[お知らせ]
このツールの最新版は以下からダウンロードして下さい。なお、2タイプあります。作るマスクは同じですが補正方法が異なります。必要に応じて使い分けてください。
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さて、本年も余すところあとわずかとなりましたが、皆さまにとって今年はどんな年だったでしょうか。
ところで、ImageJ プラグインとして相対RGB色マスク画像作成ツールを本サイトで公開していますが、今回、ART Ver. 1.21 で新たにサポートされた CTL を使って、これを ART の CTL スクリプトとして移植してみました。
実は当初は、このブログでも紹介した Tetrahedral Color Warping (RGB) が相対RGB色マスク画像作成ツールを使った編集をエミュレートできるかと思いましたが、どうも今一つ使い物にならないということがわかったので、それを使うのはあきらめ、自分のプログラムを移植することにしました。
とはいえ、ART では CTL で直接マスクを操作することができません。そこで、指定した色領域のRGBを操作する際に、その効果をマスクをエミュレートして制御するという形にまとめました。
ちなみに、ImageJ 対応版ですと、ImageJ を起動してマスク画像を作成し、それを GIMP にマスクとして読み込み、さらにトーンカーブ等を使って編集しなければなりませんが、こちらだと ART で完結できます。その意味でART 版の方がお手軽に編集できます。ただ GIMP 上ほど細かいマスクの編集はできません。
とりあえず使い方から説明します。
なお、そもそも ART とは何かという説明はこちらを、また入門チュートリアルはこちらをご覧ください。
・インストール方法
まずこちらから CTL スクリプトファイルをダウンロードして下さい。
次に ART のユーザ用設定ディレクトリに、ctlscripts というサブディレクトリを作ります (デフォルトでは存在しません)。 Windows の場合、ユーザ用設定ディレクトリは通常、 C:\Users\%USERNAME%\AppData\Local\ART\ になります。Linux の場合は、$HOME/.config/ART になります。
なお、Mac の場合、/Applications/ART.app/Contents/Resources/share/ctlscripts にコピーした方が良いです。
このサブディレクトリに、ダウンロードした CTL スクリプトをコピーします。なおモジュール名は「相対色領域補正」としました。
・CTL スクリプトの起動方法
ART のローカル編集 > カラー/トーン補正 > モード から「相対色領域補正」を選択します。
・編集ダイアログ
起動すると、以下のようなダイアログが現れます。
まず、一番下 [対象色領域] から編集対象色領域を選んでください。以下の6領域から選べます。
色領域を選択後、[対象色領域のRGB補正] の下にあるスライダーを動かすと、画面上の対象色領域に相当する部分の RGB 値が調整されます。例えば全般的にマゼンタがかっているのを補正したい場合は対象色領域としてマゼンタを選択し、RGB スライダーのGreen スライダーを、マゼンタと補色関係になる G 方向に動かすと、マゼンタが解消されます。また[明るさ] を明るくすると、対象領域のピクセルの明るさが明るくなります。
なお、画面上の補正対象色範囲を拡大したい場合、例えば、マゼンタの範囲に、ややマゼンタ味の少ない部分も含めたい場合は、[対象色の閾値調整] で [拡げる] 方向にスライダーを動かすと、画像上の対象に含まれる部分が拡大します。逆に範囲を絞りたい場合は、[狭める] 方向に動かします。このように色の閾値を動かすことができるのが本ツールの大きな特徴です。
さらに [対象色の傾き] とは対象となる色の範囲を動かす機能です。例えば、仮に対象色領域が [緑] だった場合、もし、スライダーを右に動かすと、補正対象となる色の範囲が緑から、青緑にずらされます。また逆にスライダーを左に動かすと対象色領域は緑から黄緑にずらされます。このように対象となる色の領域のニュアンスをずらす機能が [対象色の傾き] です。
[補正強度] は説明不要かと思います。スライダーを右に寄せると補正の度合いが強まり、左に寄せると弱まります。
[対象領域表示] は、ここにチェックを入れると、どの範囲が編集対象になっているか、黄色で表示してくれるので、非常に便利です。
以上のパラメータは基本的に ImageJ 版 相対RGB色マスク作成ツールと共通するパラメータですが、ImageJ 版にあって、本ツールにないパラメータがあります。例えば、マスク適用範囲となる明度を指定するパラメータです。これについては、下図のように、ART のローカル編集のパラメータ指定マスクを適用することを考えています。
例えばパラメータ指定マスクの [明度] カーブで基本的にこの機能を代替していただきます。
またエリアマスク、類似色マスク、ブラシマスクも併用することができます。これによりある程度 GIMP においてマスクを直接編集するのと同様な機能を代替することができます。ただし、100% 代替可能とは限りません。
また、編集のために複数のインスタンスを設定することができますので、例えば、マゼンタ補正インスタンス、さらに緑補正インスタンス、黄補正インスタンス... というように設定することができます。ちょうど、相対RGB色マスク作成ツールを使った複数の編集レイヤーを作成することができるのと同様です。
これにより、B チャンネル再建法適用後の画像について色被りなどの追加編集調整がART だけで可能になります。またそもそも不均等黄変の生じた画像に対し、黄変の程度がさほど深刻でなければ、本ツールのみを使って不均等黄変を除去することも可能です。例えば下記にその例を掲載します。
例えば以下の画像の場合ですが...
これを相対色領域補正モジュールを使って3つのインスタンス (Y補正, B補正, Mg 補正 + パラメータ および エリアマスク併用) を作成し、不均等黄変を補正してみた事例が下記です。
かなりうまく不均等な色被りが補正されているのが分かると思います。ただ、B チャンネル再建法だと荒れた B チャンネルのテクスチャを回復する機能がありますが、本ツールだとテクスチャ回復機能まではありません。また、ImageJ + GIMP ほどまでの自由度の高い編集はできません。そのため、本ツールは比較的変褪色の程度が軽い画像での活用をお勧めします。
このように本ツールは変褪色、あるいは色被りの大きなフィルムスキャン画像の補正に非常に高い効果を発揮します。自分で言うのもなんですが、結構使えるツールに仕上がっていると思います。ぜひ今回の正月休みにでも、フィルムスキャン画像の編集等にご活用いただければと思います。
なお、ART におけるマスクの掛け方については、以下の記事ごご参照ください。
・ART / RawTherapeeのマスク編集方法 (2021.9.5)
・ART ローカル編集解説: エリアマスク (2023.2.18)
・ART ローカル編集解説: ブラシマスク (2023.2.23)
・ART ローカル編集解説: マスク間の重ね合わせについて (2023.2.26)
・ローカル編集モジュールを多重に掛ける (2021.11.7)
また、そもそも ART とは何ぞや、という方は以下の拙稿をご参照ください。
また、このツールの英語版は以下にて公開しています。