省型旧形国電の残影を求めて

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モノクロフィルム画像 光被り補正サポートツール 適用サンプル (1)

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 今回の投稿、気が付いたら500本目の記事になっていました。それはともかく、ここからは、拙作のモノクロフィルム画像光被り補正サポートツールを使った場合、具体的にどのようにパラメータを設定するとどうなるかというのをお見せしたいと思います。

 まず、モノクロフィルム画像光被り補正サポートツールの補正パラメータ決定の基本原理は下記の通りになっています。

図1 光被り補正サポートツールの基本原理

 簡単に言うとサンプリング領域の平均明度を計算し、補正領域において、その平均明度を上回っている部分を引き下げて、サンプリング領域の平均明度に近づける、というのが基本です。ただこれを機械的にやるとかなり不自然になります。そこで調整パラメータをいろいろと設定します。

 以下はパラメータ設定ダイアログです

図2 パラメータ設定ダイアログ

 まず、[Factor for mixing adjustment amount] (ミキシング調整係数)は、データの補正値に対してどの程度の倍数を掛けるかです。デフォルトは1.0です。つまり図1で言えば、図1通りに明るさを引き下げます。しかし、過剰に補正されたり、補正量が足りなかったりする場合に調整するのがこのパラメータです。例えばここに0.5を入れると、図1の補正量に1/2を掛けた補正量に調整する、ということです。

 それから、[Columns width for Calculating correction value] とは、縦の各画素列の補正値を決定する際に、左右何画素列の値を参照して決定するかを入力する欄です。値を小さくするときめ細かく、大きくすると大雑把に (つまり当該列だけではなく、横の列も明度に参考にして) 各列の補正値を決定します。図1で言うと、ここの値を0にすると、図1通りに補正します。しかしこの値を増やしていくと、ピークが鈍化し、補正量のギザギザがより滑らかになります。デフォルトは10ですが、より明るさの変化に忠実に補正量を変化させるには(つまり図1通りにするには)、0もしくは0に近い値に設定して下さい。

 さらに、[Smoothing X direction] (x 方向スムージング) は横方向に非補正部分とつながるように補正値を調整するかどうかです。これには補助パラメータがあって、[Power for Smoothing X] (乗数) という横方向にスムージングを行う際の調整乗数を設定します。

 仮に[Power for Smoothing X]に1.0を設定し、[Smoothing X direction] をオンにすると次のように補正量を変化させます。

図3 x 方向スムージングの概念 (乗数1.0)

 補正領域の中心部で補正量を最大にし、左右端に向けてリニアに補正量を0に変化させます。これは図1の補正量に対して、さらにここにあるような係数を掛けるということです。なお、この中心の補正値の最大量は、[Factor for mixing adjustment amount] で調整されます。

 ところで、左右端に向けてリニアに補正量を0を変化させた場合、不自然になりがちです。そこで、この変化の仕方を乗数で調整します。乗数を、1.0未満に設定すると変化の仕方が以下のように変わります。

図4 x 方向スムージングの概念 (乗数 1.0 未満の場合)

 

 値が小さいほど両端の0からの立ち上がりが急になります。こちらのほうが自然なはずです。乗数を1以上に設定すると、中心だけが黒っぽく補正され、多くの場合、更に不自然になります。因みに[Power for Smoothing X]には、Left と Right がありますが、中心から左側の傾斜を調整する乗数がLeft 中心から右側の傾斜を調整するのがRightで、左右別々に傾斜を調整できるようにしました。乗数1.0未満で値大きめだと端からの傾斜の立ち上がりが緩やかに、小さめだと急になります。傾斜が急だと補正部分と非補正部分の境界が目立ちがちです。その目立たない限界量を探ることになります。

 以下具体例をご覧ください。以下の画像のぼんやりと光被りしている、黄色く囲まれた領域を補正していきます。サンプリング領域はデフォルト、つまりこのすぐ左隣りの、x方向で1.5%の長さの領域をサンプリング領域として取ります。

図5 補正領域

 これをすべてのパラメータをデフォルトで走らせた時の結果が以下です。y方向全領域でやや補正量が多すぎる (やや黒っぽい) ようです。

図6 結果

 そこで、ミキシング調整係数 0.8にしてみました。その結果が以下です。

図7  ミキシング調整係数 0.8 結果

 上よりマシになりましたが、しかしまだ補正部分と非補正部分の境界が明瞭な部分があります。そこで、x方向のスムージングを掛けてみます。まずミキシング調整係数を1.0に戻し、x方向のスムージングの乗数も1.0に、つまり中心から周辺にかけてリニアに変化するようにしてみます。

ミキシング調整係数 1.0
x 方向スムージングオン 乗数1.0

図8 ミキシング調整係数 1.0
x 方向スムージングオン 乗数1.0 結果

 左右両端の補正部分の境界線は目立たなくなりましたが、中心部分は黒々として不自然です。以下のように調整されているためです。

図3 x 方向スムージングの概念 (乗数1.0) 再掲

 そこで乗数を0.20に引き下げてみます。以下のような補正量の調整を考えるわけです。

図4 [再掲] x 方向スムージングの概念 (乗数 1.0 未満の場合)

ミキシング調整係数 1.0

x 方向スムージングオン 乗数0.20

図9 x 方向スムージング オン 乗数0.20 結果

 急に真ん中が黒くなる感じは改善しましたが、両端の境界線は再び目立つようになりました。そもそも中心の最大の補正量が大きすぎるようです。そこでミキシング調整係数を減らしてみました。

ミキシング調整係数 0.6
x 方向スムージングオン 乗数0.20

図10 ミキシング調整係数 0.6
x 方向スムージングオン 0.20 結果

 中心の濃度はまあまあか、やや補正量少な目ぐらいになりました。ただ左端の変化の仕方はもうちょっと急でも良いような気が... 台車のあたりはもうちょっと濃くても良いようにも思います。パラメータを変えた補正結果をこの部分は貼り付けたほうが良いかと思います。

ミキシング調整係数 0.6
x 方向スムージングオン 乗数0.15

図11 ミキシング調整係数 0.6
x 方向スムージングオン 乗数0.15 結果

 左端、特に線路、路盤部分は改善されていますが、逆に目立つようになった部分もあります。左端の補正境界がやや目立つようです。いくつかの補正結果を部分部分で複合して最終的な補正を目指すしかないようです。

 また濃度的にはある程度OKでも、やはりぼやっとした感じが改善していない部分がありますが、これは明度をいじるだけでは解決しません。GIMP上で部分的にコントラストを上げてみましたがうまくいかず、最終的に ART でローカルコントラストを調整してある程度改善することができました。ただやや画像が荒れる副作用もありなかなか難しいです。ただ基本はミキシング調整係数(値を大きくすると濃く、小さくすると薄く)と、x方向スムージングの乗数(値を大きくすると変化がなだらかに、小さくすると急な方向)のバランスで補正を調整する、という感じになります。

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