さて、先月に引き続き、黄変カラーネガ写真補正用 Bチャンネル再建法ツールを、再びバージョンアップします。今回の最大のバージョンアップ内容は 32bit フルカラー画像の補正に対応した点です。32bit画像の対応も当初から考えていたことでしたが、今まで32bit画像がどう扱われているのかよく分かっていなかったため非対応でした。今回のバージョンから Ver. 5.x 代とします。
その他、いくつかの点で内容の変更を行っています。但し今回ユーザインターフェースの変更はありません。以下具体的に説明していきます。
バージョンアップ内容
1. 32bit x 3チャンネル フルカラー画像への対応
今回、32bitファイルへの対応を行いました。但し画像は、 最大値が 1.0, 256, 65535, 16777215 のいずれかである必要があります。なお、ImageJ は32bit フルカラー画像の処理に対応していますが、ImageJ 独自のスタック形式である必要があります。しかしながら、現状 bio-format プラグインは、通常の TIFF 32bit 形式ファイルを直接読み込んで、ImageJ 独自のスタック形式に変換する機能をサポートしていません。そのため、通常の 32 bit TIFF 形式ファイルを編集するには、一旦、以下のページにある方法でファイル変換を行い、ImageJ用 32bitフルカラーTIFF ファイルに変換・保存してから使って下さい。
yasuo-ssi.hatenablog.com なお、これによって出力された補正素材ファイルは直ちにGIMPに読み込んで、16bit以下のビット深度のファイルと同様に編集することができます。
2. 遠景補正レイヤーに掛かるマスクの変更
2022年7月のバージョンアップ以降、遠景補正レイヤーをかけるとむしろ空の青みなどが減退する場合が多くなっていました。これは近景補正レイヤーに掛けるマスクを、それまでとは異なり、オリジナル画像のピクセルの青みが補正レイヤーより高い場合はオリジナル画像のピクセルを活かすマスクを新たに掛けるようになったことと、遠景補正レイヤーにはハイブリッド補正が適用されていないためです (Gチャンネルミキシング+ガンマ補正による B 値の上昇) 。このため、遠景補正レイヤーの役割が今一つ分からないという声もいただいていました。
今回、遠景補正レイヤーに掛けるマスクの作成方法を見直し、近景補正レイヤー用マスクと同様、オリジナル画像のピクセルの青みが補正レイヤーより高い場合はオリジナル画像のピクセルを活かすようにしました。これにより、遠景補正レイヤーを掛けると、青みがかえって減るというケースは、以前よりは減るはずです。
但し、画像の周辺部分で、B情報が褪色して抜ける青変褪色が起こっている場合は、この仕様変更は逆効果ですので、その場合、褪色が起こっているマスクの周辺部分を、近景補正レイヤーのマスクと同様、白塗りして、マスクの効果をキャンセルする必要があります。下にそのような例を図示します(オレンジ線で囲んでいる部分)。
以下は、マスク編集画面に入って、マスク効果をキャンセルしたい部分をGIMPのレベル調整 (メニューの[色] → [レベル]) を使って、白くしているところです。これは近景補正レイヤーのマスクでも同じ編集が必要です。
3. 緑保護マスクのアルゴリズム & パラメータの見直し
Ver. 4.8 へのバージョンアップで緑色部分への補正を弱める緑保護マスクの機能を強化しましたが、その副作用として、空などの黄変部分が補正されないまま保護されてしまうという場合も発生するようになりました。
そこで今回その対策として、遠景補正レイヤーの閾値と緑保護マスクを連動させるようにし、遠景補正レイヤー用マスクの閾値を超える部分については、緑保護マスクを無効にすることで、空などの黄変部分が補正されないまま保護されてしまうという問題に対処しました。
なお、それでも空などに黄変が補正されない部分が残ってしまう場合は、遠景補正レイヤーマスクの閾値をデフォルト値から引き下げて本ツールを実行してみてください。逆に全般的に画像が明るく、緑保護マスクによる保護が不十分と思われる場合は、遠景補正レイヤーマスクのデフォルトの閾値を引き上げてみてください。
ただし、それでも調整しきれない場合は、遠景補正レイヤーをご活用いただくか、Ver. 4.81 の時と同じように同時に出力される Type2 マスク画像を使いながらマニュアルでのマスク編集でご対応下さい。とくに空の青みが濃い場合 (B値が比較的低い場合) は、画像にもよりますが、マニュアルによるマスク編集が不可避な場合があり得ます。
4. 遠景補正レイヤーマスクの閾値デフォルト値の計算方法の見直し
Ver. 4.8 では必要な値より低めに設定されていましたので、パラメータを見直しました。
5. ノービスメニューにおける、ハイブリッド補正オフ時のマスクの変更
以前はノービスメニューにおいてハイブリッド補正をオフにすると、2022.7以前の補正方法と基本的に同じ方法で補正をしていましたが、今回見直して、ハイブリッド補正をオフにしても、近景補正レイヤーにかかるマスクは、ハイブリッド補正時にかかるものと同じにしました。もしハイブリッド補正をオンにすると黄色味が削除されすぎると感じられる場合は、ハイブリッド補正をオフにしてみてください。
6. 出力ファイル名の変更
出力ファイル名は、今まで従来の名前を踏襲してきましたが、マスクの作り方など変わったところもありますのでこれを機に出力ファイル名を変更しました。併せて、GIMP用のファイル読込プラグインもそれに合わせて改訂しました。従って、今までお使いいただいた方は、今回GIMP用のファイル読み込みプラグインも入換をお願いします。RGB合成プラグインは変更ありません。
新規ファイル名一覧
Rチャンネルイメージ: ******_R.tif
Gチャンネルイメージ: ******_G.tif
暗部補正イメージ: ******_Dark.tif
周辺褪色補正イメージ: ******_Periph_Adjst.tif
遠景補正イメージ: ******_B_Bg.tif"
近景補正イメージ: ******_B_Fg.tif
オリジナルB Ch.イメージ: ******_B.tif
近景補正マスク: ******_Fg_Mask.tif
遠景閾値マスク: ******_Bg_Thld_Mask.tif
周辺補正マスク: ******_Periph_Adjst_Mask.tif
なお、古いバージョンのGIMP用読み込みプラグインを併用したい場合があると思いますが、その場合は古いバージョンのプラグインの末尾から8行目に
"ファイル読込...",
とあると思いますが、それを
"ファイル読込(旧)...",
などと、変えておくと、旧バージョンと併用できると思います。
本プログラムのダウンロードはこちらから。
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なお、本記事で紹介した写真補正技法やソフトウェア (Plug-in) は個人的用途および非営利目的であれば自由に使っていただいて構いませんが、本技法を使って何らかの成果 (編集した写真等) を公表する場合は、本記事で紹介した技法を使った旨クレジットをつけて公表していただくことをお願いします。
また、本ソフトウェアは現状のまま提供されるものし、作者はこれを使ったことによるいかなる損害補償等にも応じられないことを了解の上使っていただくものとします。
但し、もしソフトウェアのバグがありましたら、ご連絡いただければなるべく改善するよう努めたいと思います。
営利・営業目的で使用される方は別途ご相談下さい。
また、私の作成したPlug-inも自由に改変して使用していただいて構いませんが、その成果を公表する場合はご一報下さい (公表しない場合は特に連絡は必要ありません)。またその改良した結果を私の方で自由に利用させていただくこともご了承下さい。
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