[おしらせ]
この記事には、ツールのバージョンアップに対応した、以下の改訂版があります。
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すでにカラーポジフィルムをスキャンした画像のカビ取り補修の方法については以下のページに公開しています。
今回、モノクロネガフィルムをスキャンした画像で、オリジナルな方法で補修を行ってみました。基本的なやり方はカラーポジと似ていて、ImageJ上で走る拙作の汎用RGB色マスク作成ツールとGIMPを使います。そのために今回汎用RGB色マスク作成ツールでモノクロ画像 (単チャンネルのみの画像) を読み込めるよう改良しました。なお今回はモノクロネガなので、カビの部分は黒っぽくなったり色がつくのではなく、逆に白抜きになります。また色チャンネルが一つしかない点も難しい点です。
因みにネットで検索すると、フィルムから物理的にクリーナー等を使ってカビを除去する方法は見つかりますが、デジタル的に補正する方法の解説は極めて僅かです*1。
まず、相対RGB色マスク作成ツール Ver. 0.13を導入して下さい(それ以前だと単チャンネルのモノクロ画像に対応しません)。ダウンロードは以下のページからお願いします。
今回のカビ取りサンプル画像はこちらです。
フィルムの右側に白くカビの痕跡があるのがお判りでしょうか。拡大してみます。
いやはや、全く... 空の方はあまり目立たないにしても、黒っぽいところは、白々と鮮明な痕跡があります。
で、どうやって補修するのかというと、GIMPなどのレイヤー編集をサポートする画像編集ソフトを使って補修します。要は、オリジナル画像のレイヤーの上に、カビの部分を塗りつぶすレイヤーを置き、その上のレイヤーに、カビの部分を透過するマスクを掛けて補修する、というイメージです。
1. カビ部分透過マスクの作成
まず、拙作の相対RGB色マスク画像作成ツールを使って、カビ部分を透過するマスクを作成します。既にImageJや拙作のプラグインがインストールできているという前提で説明します。
ImageJを起動し、相対RGB色マスク画像作成ツールを動かします。ファイル読込ダイアログが開くので、補修したいファイルを指定すると、以下の輝度マスク作成パラメータ指定ダイアログが開きます。
カビの部分は白いまま残したいのでポジマスクを作成します。ですので Mask Invert for Negative Mask のチェックは行いません。それから下のMask Transparency Factorは4.0程度が適当なようです。
問題は Upper Threshold と Lower Threshold の設定です。Upper Thresholdは最大値の255で良いとして、Lower Thresholdはなるべくカビ周辺の地の明度に近いなるべく高い値を指定します。従って、空の部分のカビを補修するマスクは、空の明度の値 (この画像の場合は、220程度) をLower Threshold に指定します。従ってカビ周辺の本来の地の色に応じて複数の補修マスクを用意し、複数の補修レイヤーを使う必要があります。なお、写真の部分、部分の明度はGIMP等を使って測ってください。相対RGB色マスク画像作成ツールは明るさを8bit相当の値(0~255)で指定するので (これはImageJが8bit画像を扱うことを基本にしているためです)、明度を 0~100%で測るツール (例えばARTなど) で明るさを測る場合は、その値に 2.55 を掛けて計算してください。
上の設定でできた空部分補修マスクは下記のようになります。ファイル名は、
originalfilename_L_Zonex-y_CL+z_Mask_Binded.tif
になります。上の緑の部分は元のファイル名やパラメータの設定によって変わる部分です。
カビの部分が白々と見えます。
なお、本ツールを使わずにマスク編集をサポートした画像処理ソフトで同様なマスクを作って編集することも可能かとは思いますが、複数のマスクをそれぞれ作成して組み合わせないといけないので、かなり面倒かと思います。一発でこのようなマスクが作れる点が本ツールの特徴です。
同様な要領で、電車の暗い塗装部分の補修マスク等も作っていきます。
これは、主に右端の連結面のカビを補修するためのマスクです。右側にカビが白々とあるのがお判りでしょうか。
要はカビが生えている部分の地の明るさの段階に応じて複数のマスクが必要ということです。それぞれのマスクを本ツールを使わずに作成するとすると、1箇所に付き2−3枚のマスクを組み合わせないと同様のマスクが作れないので、相当な手間になります。また作成したマスク画像は、ここではGIMPを使って例示しますが、レイヤーマスク編集をサポートした画像処理ソフトならどれでも使えます。
2. GIMPでの編集
まずオリジナルファイルをGIMPに読み込みます。読み込んだらカビ部分を補修する塗潰しレイヤーを作成します。どうやるかというと...
まず、カビていない空の部分を範囲指定します。次にそこをクリップボードにコピーします。それを新たなレイヤーとしてカビの部分に当たるように貼り付けます。GIMPでコピーした部分を新たなレイヤーとして貼り付ける場合は、一旦 Ctrl+V でコピーした部分を貼り付けると下記のように[フローティング選択範囲]レイヤーが現れます(下の図はレイヤーダイアログ)。
この状態ではまだ未確定ですが、単純にEnterを押すと、下のレイヤーに張り付いてしまい別のレイヤーになりません。そこでこの状態でレイヤーダイアログの一番左下のボタンを押します。すると、新規別レイヤーとして貼りつきます。この点はPhotoshopに慣れた方は戸惑う部分です(Photoshopはデフォルトで新規レイヤーとして貼りつきますので)。これが補修用塗りつぶしレイヤーになります。
これを空のカビの部分を全面的に覆うように繰り返していきます。カビのない部分は覆う必要はありません。なお最初に新規別レイヤーを作成した後は、残りのコピーはこの別レイヤーに上書きする形で貼り付けを繰り返します(オリジナルの背景レイヤーには貼り付けないでください)。
貼りつけたときに、下のオリジナル背景レイヤーの画像が隠れますが、構いません。
一通りかびている部分のカバーが終わったら、塗潰しレイヤーのサイズをキャンバスに合わせます。
塗潰しレイヤーのサイズがキャンバスと同じになったら、塗潰しレイヤーに 1. で作成したマスク画像をマスクとして貼り付けます。なお、GIMPに拙作のマスクとして画像を貼り付けるプラグインを導入していると便利です。なおサイズを合わせないでマスクを掛けるとマスクがずれます。
マスクを掛けると、塗潰しレイヤーより暗い部分は、マスクによって透明になるので、隠れていた下の画像が現れます。但し塗潰しレイヤーより明るい部分は、その部分だけ塗潰しレイヤーを消しゴム等で消して透過させて、下の画像が浮き出るようにしなければなりません。下図の場合、車両の入線表示器が空の色より明るいので、その部分はレイヤーを消しゴムでけして、下にある表示器が見えるようにしているところです。なお、カビの痕跡は、下図のように拡大すると、完璧に消えているわけではありませんが、大幅に目立たなくなっています。
下図は、同様に、照明灯部分に消しゴムツールを当てて、照明灯の傘が見えるように補正しているところです。
そして、下の図はオリジナル背景レイヤーを不可視にして、マスクを掛けた塗りつぶしレイヤーを浮きだたせたところです。これがオリジナルレイヤーの上に当たって、カビている部分を補修するのです。
マスクの黒い部分が透過しています。この部分は背景レイヤーが見えるようになっている部分です。白っぽいところは、カビ部分を塗りつぶす部分です。この塗潰しレイヤーと背景レイヤーの画像を統合すればカビの痕跡が補修できるという寸法です。
今回、塗潰しレイヤーには、省力化のために単にカビていない空を貼り付けただけですが、まじめにやるなら、例えば上の照明灯の場合、照明灯の支持部分を塗りつぶしレイヤー上で描き込んだりすると、もうちょっと正確な補修ができます。だったら、最初から一から絵を上書きして補正すれば... という声もあるかもしれませんが、1から絵を上書きで書くと、既存の部分とのつながりが不自然になりがちです。空のような比較的色が薄い場合はカビの部分だけ塗潰し部分を残すマスクを掛けたほうが補修部分と非補修部分が自然につながりやすく見た目も自然になりやすいのです。従って補修にあまり神経・時間を使わなくてもまずまずな結果が得られやすいということです。
同様な要領で、色の濃い部分の補修も、さらにレイヤーを重ねて行います。但し、色が濃い場合はマスクの境界部分が目立ちやすいので、工夫が必要かもしれません。この部分についてはまだ補正方法は検討の余地が大きいです。
そして最後に画像を統合して出力すれば補修は終了です。
なかなか完璧には行きませんが、おおむねカビの痕跡が目立たない程度にはなりました。
この方法はカラーネガでも同様に活用できるかと思います。
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こちらの記事もご覧ください。
*1:ちょっと見たところでは、カラーフィルムについて以下のような記事がありました。Studio NAさんという写真撮影スタジオのブログです。Capture One の使用法について多くの解説記事を出されています。