体のフォントがどの程度使えるのかも検証してみたいと思います。フォントの良しあしというのは個別の字体を見ているだけではよく分からず、ある程度まとまった文章に適用してみないとよく分からないもので...

 最近、GoogleAdobeが共同で Noto フォントを開発しそのタイプフェースを基にしたフォントの開発を自由に認めてから、かなりフリーのフォントが出回るようになったようです。

 なおタイプフェースのサンプルはWindows上で、Libre Office を使ったものを画面キャプチャしています。

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游ゴシック (Windows 標準)

 Windowsのアプリケーション用デフォルトで採用されているフォントで字游工房(現在はモリサワの子会社となっています)が開発したフォントです。WindowsMacに比べてフォントがいまいちという欠点を払拭したフォントで、オーセンティックな感じで美しいです。ウェイトは細めです。Macでもオプションで入れることができます。字の間隔は広めです。なお、Microsoft Word で使うと、行間が妙に広がる (レイアウトで、文字を行グリッド線に合わせるというデフォルトオプションにチェックがついていると広がるので、外すことが必要です) ことが多かったですが、Libre Office ではちょうどよいです。Word よりも Libre Officeとの親和性が高いです。

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MSゴシック (Windows標準)

 かつてのWindowsの標準フォントです。Macに比べていまいちという声もありましたが、そんなに癖が強くなく、標準フォントとしては必要にして十分という感じでした。たしかもともとはリョービイマジクスがタイプフェースを開発していたはずですが、現在は完全にマイクロソフトが権利を買っているようです。漢字の書体はそんなに問題があったとは思いません。仮名の書体がもうちょっと改善されればかなり良くなったのではないかと思います。

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Yu Gothic UI (Windows標準)

 Yu Gothic UI は、游ゴシックのユーザインターフェース用という位置づけかと思いますが、游ゴシックと Yu Gothic UI は同じ名前を名乗っていますがかなり印象が違います。漢字の書体は同じなのかもしれませんが (ただウェイトは違うように思います)、ひらがなの書体がかなり異なっていてそれが大きく印象を変えているようです。欧文と数字はSegoe UIと同じ書体を使っているようです。字と字の間隔はかなり詰まっていて Condenced 相当かと思います。メイリオより文字間隔が詰まっています。

 

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Segoe UI (Windows標準)

 こちらは Windows 標準の国際フォントで、かつての Arial Unicode MS に相当する位置づけのフォントです。Windowsのカバーするすべての文字を含んでいておそらく今Windows10のユーザインターフェースはデフォルトでこのフォントになっていると思います。しかしフォントサイズ自体は7M程度とさほど大きくないので、おそらく欧文フォント部分+個別の言語文字フォントへのリンク (エイリアス) で構成されているものと推定します。書体自体はどうやら日本語部分についてはYu Gothic UI を引用しているようです。ただ文字間隔が異なっていて、Yu Gothic UIよりやや広めになっています。Sogoe というフォント名の語源は、前にも指摘したように、「世界」の韓国語読みからきていると思われます。

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メイリオ (Windows標準)

 これはWindows VistaからWindowsの標準UIフォントとして使われたフォントです。Wikipediaの情報によると、デザイナーの河野英一氏およびフォント制作会社のC&Gによってデザインされたようです。個人的にはこのフォントも結構好きです。丸ゴシックではないものの、ゴシックに丸ゴシックの雰囲気を加えたような印象のフォントです。文字間隔が游ゴシックと同じく広めになっていて、フォントフェイスもやや幅が広めです。限られた範囲のUIでは情報量がはみ出す可能性があります。たぶんその点の不都合から Segoe UI にとってかわられたのではないかと思います。語源は日本語の「明瞭」からきていると思いますが、なぜメイリョーと呼ばずにメイリオと呼ばせるのかがナゾです。

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BIZ UDゴシック

 モリサワが無料で公開しているフォントであり、Windowsにも2018年秋のアップデート以来、標準フォントとして採用されたフォントです。もともとはタイプバンク (現在はモリサワに吸収合併) が開発したフォントをベースにアレンジして作成したもののようです。書体が好みどうかは別として確かに読みやすいです。フォントの間隔は結構詰まっています。タイプフェイスは幅広気味ですがその分フォントの間隔を詰めて情報量を減らさないようにしているようです。UI用途に使っても良いと思います。Macでもダウンロードすれば使えます。

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Noto Sans JP

 GoogleAdobeが韓国のサンドル・コミュニケーションなどと協力して開発し無料で配布しているフォントです。デザイナーは、カン・ジュヨン, ポール D. ハント, 西塚涼子, Sandoll Communications (韓国), チャン・ソヨンです*1。Noto Sans の一部の言語版は、Windowsでも、一部のマイナー言語の文字をカバーするフォントとして標準で使われています (日本語部分は使われていません)。タイプフェースを無料でアレンジして使うことを認めているので、このフォントから派生しているフォントも多いです。Linuxの標準フォントとしての採用も進んでいますが、ややタイプフェースが大きめで、かつ日本語部分はプロポーショナルでないので、UIフォントとしては、表示が隠れる、はみ出るなどの弊害が起こる場合があります。

 個人的には、ちょっとかなに癖があるような気がして気になります。かながもうちょっとオーセンティックならなぁという気がします。ダウンロード先は、

https://fonts.google.com/noto/specimen/Noto+Sans+JP

 なお、フォント名は、Noto Sans Japanese だったり、Noto Sans CJK JP になったりしたようですが、現在は再び、Noto Sans Japanese に戻って統一されたようです。

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源ノ角ゴシック VL

 これは Noto Sans を Adobe が配布しているもので、フォント名は異なりますが書体・利用条件は同じです。ただ、やはり微妙にこちらのほうが字の間隔が狭めになっています。ダウンロード先は、

https://github.com/adobe-fonts/source-han-sans/tree/release/SubsetOTF

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IPAゴシック

 こちらは日本政府機関であった、独立行政法人情報処理推進機構 (IPA) が、デジタル化推進のために制作したフォントで、実際にはタイプバンクが情報処理推進機構の委託を受けて製作しました。デザイナーはタイプバンクの林隆雄氏です。やはりこのフォントを基にした派生フォントの作成を認めています。LinuxUnixの一部のディストリビューションにおいて標準日本語フォントとして採用されています。MSゴシックと同様比較的癖がなく、必要にして十分なフォントという印象です。書体としてはMSゴシックとはもちろん異なるのですが、全体のタイプフェースの印象は似ています。文字間隔、行間隔は詰まっていて限られた画面でも情報量が多くなっています。ダウンロード先は、

https://moji.or.jp/ipafont/

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IPAexゴシック

 上のIPAフォントを改良して日本語部分を等幅に、欧文部分をプロポーショナルにしたフォントです。数字の書体が異なっています。IPAゴシックがコンソール用だとしたら、こちらはワープロ、一般文書作成用でしょうか。ダウンロード先は上と同じです。

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Takao ゴシック

 IPAゴシックを基に派生したフォントで、かつて Ubuntu で標準フォントして採用されていました。日本語部分は全くIPAゴシックと変わらないようです。フォント名はIPAフォントをデザインした林隆雄氏の名前からきているということです。ダウンロード先は、

https://launchpad.net/takao-fonts

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VLゴシック

 LinuxVineで標準フォントとして採用されていましたが、いまは、Vine自体が終了してしまいました。見やすいですが、くだけた印象のゴシック体で、游ゴシックとは反対の傾向のフォントかと思います。タイプフェースは大きめのようです。ダウンロード先は、

http://vlgothic.dicey.org/

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さざなみゴシック

 こちらもかなりくだけた印象のゴシック体です。特にかなよりも漢字が若干手書き風になっています。漢字に比べるとかなのほうがよりオーセンティックというのが若干アンバランスです。このフォントも一時一部のLinuxディストリビューションで標準日本語フォントとして使われました。ダウンロード先は、

https://ja.osdn.net/projects/efont/

 

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ZEN KAKU ゴシック New

 現在はGoogle フォントで無料で配布されているフォント。もともとは(有)エイワンという会社で開発・販売されていたようですが、Googleへのフォント事業移譲により無料公開となったようです。デザイナーはエイワンの大平善道氏で、メンテナンスは大平氏が継続しているようです。見やすくてよいフォントだとおもいますが、ややかながくだけた印象です。とくに、「さ」とか「き」の書体が個人的に気になります。なお、文字間隔は Noto sans と同じに揃えられています。ダウンロード先は、

https://fonts.google.com/specimen/Zen+Kaku+Gothic+New

 また、以下のページにZENフォントに関する解説があります。

Google Fonts Blog: Zenフォント: 新しい日本語フォントコレクションの登場 - 日本語フォントの複雑な美しさについて -

 

 とはいえ、游ゴシックのオーセンティックな雰囲気は圧倒的で、これに匹敵するようなLinuxで使えるオーセンティックな雰囲気のフリーの角ゴシックを探しているのですが、まだ探し当りません。

 

ちなみにこのはてなブログの表示ですが、Windowsの場合

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Windowsにおける はてなの表示

 これはおそらく はてなのデフォルト Smooth.css において本文の表示に、英数字は Arial もしくはデフォルトの sans-serif、日本語については、游ゴシック Medium が指定されているものと思われます (Smooth.cssの内容は直接見られないようです)。本文についてはブラウザ側のフォント指定を変えても変わらないので (サイトのフォント指定を無視にチェックを入れると変わる) はてな側のcssで定義されていると思います。

 これが Ubuntu だと

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Ubuntuにおけるデフォルトの はてなの表示

 こちらはNoto sansが本文に使われているようです。ただ Noto sans が指定されているわけではないようで、ブラウザ (FireFox) のフォント設定を変えるとフォントが変わります。

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表示をIPAゴシックに変更

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表示を ZEN KAKU Gothic Antique に変更

 IPAゴシックそんなに悪くないです。この中では一番オーセンティック、自己主張が少ないように思います。ただ、游ゴシックのオーセンティックで自己主張が少ないながらもきれいと見せるデザイン力は脱帽ものです。とはいえ游ゴシックと Yo Gothic UIが大幅に印象が異なることを考えると、仮名のデザインを変えることで、他の書体も大きく印象が変わるような気がします。
 特徴のあるフォントを作るのは比較的簡単かもしれませんが、特徴を感じさせずかつ美しいフォントを作るのはかなり至難の業かと思います。

 

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こんなフォントもあるようです。

github.com

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こちらもお読みください。

yasuo-ssi.hatenablog.com

 

*1:情報出典元はAdobeこちらのページより。なおWikipediaでは誤って西塚涼子を西塚京子としている。