手持ちの写真で現像処理に失敗した写真があります。これをデジタル的に救済できないかと考えて、まずまずの結果が得られたので、その補正過程を公表したいと思います。
まず現像に失敗したオリジナル画像です。
現像タンクの中でフィルムのリール巻き付けの際、フィルムがずれてしまい、フィルム間の間隔が十分に開かなかったため、このように現像ムラができてしまいました。痛恨の失敗です... この現像ムラをデジタル的になるべく除去・補修することを考えます。
先日、デジタル的なカビの痕跡を消去を試みましたが、その時カビの痕跡は白でした。今回現像ムラはその反対で黒です。そこで例によって拙作の相対RGB色マスク画像作成ツール(Ver. 13)を活用してみます。
このツールを起動して、以下のようにマスクを作成します。
Upper ThresholdとLower Threshold (上限、下限閾値) は、空の部分の現像ムラがすべて含まれる(プレビュー画面で白でおおわれる)ぎりぎりの範囲を指定します。また今回は黒い部分を透過させたい(白くしたい)ので、Mask Invert for Negative Mask (ネガマスク用に反転) にチェックを入れます。できたマスクは下図です。
最終的にUpperとLower Thresholdは 241-112、また Tranceparency Factor (透明度係数)は2.0を指定しました。ここですポイントはなるべくLower Thresholdの値を高くすることです。そうすることで、空の部分で消失する電線などを必要最小限に抑えられます。このようなマスクの作成調整が簡単にできるのが、拙作のツールの特徴で、他の画像処理ソフトだと、このようなマスクを作成することができなかったり、複数のマスク(この場合は3枚のマスクを作成して重ねてかける必要があるはずです) を掛けるなど複雑な手順が必要です。ここで作成したマスク画像はGIMPに限らず他のレイヤー編集をサポートしている画像処理ソフトで活用することもできます。なおGIMPで使う時は、やはり拙作のマスク画像読み込みプラグインを導入していると、簡単にマスクとして画像を取り込むことができます。
そしてオリジナルファイルをGIMPで読み込んで、レイヤーを複写し、複写したレイヤーに上のマスクを掛けます。そしてマスクの不要な部分(画像上部以外の部分)を塗りつぶします。
そしてマスクを掛けたレイヤーをトーンカーブを使って明るくしていきます。
この程度できたところで一旦TIFFファイルに出力しました。この一旦出力したファイルに対し、先ほどと同じ要領で、再度相対RGB色マスク作成ツールでマスク画像を作成します。できた2枚目のマスク画像が下図です。
今回、UpperとLower Thresholdは 255-196、また Tranceparency Factorは1.0を指定しました。もちろんNegaマスクです(Negaではないように見えるかもしれませんがこれは、閾値の範囲指定の関係です)。
そして、今度は一旦出力したTIFFファイルをGIMPに読み込み先ほどと同じ要領で2枚目のマスクを掛けます。そしてマスクをやはり編集します。
そしてまたマスクを掛けたレイヤーに対しトーンカーブを使って明るく補正を掛けます。
この時マスクの境界部分が過剰に補正される傾向でしたので、一旦トーン再現カーブ(TRC)を外したリニア画像に変換してからトーンカーブで編集を掛けました。GIMPのメニューの[画像]→[精度]からリニア画像への変換しますが、16bit以上の精度と、リニアライトにチェックを入れてください。8bitだと調整したときにトーンジャンプが起きやすくなります。
リニア画像処理の詳細については以下のページの4.をご参照ください。
まあまあになったところで、画像を統合し再びTRCを掛けた画像に戻し出力します。この画像をARTに読み込みます。
ART上で、トーンカーブを使ってコントラストを上げ、空のハイライトを飛ばして誤魔化して出力します。その結果は下記のようになりました。
もちろん完ぺきではありません。ディテールが飛んでいるところは飛んでいますが、最初に比べればかなり誤魔化せていると思います。もっと完璧を期すなら三段階目の補正を追加して微調整を行ったり、空の部分をもうちょっと塗り込んだり消えた電線を描き込んだりする必要があると思いますが、そのあたりは時間との相談です。ここではこの技法のプレゼンテーションを目的としますので、一旦ここで終了とします。