省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

電車の向きと身延線旧形国電車両

 以下、当ブログで電車の紹介を行う時に車両向きについて説明することがありますが、ここで車両の方向の名称について説明しておきます。旧国鉄 (そして現在のJRでも) 電車の運転台を右側に向けた時に、その右端を1位 (第1エンド) と称します。またその反対左端が3位 (第3エンド) と称します。両側運転台の電車の場合は通常パンタグラフがあるほうが正面となり、そちらが1位です。

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電車の1位側と3位側

 一方、電車の向きを反対にし、運転台側を左に向けた時に、左端を2位(第2エンド)、右端を4位(第4エンド)と称します。

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電車の2位側と4位側

 従って、電車の前位 (運転台のある側) を見ると、左側が第1エンド、右側が第2エンドとなります。3-4位側が後位ということです。後位から見ると3位が右、4位が左になります。

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電車の前位

 

 第1エンドと第2エンドに関しては車両に下記のように表記があります。

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第1エンド、第2エンド表示

 この丸で書かれた数字のある側が電車の正面(前位)ということになります。第3,4エンド側は表記がありません。

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電車の向き

 従って、運転台が右に見える側を 1-3位側、左に見える側を、2-4位側と表記します。身延線旧形国電の場合、下りがMc、上りがTcに揃えられていましたので、各車端と上り下りの関係は以下の図のようになります。

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身延線の上り下りと車両の方向

 なお、かつて身延線車両が、東海道本線のローカル運用を担当していた時代 (1960年代前半まで) は、電動車の 2-4位側が海側で、かなり長時間海風にさらされて走ることがありました。しかし、その一方戦前の関東の電車の標準では、電動車の2-4位側が電気機器、1-3位側が空気機器という配置になっていました。電気機器が長時間潮風に当たると故障が起きやすくなります。そこで、60年代前半までは、横須賀線等から転入してきた下り向き電動車については、更新修繕の際に機器の配置を転換する工事が行われました。なお、その他の関東の車輛も、70, 80系から海側、山側を意識した機器配置を行うことになったのに合わせて、偶数車に関しては、更新修繕の際に2-4位側が空気になるように配置を変えたようです。

 クモハ14の場合、飯田線配属の車両も、転属によって東海道線静岡ローカルを担当する可能性があると考えられたせいか、ことごとく下り向きに揃えられたうえ、電気側と空気側の反転が更新修繕の際に行われたようです*1飯田線から富士急行に行った車両も、機器が反転されていました。また東海道ローカルに充当されなかったと思われるクモハユニ44も、低屋根化のついでに(?)かどうかは分かりませんが、機器反転が行われています(800~802のみ)。なお、富士電車区には1963年の静岡ローカル運用撤退まで、東海道線専用として低屋根化されていないクモハ14も在籍していました。撤退後は飯田線に移っていきました。

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富士急の7000系 7031 (旧飯田線用クモハ14)
床下機器の反転 (1-3位側が電気) が確認できる

 なお、もともと関西の京阪神間向けに作られた車両は、須磨以西で長時間海岸沿いを走ることからもともと下り向き電動車の2-4位側は空気、1-3位側は電気で製作されていました。

 しかし、60年代後半以降は身延線車両が長時間海岸沿いを走ることはなくなりましたので、転入時に方向転換を行うことがあっても、わざわざ機器配置まで変更するような改造は行われなくなったようです。

 因みに付随車のサハ45は、Tc車に準じて下記のように車端の番号が決められていました。トイレのない側が正面(①、②位)という扱いでした。つまり上り寄り (奇数向き) が正面ということです。

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T車の方向

 つまり以下の写真に見られる側がサハ45の正面ということになります。実際に車端に第1エンドのマークが見えます。

 

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サハ45008の「正面」

 

*1:例えば、以下のページに出ている写真をご覧ください。

kokuden.net