前回記事からちょっと時間が経ってしまいましたが、前回に引き続き、Bチャンネル再建法が苦手な新緑表現を復元する方法について考えてみます。
通常黄変ネガカラー写真の補正時に、通常黄変前のオリジナルの状態を知ることはできません。そこで、問題のない新緑の写真をあえてBチャンネル補正法にかけることで、Bチャンネル再建法で苦手な新緑表現を復元するために何が必要なのか考えてみます。次の写真がオリジナル写真です。
RGB値も表示します。0-255表現に直すには下記の値に2.55を掛けます。
次が、Bチャンネル再建法を掛けた写真です。
Bチャンネル補正法適用写真のRGB値
前回はやみくもに、グローバルにBチャンネルの値を下げてみましたが、今回はどのようなマスクを掛けて補正したら効果的なのかを考えます。マスクは、以前ご紹介した筆者作成の汎用色チャンネルマスク作成ツールを使って作成します。そしてGIMPを使って編集します(Photoshopを使うことも可)。
新緑というのはR, G値が高くB値が低いという特徴があります。そこで、RもしくはG透過マスクを使ってB値を下げることを考えます。まずRマスクを作ってみました。なお青空とそれ以外の部分を区分するには、Bチャンネルの値に基づいてマスクを適用する輝度範囲を決めるのが良いようなので (RおよびGではうまく区分できません)、Bチャンネルの値でマスク適用範囲を制限し、その範囲でRの閾値を+20にしてグレースケールマスクを作成したのが下の図です。このマスクを使ってB値を下げます。
これ以外にBチャンネル補正法を適用すると空のB値が若干下がります。これを補正するために空の部分を透過するBマスクを作成して空のB値を若干上げます。
かなりいい感じに補正できていますが、「そば処」の旗が若干オレンジに振れているのと (モニタによっては分からないかもしれません) 中央やや左寄りの、葉のついていない木の幹が若干黄色がかっています。
次にGマスクを考えます。やはり空とそれ以外の部分を区分するために、Bチャンネルで適用範囲の輝度を決め、閾値+20でGの透過マスクを作成しますが、マスクの透過度がRに比べ低いです。
閾値を+ 30にしてみます。
このマスクを使って、以下のようにトーンカーブを使ってBチャンネルの値を下げていきます。
これもかなり良い感じですが、上との違いは「そば処」の旗のオレンジへのブレがありません。ただし木の幹が黄色に振れているのは同じです。
そこで、Bの範囲を狭め、63-167の範囲でマスクを有効にしました。それが下の図です。
このマスクでBチャンネルを下げる補正掛けてみました。
ただ、マスクの効果が下がっていますので補正レイヤーを2枚重ねました。
ちょっと足りない感じしたので、補正レイヤーを複製して4枚重ねてみるとまずまずになりました。補正量が足りないなと思ったら、補正レイヤーを重ねてみるというのはポイントかと思います。
再度オリジナルを掲げますので、比較してみてください。
わずかに、新緑の鮮やかさが抑制されている感じもありますが、彩度やコントラスト等の調整で何とかなる範囲かと思います。いずれにせよ前回RawThrepeeを使ってグローバルにB値を下げるよりもはるかに良い結果が得られています。この結果がすべてに一般化できるかどうかは分かりませんが、閾値を+30にしたG透過マスクを使ってB値を下げるという補正がかなり有効そうであることが分かりました。GIMP単独でもかなりの結果が得られそうです。
なお、次回は、上の写真に人工的に黄変させたファイルを使ってBチャンネル再建法+追加補正の手順を確認してみます。