シグモイド・モジュールは、2022.12の Ver. 4.2.0 から新たに正式に導入された、シーン参照からディスプレイ参照へトーンマッピングを行うモジュールです。同様のトーンマッピングを行うモジュールにはフィルミックRGBやベースカーブ (ディスプレイ参照ワークフローで使用) があります。これらのトーンマッピングを行うモジュールは併用せず、どれか一つを使用するようにしてください。
シグモイドモジュールのフィルミックRGBとの違いについては、以下の記事をご参照ください。フィルミック rgb よりも設定がシンプルです。
ここでは機能解説のみ行います。
基本的には、[コントラスト] と [傾き] で調整します。
[コントラスト] は、中間グレー点を支点として、ハイライトとシャドウのコントラストを設定します。値を上げるとコントラストは強まり、下げると、コントラストは弱まります。
[傾き] は、中間グレー点でのコントラスト値を変えずに、圧縮の度合いを、ハイライト側もしくはシャドウ側にずらします。値を正にするとハイライト側のコントラストが強まり、シャドウ側のコントラストが弱まります。値を負にするとシャドウ側のコントラストが強まり、ハイライト側のコントラストが弱まります。おそらく図にすると下記のようになるものと思われます(図はフィルミック rgb モジュールからとっています)。
[色処理]
チャンネル毎か、rgb比かを選べます。[チャンネルごと] を選ぶと r g b チャンネルばらばらにシグモイド曲線を適用しますが、これにより輝度、クロマ、色相に影響を与えます (シグモイド曲線の適用でこれらが変化する)。色相については、オプションの [色相の保持] で、色相をどの程度維持するか (変えないか) を指定することができます。このモードはアナログ・フィルムのカラーレイヤーの動作に似るということです。
[rgb比] を選択すると、rgb比を維持して、色相が変わらないようにシグモイド曲線を適用します。このモードは、フィルミック rgb に似ると説明されています。明るいピクセルは、ディスプレイ色空間をはみ出さないように Saturation を下げます。
[黒のターゲット]、[白のターゲット]
通常は変更しません。要は値をクリップする下限と上限を定めます。
なお、タイトル右のハンバーガーメニューから以下のプリセットが利用可能です。
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私もいくつか適用してみましたが、シグモイドは、フィルミックRGB よりもハイライトクリップした画像において偽色が出にくいです。シグモイドとフィルミック rgb のどちらが優れているかは一概には言えませんが、少なくともシグモイドはアーティファクト (人工的な不自然な副作用効果) が出にくいと言えます。現在 darktable のデフォルトは、フィルミック rgb ですが、その意味では、シグモイドに変えてよいのではないかと思います。また、色処理に [rgb比] を使うとフィルミック rgb に似るとマニュアルにはありますが、それでもアーティファクトが出にくいのは変わりません。
オンラインディスカッションの議論では、フィルミックは、ハイライトが鮮明になりやすい一方、シグモイドはより「フィルム的」で、客観的に良し悪しは論じることができず、どちらが良いと考えるかは好みの問題ではないか、という議論も出ています。
なお、次期フィルミック rgb Ver. 7 ではハイライト処理が良くなっているという説もありますので、次期公式リリース (夏に予定されている Ver. 4.4.0) ではフィルミック rgb のアーティファクトが出やすいという欠点も改善されているかもしれません。
ただ、シグモイドを使うと、デフォルトのチャンネル毎モードでは、輝度、クロマ、色相に影響を与えると darktable のマニュアルにあります。その点ではトーンカーブに似ており (但し、色相だけは、上記のように、変えずに動作させるオプションが提供されています)、Ver. 3.x 以降、輝度、クロマ、色相などの要素を極力分離してコントロールする方向に持ってきていた最近の darktable の方向性と異なります。フィルミック rgb の開発を主導してきて、かつ要素を分離してコントロールしようという方向を率いてきた、Aurélien PIERRE氏が、(おそらく) シグモイド・モジュールの採用決定をきっかけに、darktable 開発チームを離れたのも、理解できないわけではありません。
なお、オンラインディスカッションの議論などを見ると、シグモイドは、自然なフィルム調の画像作りにより効果的な一方、フィルミックはメリハリのある画像作りで効果を発揮する、というような意見が出ており、どちらを採用するかは好みの問題であるようです。また、画像にもよる部分があります。
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