昨年11月に掲示したことのある、クハユニ56011の画像ですが、今回、汎用色チャンネルマスク作成ツールを使って作成したマスクを使って、Bチャンネル再建法適用後の追加補正を試みてみます。前回は、追加補正の色調調整能力がまだ足りておらず、RawTherapeeのフィルムシミュレーション機能などを用いて苦労して苦労して画像の色調を調整していました。
まずは補正前のオリジナルファイルから...
手持ちの画像の中では最も変退色の激しい画像の1枚です。黄変がほぼ全面に広がり、周辺部のBチャンネル情報抜けもはっきりしています。
これをBチャンネル再建法を使ってGIMP上で補正して下記のようになりました。
再建Bチャンネル画像を作成する際に、周辺Bチャンネル抜け補正レイヤーおよび暗部補正レイヤーの両方を使っています。すでにBチャンネル再建法の手順は何度もお見せしておりますので、詳細な過程の紹介は省略します。ここからの追加補正が問題です。昨年11月に補正した際は、ここからの色調の調整に苦労し、最後はRawTherapeeのフィルムシミュレーションでごまかしました。
上の補正1画像の主たる問題点は、1) まだ黄変が完全に取り切れておらず、うっすら黄ばみが残っている、2) GチャンネルとBチャンネルの値の接近により、横須賀線ブルーが青緑に接近している、の2点です。この問題を汎用色チャンネルマスク作成ツールを使ったマスク画像を使って解決を図ります。
まず 1) に関してですが、Y透過マスク画像を作成します。但しマスクは2種類作ります。すなわち、空、駅ビル、ホームなどのハイライト域の微妙な黄変を補正するマスクと、ブルー部分の黄変を補正するミッドトーン域の黄変補正マスクです。
まず、ハイライト域の黄変補正マスクです。
主に駅ビル部分、およびホームに残る微妙な黄ばみを除去するマスクです。このマスクを掛けたレイヤーに、GIMP上でトーンカーブを使ってBの値を上昇させ黄ばみを消します。
次はミッドトーン域にある電車のブルー部分の黄ばみの補正です。まずマスク画像です。
このマスクを掛けたレイヤーに対しトーンカーブでB値を上昇させます。できた補正レイヤーが下記です。
次に2) に関してですが、電車のブルー部分透過マスクを作ります。
マスクの範囲は上とほぼ同じですが、微妙に異なっているのが分かると思います。
このマスクを掛けたレイヤーに、トーンカーブを使ってBを上昇させるとともにGを引き下げ、B-G間の差を作ります。さらにRも引き上げ色調を補正しました。またBを引き上げると明るさが明るくなりすぎるので、明度の中域を引き下げてブルー部分の明るさを落としました。
最後に、明るい部分がややB値が高すぎるようですので、グローバルにトーンカーブを使って緩い逆S字カーブを掛けます。つまり明るい部分のB値を抑え、中域以下はB値を若干上げます。この補正は植物の緑の多い風景写真におけるグローバル補正とは反対方向の補正になりますが、ご覧のようにほぼ人工物のみの画像ですので、元画像の黄変状況と併せて考えるとこれが妥当です。
これらを下から、グローバル補正レイヤー、ブルー部分補正レイヤー、ブルー部分黄ばみ補正レイヤー、明るい部分黄変補正レイヤーの順に重ねて、画像を合成します。なおブルー部分黄ばみ補正レイヤーは、不透明度を70%程度に落として使用しました。これでできた画像が下記です。青緑寄りだった青がだいぶ冴えてきました。
GIMP上の補正作業が終了したら、今度はdarktableにこのファイルを読み込みます。そして露出、ホワイトバランス、フィルミックRGBの自動補正を掛け、最後に再度若干露出を再補正して出力したのが下記の画像です。周辺の情報抜けも補正できています。今までの補正の中ではベストの結果が得られました。
比較のため、オリジナル(再掲)と、以前の補正結果をお示しします。
以前の補正結果もかなり頑張ってはいますが、G値とB値の引き離しが不十分なため、微妙に青緑がかかったままでした。横須賀線色の青色15号というよりは、最初の横須賀線色青色2号に近かったと思います。しかし、今回の補正ではそれが一掃されています。今回かなり狙いに近い形の補正ができました。なお今回最後の調整はdarktableで行っていますが、実際には、RawTherapeeでも行い、結果が良かったほうを最終結果として採用しています。
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