省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

Bチャンネル再建法における新緑表現復元のための追加補正の考察(3)

f:id:yasuo_ssi:20210310145522j:plain さてこの考察の最後に、人工的に作った疑似黄変画像にBチャンネル再建法を掛けた結果に対する、新緑表現復元のための再補正を考えてみましょう。

 まず人工的に作った疑似黄変画像です。周辺部分を除いてB値を50下げて黄変させました。

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疑似黄変ファイル:
画面の一部のB値を50 (8bit相当、%表示で20%ポイント弱) 引き下げ

 次にBチャンネル再建法をこれに掛けた結果です。

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疑似黄変ファイルをBチャンネル再建法に掛けた結果

 見た目的には空にまだ黄変の痕跡がくっきり残っていますが、それ以外の部分は目立ちません。

 この画像の新緑表現を復元するには、次の作戦で行きます。

1) 空の黄変痕跡

 空は基本的にB, G値の接近によりB値がオリジナルより下がっているので、B値を上昇させなければならない。黄色透過マスクを掛け、その上でB値を上昇させ黄変の痕跡をなくす。

2) 新緑の部分

 新緑は基本的にB値を引き下げることで表現の回復を図る。従って基本は前回同様緑の透過マスクを掛け、B値を引き下げる。但し、黄変部分、非黄変部分のB値の差があるであろうことに鑑み、この透過マスクに対しさらに青色透過マスクを作成し緑の透過マスクと合成することで、黄変部分、非黄変部分のB値の引き下げ量の差をつける。つまり、非黄変部分のBの引き下げ量を多くし、黄変部分のBの引き下げ量を少なくする。

 という訳でマスク作成開始です。マスク作成には汎用色チャンネルマスク作成ツールを使います。

 

●空の補正マスクの作成

 輝度範囲の決定、およびマスク作成対象のチャンネルはいずれもBチャンネルです。輝度範囲は192-255にしてみました。さらにYellowの閾値を+30にしてみました。しかし下図のようになってしまいました。

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空用マスク画像 Bの輝度範囲192-255 Yの閾値+30

 空の部分は全く不透過です。Bチャンネル再建法補正結果では空の黄変部分は非黄変部分に比べてみると、人間の目には黄色く感じされますが、R, Gチャンネルとの物理的数値の比較では全く黄色の範囲になっていない、ということです。いろいろ試行錯誤して結局Yellowの閾値を+100まで上げてみました(ダイアログには目安として-30~+30とありますが、その範囲を超えても動作します)。その結果が下図です。

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空用の補正マスク画像  Bの輝度範囲192-255 Yの閾値+100

 空の部分ははっきり人工的に黄変させた部分とそれ以外の部分の違いが出ていますが、それ以外の部分は、Bチャンネル再建法の適用で差がかなり埋まったのが分かります。この画像の空以外の部分をすべて塗潰してから実際にマスクとして使います。

●新緑部分の補正マスク

 まず緑の透過マスクを作成します。

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新緑補正マスク画像

 今回Bの輝度範囲を63-167、Gの閾値を+30に設定しました。

 次に、黄変部分と非黄変部分を調整するための青透過マスクです。

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新緑の黄変/非黄変部分調整マスク

 Bの輝度範囲は上と同じ63-184、そしてBの閾値は+100としました。これは空の補正マスクと同様、そもそも青に見えない部分も広く範囲に含める必要があるからです。ただ、一旦Bチャンネル再建法を適用した画像同様、人工黄変部分と非黄変部分の差はほとんどなさそうです。これはBチャンネル再建法がうまく効いているということです。

 この二つのマスク画像をImageJのImage Calculatorで合成します。それが以下の画像です。

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最終的な新緑補正マスク

 この結果も、当然ながらほとんど2つ上の新緑補正マスクと変わらないようです。黄変/非黄変部分が見た目で分からなければ、その両者の差を調整するマスクは必要なさそうです。ただ、今回はあくまで実証実験ですので原理的に進めていきます。

 これらのマスクを使ってGIMPによる (Photoshopを使うことも可) 補正に進みます。

●B値補正作業

 まずBチャンネル再建補適用後のファイルを読み込み、それをコピーして空補正レイヤーおよび新緑補正レイヤーを作成しマスクを読み込みます。

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補正レイヤーを作成

 新緑補正レイヤーはマスクを編集しませんので、そのままB値を引き下げる補正作業に入ります。

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新緑補正中

 空補正マスクは、一旦必要のない部分を塗りつぶす作業が必要なのでマスク編集作業に入ります。

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空補正マスク編集中1

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空補正マスク編集中2

 空補正マスク編集が終わったら、空のB値を高い部分を中心に引き上げる補正作業に入ります。

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空補正中

 更に新緑補正レイヤーの効果を強めるために、レイヤーを複製し二重にします。

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新緑補正レイヤーを二重にする

 以下が最終補正結果です。

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補正結果

 空の、黄変/非黄変部分の差が完全に消えています。

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オリジナル

 比較対象としてオリジナルを掲示します。微妙な差は残りますが、かなりオリジナルに迫るところまで再現できることは実証できました。またマスク編集をもっと活用すればさらにオリジナルに迫ることができると思います。ただ実際の黄変画像はオリジナルを知ることができません。そのあたりはどう補正していくかはセンスの問題になると思います。

 

 以上の検証から、新緑補正には汎用色チャンネルマスク作成ツールを使って緑透過マスクを閾値+30程度で作成するという点、また輝度範囲の設定を画像ごとに適正に調整すること、また補正量が足りないようであれば新緑補正レイヤーを複数重ねて効果を強める、というあたりがうまく再現するコツになるかと思います。また、黄変/非黄変部分の差がが見た目上分からなければマスクを作成するうえでその差を考慮しなくてもよさそうです。

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