省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

汎用色チャンネル再構成ツールの活用例: Gチャンネル再建補正の事例2

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 引き続き、汎用色チャンネル再構成ツールによる補正の事例です。先日掲示したモハ30のもう一枚の方の写真の補正例です。こちらの写真のオリジナルは下記のようでした。

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オリジナル

 今回RGB分解を掛けた図はお示ししませんが、Gチャンネルで暗部飽和が起こっているのは同じです。その一方で、青空の色は前のケースはマゼンタがかっているのがはっきりしていましたが、このケースではそんなに問題ではないようです。ただ、車体やホームなどはマゼンタがかっています。

 というわけで補正方針は

1) Gチャンネルの暗部をRチャンネルの情報を混ぜて補正する。

2) 青空を除いた部分のマゼンタを取り除く

としました。

 まず、汎用色チャンネル再構成ツールを使って、GチャンネルにRチャンネルを7割混入した画像を作ります。またRチャンネルの情報を比較暗で入れていきます。パラメータの設定は前のケースと全く同じです。

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色チャンネル再構成ツールのパラメータ設定

 そして、GIMPプラグインを使って読み込んでおきます。

 

 さらに、拙作の相対RGB色マスク画像作成ツールを使い、Gチャンネルの暗部透過マスク画像を作成します。

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Gチャンネル 0-14 透過二値マスク

 このマスクを下図のように、G: 3対 R:7 でミックスしたチャンネルレイヤーに掛けます。その下にGチャンネルレイヤーを移動します。

 

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Gチャンネルの再構成

 そして、Gチャンネルと G:3対R:7混入レイヤーのみ可視レイヤーとし、可視レイヤーを新たな単一のレイヤーに転換します。それを再構成したNew Gチャンネルとします。

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再構成されたGチャンネル
暗部のみRチャンネルの情報が7割ミックスされている

 そして、R, Bチャンネルと合わせてチャンネル合成に掛けます。これでできた画像を補正1ファイルとして一旦TIFF形式で保存すると同時に、GIMP内にもそのまま維持します。

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補正1ファイル

 この補正1 TIFFファイルは、まだうっすらと全般的にマゼンタがかっています。これに対し、相対RGB色マスク画像作成ツールを使ってマゼンタ透過マスクを作成します。この場合、空は問題がなさそうなので、空を除いた部分に有効なマゼンタ透過マスクを作成します。

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相対RGB色マスク画像作成ツール上でスライダーを動かし
マゼンタ透過マスクを有効にするG明度範囲を指定中

 出来上がったマゼンタ透過マスクが以下です。

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マゼンタ透過マスク
Gチャンネル明度範囲 0-145 / Mg閾値+25

 GIMPに補正1ファイルを読み込んだ状態で補正1画像レイヤーをコピーし、上のマゼンタ透過マスクを下記のように掛けます。そのレイヤーに対し、トーンカーブで、G値を引き上げ、R値を引き下げる補正を掛けます。こうすると全般的にマゼンタがかぶった画像が修正されます。下図はその補正が完了した状態です。

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マゼンタ透過マスクをかけて補正する

 さらにマゼンタ透過マスクがかかったレイヤーを複写します。そして、複写したレイヤーに対し[レイヤーマスクの適用]を行い、マスクとレイヤー画像の融合を図ります。

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レイヤーマスクの適用

 レイヤー画像とマスクが融合され、マスクが消えたら、そのレイヤーにG暗部透過二値マスクを再び掛けます。

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スクリーンモードで重ねる

 そしてスクリーンモードで重ねます。これは暗い部分を明るくするためです。その際不透明度を50%ほどにしました。100%だとちょっとやりすぎのような気がして、効果を控えめにします。これで暗部が少しはっきりしてきます。

 この時点で一旦TIFFファイルに出力します。最後にRaw現像ソフト(今回はdarktableを使用)にこのTIFFファイルを読み込み、コントラスト等微調整を行い、最終出力します。

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最終出力

 比較のため、再度オリジナルを掲示します。

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オリジナル

 全体のマゼンタがかりが消え、床下や道床もよりはっきり見えています。以下暗部を拡大して比較した図です。

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暗部補正前(上) 補正後(下) 比較

 かなりいい感じで補正できています。粒子の荒れもあまりないようです。

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