省型旧形国電の残影を求めて

戦前型旧形国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

黄変ネガ写真補正チュートリアルビデオ 追加補正編2 を公開

 黄変ネガ写真補正チュートリアルビデオ 追加補正編2 を公開しました。

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 今回追加補正の後半として、ARTを使った最終画像調整の例をお示ししました。とはいえ、最終調整は ART を使わなければならないというものでもないので、お好きなソフトウェアを使って、いただければよいと思います。ARTを使ったのは、あくまで参考例ということです。

 今回の例では、まずホワイトバランスの調整を行ったのち、ARTの機能の中でもトーンイコライザーとフィルムシミュレーションを使ってみました。

 トーンイコライザーは、ARTの母体となったRawTherapeeには搭載されていない機能で、darktableで採用されているアルゴリズムを簡易化して移植したものです。darktable (のシーン参照ワークフロー) では、トーンカーブを置き換えるものとして設計されていますが、ARTではトーンカーブの使用を否定していません。そのためか、トーンの分割ポイントもオリジナルの9段階から5段階へと簡易化されています。基本はトーンイコライザーを使い、そこで調整しきれない部分をトーンカーブで調整するということが、おそらく想定されているようです。

 もちろん、トーンイコライザーを使わずにトーンカーブだけで調整しても構いません。

 ARTのフィルムシミュレーションの他のソフトにない特徴として、Open Color IO (OCIO) 対応の高精度のルックアップテーブル(LUT)ファイルを使えるというものがあります。そこで今回はOCIO対応LUTを適用する編集を行ってみました。なおOCIOのLUTが使えるのはフィルムシミュレーションだけではなく、カラー/トーン補正でも可能です。

 この機能については以下をご参照ください。

▼ルックアップテーブル(LUT)関連機能

ARTにおけるCLF形式LUT対応 並びに WindowsにおけるOpenColorIOのインストール (2022.9.4)

ARTのホームページから、OpenColorIOのバイナリーがダウンロードできるようになりました (2022.9.5)

ART のカラー/トーン補正LUTモードで ARRI Alexa 用のLUTをダウンロードして使ってみた (Windows) (2022.9.16)

ART対応 AgX LUTが公開されています (2022.12.17)

 

 全体の色調調整も、LUTを使うだけでなく、カラー/トーン補正 からご自分で色相を調整して調整することも可能です。あくまでも参考例ということで,,,

中央西・篠ノ井線でようやく先頭に立てたクモハ43802 (一部蔵出し画像)

2023年、新年あけましておめでとうございます。

 毎年、今年こそはいいことがありますようにと祈ってはいますが、どうも社会全体としては年々悪化の一途をたどっているようで、心配です。昨年のせめてもの慰めとしては長年蓋をされてきた統一教会問題が再び明るみに出た、程度でしょうか。とは言え、1980~90年代には活発な批判報道があったのが、その後蓋をされてしまい、それが再び盛り返した程度であり、退歩を重ねる中でのわずかな一歩前進といったところでしょう。

 さて、今年の正月も例年通り旧形国電の紹介から始めたいと思います。こちらは中央西線篠ノ井線 上松ー木曽福島ー松本ー明科ー聖高原(麻績)間のローカル運用に使われていたクモハ43802 (長キマ) です。本車は長らく身延線で使われていましたが、アコモ改善車 62系の投入により、北松本運転支所に転出し、それまで気動車や列車で運用されていた中央西線篠ノ井線のローカル電車運用に転じました。本来は2年前に移ってくる予定でしたが、62系の完成が遅れて、1975年3月改正で北松本に移ってきました。

 本車は身延線時代はもっぱら中間車代用として使われており、ほとんど先頭に立ったことはなかったはずです。というのは身延線には横須賀線から転出してきた元サロのサハ45が5両あり、1970年以前に身延線の主力であったクモハ14800代は非貫通だったので、中間に入ってサハ45と連結するのには不都合がありました。そのため、前面に幌を備えていて、かつ半室運転台だった、3輌のクモハ43800代と2両のクモハ51850代がもっぱらこの中間車の役割を務め、身延線の4両貫通運用を担いました。他に幌付きのクモハ51802, クモハ43810, クモハ41800、クハ68001, 017, 019がやはり4両貫通運用の中間に入ることが多かったと思われます。しかし全室運転台のクモハはまだ先頭に立つ機会がありました。

 しかし、4両固定の 62系が転入してきたことで、サハ45中3両と、幌付きのクモハ43800代とクモハ41800、クハ68らが中央西線篠ノ井線のローカル用として転じました。中央西線篠ノ井線ローカル運用は2両運用だったので、サハ45は大糸線運用に転じ、それで捻出された主としてトイレなしのクハ55と、身延線から移ってきたやはりトイレなしのクハ68および低屋根電動車でこの運用を担当しました。

 身延線で日の当たらない中間車代用専門だった本車もようやく日の当たる先頭車運用に就くことができました。その晴れ姿が下の写真です。

クモハ43802 (長キマ) 1977.7 明科

 中央西線篠ノ井線のローカル用の車輛は、交番検査時のみ北松本支所にもどり、それ以外は松本運転所本所に常駐していました。下は日中本所で休む姿です。運転台貫通扉に通風孔の蓋が見えます。本車は1933年度末に竣工していますが、このころまで通風器が設置されていなかったので、その代わり正面に通風孔が設けられていたのだと思います。

 幌枠は原型通りです。

クモハ43802 (長キマ) 1977.7 松本運転所

 下は運転台部分です。半室運転台が維持されていましたが、それもあって身延線ではもっぱら中間車代用になっていたものと思われます。これはクモハ51850代も同様でした。運転台にはしっかりデフロスターが備えられてたのですが、身延線では宝の持ち腐れでした。

クモハ43802 (長キマ) 1977.7

 また、室内はモスグリーンに塗り替えられていました。これは43800代、51850代共通でした。あるいはサハ45が横須賀線サロ時代からペイント塗になっていましたので、それと連結するということでそうなったのかもしれません。

クモハ43802 (長キマ) 1977.7

 下は、聖高原から1222Mで松本に戻ってきたところです。

クモハ43802 (長キマ) 1977.7 松本駅

 下は、松本運転所で留置中です。留置状況を見ると、この時は予備車扱いで留置されていたようです。

クモハ43802 (長キマ) 1976.10 松本運転所

 

クモハ43802 (長キマ) 1976.10 松本運転所

 下はパンタグラフ側連結面。全検が 50-7 長野工になっています。なお、長野工場全検施行車では、第1エンドと第4エンド端にご覧のように フ という文字が書かれていましたが、これは何の意味だったのか... ? 他工場全検施行車では見られなかったと思います。

クモハ43802 (長キマ) 1976.10 松本運転所

 空気側床下です。

クモハ43802 (長キマ) 1976.10 松本運転所

 前部床下。車輪はスポークです。

クモハ43802 (長キマ) 1976.10 松本運転所

 クモハ43802が中央西線篠ノ井線のローカル運用に就いていたのは、1975年3月から77年8月までの僅か2年半余りでした。1977.8.10に115系増備の余波を受けて、この運用は80系に交代することになりました。同僚の中にはその後大糸線に転用されて生き延びたものもありましたが、本車は電動発電機の容量が1kwと小さかったため(おそらく暖房効果が弱い)、残念ながら生き延びることができませんでした。

 

本車の車歴です。

1934.3.2 川崎車輌製造 (モハ43022) 偶数向き → 1934.7.16大ミハ→ 1944.7.18 座席撤去 → 1948.11. 18 座席整備 → 1950.2.28更新修繕I (吹田工) → 1950.9.16東チタ → 1955.11.21更新修繕II(豊川分工) → 1960.4.20 東イト → 1964.2.5 静ママ→ 1965.3.3※低屋根化改造(浜松工)および改番(43802) → 1965.3.10 静フシ → 1969.4.11 静ヌマ → 1975.3.4長キマ → [75-7長野工全検] → 1977.9.9廃車 (長キマ)

※車歴簿確認データでは3.3、『関西国電50年』では3.9

 本車は川崎車輌でモハ43022として製造され、京阪神間の急行、各停運用に使われました。途中、座席撤去などはありましたが、4扉化改造を逃れ戦後を迎えます。しかし、1950年、一族の一斉の上京で横須賀線に転じます。1957年に横須賀線のクモハ43、53は偶数車に統一されますが、偶数車だったの本車は残ります。しかし、1960年、京阪神緩行線用の70系の横須賀線転用を契機に他の仲間と離れ、伊東線に転じます。おそらく、混雑が激しくなって、2扉だったクモハ43, 53は横須賀ー久里浜小運転用に必要な数に絞ったものと推測します。旧流電のサハ48も残されましたが、これは地方線区への転用が難しかったことや70系にサハが作られなかったためかもしれません。

 その後、1964年、当時伊東線はドル箱路線であるとともに伊豆急行との直通運転も行われていたことから、早い時期の113系化が決定し、本車は飯田線北部に転じます。デフロスターもこの時設置されたのでしょう。しかし1年後、おそらく身延線へのサハ45の転入で中間に入る電動車がなかったためか、身延線に転じることになり、低屋根化改造を受けます。その後の経過は上に書いた通りです。なお、スカイブルーに塗り替えられたのは、1975年7月の全検時と思われます。

 なお、中央西線篠ノ井線の当時のローカル運用については下記の記事をご覧ください。

yasuo-ssi.hatenablog.com

黄変補正ツール次期バージョンアップへのアイディア

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 コロナ禍が収まらない中、ウクライナ戦争の勃発とそれに伴う物価高、円の急落と、踏んだり蹴ったりだった2022年も暮れようとしています。皆さまのこの一年はいかがだったでしょうか。

 ところで、現在黄変ネガフィルム画像を補正するBチャンネル補正法ツールの次期バージョンの開発作業を行っています。来年への課題として、次のバージョンアップでは以下のような内容を考えています。

1) 緑保護マスクの強化

 現在のバージョンの黄変ネガカラーフィルム画像の補正ツールでは、主として、黄変量を推計して、その分をBチャンネルから差し引く (厳密に言えばBチャンネルの値を引き上げる) ことで、補正を行っています。しかし、この推計はGチャンネルの値を参照しながら行っているので、植物の緑など、相対的にGチャンネル値が高い部分もBチャンネルの値を引き上げる(青っぽくする)ことになります。同じ緑でも元々B値の高い青緑系はあまり影響がありませんが、B値の低い黄緑系は影響が大きくなります。またもともと黄色味のある部分と、あまりない部分では、黄変した時も、前者の黄変量は相対的に少ない傾向のようです。そのためもあり、B値の低い緑系(要はやや黄緑の傾向にある緑)の部分はあまり補正を掛けない方がより良い結果が得られるようです。

 そのためそのため、[preserve plant green] という緑の部分で補正を弱めるオプションをつけているのですが、どうもこのオプションの効果が弱い、つまり補正抑制効果が弱いようです。

 今回この効果を強化するために、このオプションのアルゴリズムを全面的に見直して書き直しています。

 とりあえず今テスト中の結果ですが下にサンプルを掲げます。なおサンプル画像は黄変画像ではなくデジタルカメラの画像ですが、緑色がどのように評価されるか分かりやすいので使っています。

元画像

 元画像は春先の新緑が写っています。黄緑の新緑が鮮やかです。これに対し、緑保護マスクを掛けた結果が以下です。

現行アルゴリズム

 上の画像で黒っぽい画像ほど、補正効果を弱めたりキャンセルする効果が強い部分です。既存アルゴリズムだと緑色の濃い部分は評価されますが、明るい黄緑色では、補正キャンセル効果がほぼ出ていないことが分かります。しかし通常、明るい黄緑色こそ補正を弱めたい部分なので、これでは困ります。

テスト中のアルゴリズム

 現在テスト中の新アルゴリズムでは、明るい黄緑色がより高く評価され、補正キャンセル効果が高くなる一方、B値の高い深緑はキャンセル効果が低くなっています。こちらの方がより適切と思われます。

 現在複数の画像を読み込ませてみて、適切なパラメータの値を探っている状況です。

 

その他、次期バージョンアップで考えていることとして...

2) 周辺補正レイヤーの閾値のパラメータ入力をノービスモードで省略

3) 遠景補正レイヤーの閾値推薦値の表示

を考えています。

 

信越線ではあまり活躍できず仕舞いで終わった クハ68090 (蔵出し画像)

 本日ご紹介する旧形国電は、松本運転所にいたクハ68090です。本車は仙石線の快速用として使われていましたが、仙石線では1975年にセミクロス車の使用が停止となり、それによって本車はモハ70とともに仙石線から信越線に移ってきた車輛です。

 当時信越線では奇数側の制御車はクハ68に、偶数側はクハ76に統一されていました。しかし、クハ76の不足から本車のみは松本運転所唯一の偶数側のクハ68として配備されました。しかし、それにはいささか問題がありました。というのは信越線用のクハ68はすべて便所なし車、それにたいしてクハ76は便所設置車となっていました。ところが本車は便所がありません。ということは、必然的に本車を連結した編成は便所がないということになってしまいます。それでも2連8両で運用されているときならまだ良いのですが、単独編成で運用されているときは編成中に1カ所も便所がないことになり乗客に不便を強いることになります。というわけで本車はもっぱら予備車として使われ、クハ76が検査で足りない時だけ駆り出されるという使い方になってしまいました。

 結局その不便から、長岡区から便所付きのクハ68200が押し出されてやってくると、より車令の高い68200 (元クハ47002) に道を譲ることになり、信越線の70系運用廃止前に廃車になってしまいました。

クハ68090 (長モト) 1976.10 松本運転所

 運転台のHゴムと関西型通風器で、関西出身であることが分かります。運転台窓下に設置された手すりは、仙石線仕様です。但しスノープロウは信越線仕様です。

クハ68090 (長モト) 1976.10 松本運転所

 ご覧のように仙石線向きに押込み式ベンチレータに改造されていました。美しいノーシルノーヘッダーのクハ55を改造した車輛です。

クハ68090 (長モト) 1976.10 松本運転所

 2-4位側です。

クハ68090 (長モト) 1976.10 松本運転所

 運転台。

クハ68090 (長モト) 1976.10 松本運転所

 3-4位側連結面です。全検施行工場は仙石線時代に受けた1974年11月郡山工場のままとなっています。結局長野工場で全検を受ける前、全検切れに合わせて廃車となってしまいました。しかし、長野工場で信越線仕様に改造する際に、スカ色に塗り替えらています。

クハ68090 (長モト) 1976.10 松本運転所

 川崎車両の製造銘板(昭和15年)と、更新修繕を担当した吹田工場(昭和32年)の銘板が見えます。ジャンパ栓受けは3栓に改造されています。そのため、ジャンパ栓受け台に取り付けられています。ただし、信越線で使われた70系の多くは横須賀線中央西線を経由して長野に入っており、横須賀線由来の両支持形のほろを備えていました。しかし、ジャンパ栓とは異なり、幌は京阪神緩行線仙石線以来の片支持式のままでした。おそらくモハ70とつなぐ際は、長さを延長するための幌を噛ましていたものと思われます。この面からも本車が予備車的扱いだったことがわかります。

 また車端下部に標識を掛ける金具が見えます。これは運転台側にもありましたが、これも仙石線の特徴で、郡山工場入出場の際は、途中が交流区間のため必ず機関車に牽引されて入出場していましたので、回送列車末尾に来たときに標識を掛けるための金具だと思われます。

クハ68090 (長モト) 1976.10 松本運転所

 床下です。

クハ68090 (長モト) 1976.10 松本運転所

本車の車歴です。

1940.7.27 川崎車両製造 (クハ55068) → 1940.8.9 使用開始 大ヨト → 1943.12.28 座席撤去 → 1948.12.23 座席整備 → 1950.11.15 大ミハ → 1953.6.1 改番 (クハ68090) → 1954.3.21 大アカ → 1957.12.20 更新修繕I 吹田工 → 1969.8.30 仙セキ → 1971.4.1 仙リハ (仙石線管理所→陸前原ノ町電車区へ改称) → 1975.2.21 長モト → 1976.11.10 廃車 (長モト)

 本車は 1940年川崎車輌にて城東・片町線用として製造されました。関西出身にしては、側面の急行表示用サボが見当たりませんが、それはそのせいなのか、それとも後に撤去されたのか...? しかし、1950年に宮原区に移り京阪神緩行線用に転じ、そのままセミクロス化されてクハ68に改番されました。その後明石区に移り、1969年の103系投入によって仙石線快速用として転用されます。本車は仙石線からのセミクロス車撤退まで居残ったのち、信越線に転じその後の事情は上記の通りです。そして全検切れとともに廃車となりました。

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なお、以下に仙石線時代の写真をアップされた方がおられました。

homepage3-nif-nomnom.la.coocan.jp

 また松本運転所転入直後の、まだ未改造、鶯色の状態の写真をアップされている方もおられました。

blog.goo.ne.jp

 

新緑にセンシティブなマスクを作る - 相対RGB色マスク作成ツール探求版マスク画像作成事例

 先日、相対RGB色マスク作成ツール探求版をリリースしましたが、あの説明だけでははっきり言ってピンとこないと思います。そこで、具体例を提示します。

 以下の画像から、新緑に対してセンシティブな、つまり新緑がなるべく明るくなるマスクを作ってみます。まずオリジナル画像です。

オリジナル画像

 ここから通常のG透過マスクを作ってみます。

G透過マスク

 上のマスクプレビューは、透過率を1.5、またRGB間のレベル調整を行っています (やや暗くなります)。対照となるRとBの混合率は 0.5 : 0.5 です。

 これを新緑 (黄緑) にセンシティブなマスクを作るには、Rの比率を下げます(= Bの比率が上がる)。原色透過マスクをつくるときは、センシティブにしたい色要素の比率を下げることがポイントです。0.25まで下げてみます。

黄緑にセンシティブなG透過マスク

 前方の新緑に木々や左側のやや赤みの入った木の葉を中心にやや明るくなっています。これを逆にしてみるとどうでしょう。Rの比率を0.75に逆に上げます。

黄緑に鈍感なG透過マスク

 黄緑や赤みのある部分を中心に暗くなっています。逆に青みの高い部分は明るくなっています。黄緑に対し反応が低下したことが顕著です。但し黄色味の少ない明るい緑(蕎麦屋の幟の下の植え込み)は明るさが落ちていません。

 あるいは、黄緑にセンシティブな黄色透過マスクを作るという方法もあり得ます。黄色透過マスクの場合、緑透過マスクとは異なり、補色透過マスクになります。補色透過マスクの場合センシティブにしたい色要素の比率を、原色透過マスクとは反対に、増やします。以下、Gの比率を0.75に高めた黄色透過マスクです。条件は、マスク作成対象が黄色になった以外は上と同じです。

黄緑にセンシティブなY透過マスク

 黄緑にセンシティブな緑マスクより全般的に明るくなっています。なお、Gの比率を0.25に下げたマスクも見てみましたが、あまり変わりません。これは新緑の黄緑はRもGも値が高いからだと思います。オレンジや青に寄った緑であれば、この値を変えた時大きな変化があるはずです。

 

 また今度は逆に青緑にセンシティブな緑透過マスクを作ったケースです。例えば、以下の画像ですが...

補正元ファイル

こちらは、元々黄変したファイルに Bチャンネル再建法を適用し、さらにマゼンタ被りの除去を行ったファイルです。しかし、田んぼの稲が全般的に青緑になっています。曇っているのである程度青みがかるのは仕方ありませんが、しかし、一般的には稲はある程度黄緑に寄りますので、不自然です*1。これはBチャンネルとGチャンネルの接近という副作用、もしくはスキャナドライバが黄変のために青に寄せる補正を掛けたためと思われます。

 これを修正するために、青緑に寄った緑透過マスクを作ります。青緑に寄った緑投下マスクをつくるには、上とは逆に、Rの比率を上げると (つまりBの比率が下がると) より青に寄った色にセンシティブになります。

青緑に寄った緑透過マスク

 このマスクを掛けて以下のように黄緑に寄るように(G, Rを上昇させ、Bを下げる)修正していきます。

修正中

 そしてさらに ART を使って仕上げた結果は...

終結

 これでだいぶ田んぼらしくなりました。

 というような具合に、探求版は使っていきます。

 本ツール、および相対RGB色マスク作成ツールの位置づけとしては、画像全体を対象にカラーグレーディング編集を行うのと、類似色、あるいは特定色域を狙ったカラー編集を行うのとの中間領域を狙ったツールと言えると思います。

*1:例えば、以下は夏の晴天時の田んぼを撮った写真のRGB値の例です。プロファイルはニュートラルを適用しているので、やや暗くトーンも平板になっています。

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ニュートラルでのRGB値

ART 1.18 がリリース予定です (→されました)

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 すでに、1.18の新機能についてお知らせしたことから予想がつく通り、近くART次期バージョン 1.18がリリースされます。

 主な内容は、先日お知らせしたセッション機能の追加と、ファイルのリネームパターンの変更 (ファイル末尾に数字が含まれても、その後自動的に付加される番号とバッティングしないような設定が可能なように変更) です。

セッション・コマンド
(ファイルブラウザ上で右ボタンクリックでコンテキストメニュー表示)

ファイル名変更のパターン
※ファイル名の最後に数字が含まれている場合は %# を使う

 またHDR出力にも対応していますが、ユーザが設定する必要があります (但しWindows版では、ユーザ設定不要)。HDR出力設定方法については、以下のページをご参照ください。

agriggio / ART / wiki / Hdroutput — Bitbucket

 

HDR出力

 

 ダウンロード元は下記になります。

bitbucket.org

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バージョン1.18は 1/2 (日本時間では1/3) にリリースされました。

決定版! 不均等黄変・褪色ネガ写真のデジタル補正術・チュートリアルビデオ (ハイブリッド補正対応版)

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 不均等黄変・褪色ネガ写真のデジタル補正術・チュートリアルビデオを昨年9月に公開しましたが、今年の7月の、Bチャンネル再建法ツールのアルゴリズム変更によって、ユーザインターフェースが変わってしまいました。しかし、それに対応したビデオをリリースしていませんでした。しかし昨日(2022/12/25)、ハイブリッドアルゴリズム対応版をリリースしました。

 今回のバージョンはマニュアル 5-2 および 5-3 相当分を1本にまとめています。時間は5分でほぼリアルタイムですが、今回のサンプルファイルはピクセルの横幅を1920にしていますので、よりピクセルサイズの大きいファイルを使用する場合はもっと時間がかかります。なお動画をキャプチャしたパソコンは4年前に発売された Core i5 の Let's Note メモリ 8G 搭載機です。今となっては平均以下の性能です。

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 このビデオに対応するマニュアルページは下記になります。なお、以下のマニュアルに移る前に、マニュアル (5-1) をご覧になり、ソフトウェアやツールの準備を行ってください。

yasuo-ssi.hatenablog.com

yasuo-ssi.hatenablog.com

 

 なお、追加補正については、ImageJ & GIMPによる編集過程についてのビデオは作成しました。この中ではマゼンタ被りの補正と、植物の緑の補正を行っています。

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この続きを以下に公開しました。

yasuo-ssi.hatenablog.com

 ちなみに以前のバージョンのビデオは以下をご覧ください。

yasuo-ssi.hatenablog.com