省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

29年前のネガ vs. ラッシュをスキャンしてみました


 1991年5月の連休に、山梨県上九一色村(当時)で撮影した、富士山と牧場の写真のフィルムスキャンしてみました。上九一色村と言えば、のちにオウム真理教サティアンで有名になりました。今考えてみると当時、そのそろサティアンが立ち始めていたころのはずですが、その当時はそんなこととはつゆ知らず... いささか絵葉書的な牧歌的写真となりました。

 それはともかく、当時、ネガで写真を撮るとともに、必ずラッシュプリントを焼いていました。今回、ネガとラッシュプリントのポジの両方をVuescan + Konica-Minolta Dimage 5400 II でスキャンしてみました。フィルムは、黄変が心配な高感度のフジカラーHG400です。ISO400なのに、粒状性がISO100フィルム並みになって常用フィルムとして使えると宣伝されたフィルムです。当時はISO400のネガカラーフィルムが発売されたから15年が経過していますが*1、変退色具合はどうでしょうか...

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図1. ネガスキャン出し

 まず、こちらはネガをスキャンして出来たTIFFファイルをそのままリサイズしたものです。退色復元、色彩復元は掛けています。軽微ではありますが、果たして中央部を中心にうっすら不均等黄変が始まっています。ただそれ以外は比較的鮮明で、色彩も豊かです。うっすらとした黄変がなければ... という感じです。

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図2. ラッシュ スキャン出し

 こちらはラッシュプリントのポジフィルムをスキャンしてそのままリサイズしたもの。変褪色はほぼなさそうです。スキャンの際の退色復元等のオプションは使っていません。ラッシュのオリジナルよりやや青みがかっている感じです。もちろん、ネガのスキャン出しと比べると、黄変がない点は良いですが、青みがかっているせいか、色は単調な感じがします。

*1:世界初の感度400ネガカラーの発売は、1976年のフジカラーF-II 400でした。以下のフジフィルムの社史をご参照ください。

www.fujifilm.co.jpHG400は、F-II 400 → HR400 (1983年発売) → Super HR400 (1986年) と来て、ISO400フィルムの四代目 (1989年発売) です。粒状性が常用フィルムとして遜色のないレベルになった、というのがキャッチフレーズでした。「フジカラー「ズームマスター800」の開発」

https://asset.fujifilm.com/www/jp/files/2019-09/47ce4268600cbc8f9d4d6cd15edb8e25/rd_report_ff_rd046_002.pdf

ammo.jp

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Nikon Capture NX-Dが不均等黄変カラーネガ写真の補正に使える

[2022.4 追記: 以下の記事の内容は Nikonの NX Studio にも当てはまります]

 Nikon用の無料で配布されているRaw現像ソフトにCapture NX-Dというものがあります。しばらく前からふと気が付いてみると、あれ、Nik Collectionで見慣れたようなものが... つまりコントロールポイントが搭載されています。とはいえCapture NX-Dは、ほとんどNikonのRawファイルをほぼデフォルト設定でTIFFJpegに落とすために使っていたので (あとは露出補正程度) ほとんどコントロールポイントを活用することもなかったのですが、ふと思いついてTIFファイルを読み込ませてみると、NikonのRAWファイルであるNEFファイルでなくても、ちゃんと読み込めます。

 さらに、TIFファイルを、コントロールポイントを使って編集してみると、ちゃんと編集できます (Jpegも可能)。てっきりNikonのRawファイルしか編集できないものと思っていましたが、これはうれしい誤算です。Nikonこれは太っ腹! つまり、Nik Collection の Viveza と全く同じことができるのです。ということはVivezaと同様、これまた不均等黄変カラーネガ写真の補正に使えるということです。

 そもそもカラーコントロールポイントとは、ポイントを置いたピクセルと同じ色域のピクセルを一定の半径で指定してカラー調整を可能にする機能です。この半径の大きさはユーザーが自在に指定できます。Photoshop などの色域指定と異なるのは、Photoshop の色域指定機能は、色域の色の幅は調整できますが、色域指定を行う範囲は直接指定できません。もちろん、マスクを使って色域指定を行う範囲を限定することは可能ですが、それだと結構手間がかかってしまいます。それが、コントロールポイントでは、感覚的に一挙にできてしまいます。またコントロールポイントから遠ざかるほど、補正効果が弱まるようグラデーションがかかっています。但し、コントロールポイントの半径の大きさは指定できますが、指定する色域の色の幅の調整はできません。それでもさほど不便ではありません。

nikonimglib.com

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1996年3月 現役最後の鶴見線クモハ12

 こちらは、1996年3月、JR東日本で最後まで残った旧型国電定期運転、およびさよなら運転でのクモハ12です。この年の3.16のJR時刻改正で17m級国電を残さなければならなかった武蔵白石駅のカーブのきついホームが撤去され、103系電車が武蔵白石駅を飛ばして大川まで直通することになりました。なお、取り込みはVuescanを使ってスキャンしました。補正はリサイズ・不要部分のトリミング以外一切行っていません。本当は若干青みがかっているので、もうちょっとカラー補正を行った方が良いのですが、追加補正なしでこの程度までいけるということでこのままお見せします。このころカメラはNikonのFM2を使い、標準ズームの35-70mmを使っていたのではないかと思います。カメラが良くなっているのと、Vuescanを使って取り込んでいることでかなりしっかりした絵になっていると思います。以前スキャンしておいた鉄道写真もVuescanでスキャンしなおした方が良いかもしれません...

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フリーのRaw現像ソフト、Darktableでもネガポジ反転機能を搭載

 2021.1.30に、darktable Ver. 3.4 によるネガポジ反転の仕方についての解説を公開しました。こちらをご覧ください。

 

 このところ、ネガフィルムのデジタル一眼カメラによる写真取り込み(ネガデュープ、デジタル化)に使えないかと思い、Raw現像ソフトやVuescanの簡単ネガポジ反転機能の有無について記事を書いていました (手間がかかっても良いなら、RGB別トーンカーブ補正機能があるソフトならどれでも基本的には可能)。

 今まで確認した範囲では、

◎市販Raw現像ソフト

Lightroom > 別途有料プラグインソフトが必要 (Negative Lab Pro)

Silkypix 10 > Developper Studio Proバージョンなら可能 (スタンダード版および、9以前のバージョンは不可) < 広告情報より

Luminar 3 > 不可 (4については情報なく、試せてもないので不明だが、なさそう)

 

◎フリーRaw現像ソフト

RawTherapee > 5.7以降であり (こちらの記事参照)

 

 またRaw現像ソフト以外では、スキャナソフトであるVuescan (簡易Raw現像ソフトとしても使用可) にあるのは当然として、フォト・画像レタッチソフトであるGIMP, Photoshopに関しても、一発で画像諧調を反転する機能があるので、さらにホワイトバランスや自動カラー調整を掛けることでネガポジ反転可能です (但しフィルムベースカラー読込機能なし)。

 

 今回、無料のRaw現像ソフト darktableにも negadoctor と名付けられたネガポジ反転機能が搭載されたのを確認しました。但し、8月にバージョンアップされたVer. 3.2.1以降で可能です。

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negadoctor起動画面
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GIMP, Photoshop等で使える、輝度マスク (Luminosity Masks) 簡単作成ツール

 アメリ国立衛生研究所(NIH)が開発したフリーの画像処理ソフト、ImageJに対応した、輝度マスク Luminosity Masks を簡単に作成できるスクリプトを公開します。本スクリプトで作成した画像はGIMPPhotoshop等レイヤー編集ならびにレイヤーマスクをサポートしたフォトレタッチソフトでレイヤーマスクとして利用でき、輝度マスクを使った写真効果の編集に活用可能です。

 ちなみに、輝度マスクそれ自体の説明については、例えば下記のサイトをご覧ください (とりあえず Google で検索してトップに出てきたサイトを示しています)。

xico.media

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RAW現像ソフトとしてのVuescanの色彩補正機能がシンプルで凄すぎる

 さて、VuescanをRAW現像ソフトとして活用する方法です*1。RAW現像ソフトとしてVuescanを見た場合次のような特徴があります。

1. シンプルだが、強力な画像補正機能

2. 動作が非常に軽い

 Vuescanはスキャナドライバーとしては多少複雑ですが、RAW現像ソフトとして見た場合非常にシンプルで機能も多くありません。しかし、絵作りを狙うのではなく、実物に近い適切なカラー調整を行う、という目的では操作が簡単かつ強力なツールを登載しています。しかも16bitの、5400dpiフル解像度を扱っていても、パソコンのストレージがSSDならば、信じられないほど軽いです。大半のフィルムスキャンは、スキャンからカラー調整まで、Vuescanで完結してしまうのではないでしょうか?

*1:なお、Vuescanを通常のフィルムスキャナードライバとして使う方法については、こちらに記事にしました。

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