この記事には新バージョンがあります。現在のツールの説明は、そちらをご覧ください。
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目次
1. 本連載記事の概要
3. 写真補正の原理
4. Bチャンネル再建法による不均等黄変・褪色ネガ写真補正の方法 (本記事)
5-1. 具体的な補正実施手順 - 準備
6. 追加マニュアル補正の実施
補足. GIMPの代わりにPhotoshopで不均等黄変画像の編集を行う
補足. 標準的なBチャンネル再建法(+汎用色チャンネルマスク作成ツール)による黄変写真補正過程
チュートリアルビデオ. 決定版! 不均等黄変・褪色ネガ写真のデジタル補正術・チュートリアルビデオ (ハイブリッド補正対応版)
[お知らせ]
このページで公開している情報は、Bチャンネル再建法ツールが採用しているアルゴリズムのうち、Gチャンネル情報ミキシングアルゴリズムについての解説です。2022年7月末のバージョンアップより、本ツールは、基本的に本アルゴリズムと、直接黄変量を推計する拡張疑似フラットフィールドアルゴリズムの併用 (ハイブリッド) で動作しています。拡張疑似フラットフィールドアルゴリズムの紹介に関しては、こちらのページをご覧ください。
4. Bチャンネル再建法による不均等黄変・褪色ネガ写真補正の方法
今回の記事ではこの技法 (Bチャンネル再建法) の核心部分をご説明します。今回新たに考えた不均等黄変・褪色ネガ写真補正術の基本的な考え方は、すでに述べたように色チャンネルを使ったマスクの活用とBチャンネルの再建という2つのテクニックのハイブリッドです。つまりRチャンネルを使ったマスクを活用しつつGチャンネルやRチャンネル情報を流用してBチャンネルを再建し、この再建Bチャンネルを既存のRチャンネル、Gチャンネル情報とチャンネル合成し、補正カラー画像を作成します。
もう少し具体的に説明すると、レイヤー編集が可能なフォトレタッチソフト (後の説明ではGIMPを使うが、Photoshopその他でも可能) を使って、まず再建Bチャンネル画像を作ります。この再建Bチャンネル画像は以下の画像レイヤーを重ね合わせて作ります。
a. オリジナルBチャンネル画像 (背景)
b. 中近景明部補正用画像レイヤー
Gチャンネルの情報を使ってBチャンネル情報を補正したもの。つまりBチャンネル3割、Gチャンネル7割で合成した画像に、Rチャンネル全体に128を足した画像のマスクを加えたもの。
なお、Rチャンネル全体に128を足した画像のマスクを掛けているのは、再建BチャンネルとGチャンネル間の多様性を確保するためです。R値の低い部分がマスキングされ、オリジナルのB値がより反映されることになります。これは青みの強い部分は、B値が高く、R値(およびG値)が低いであろうから、そのような部分でよりオリジナルのB値を反映させたら、BチャンネルとGチャンネル間の多様性がより確保できる(→より彩度の高い画像を再構成できる)のではないか、と考えてこのようなマスクを掛けています。また、当然ながら元々暗い部分(R,G,B値が揃って低い部分)もR値が低くなりますが、このような部分は彩度が低いので、Bチャンネルが大きく反映されても大きな影響はないと思われます。
ただこのようなマスクを掛けることが常に正しいとは限りませんので、場合によってはマスクを掛けない方が良いかもしれません(その場合はオリジナルB値は反映されないことになるとともに全般的に彩度が低めになります)し、適度にマスクの濃度を調節しても良いかもしれません。この辺りはまだ再検討の余地が高い部分です。
c. 遠景明部補正用画像レイヤー
b)と同様、Gチャンネル情報を使ってBチャンネルを補正するが、空などの遠景の補正に使うため、Gチャンネルの情報に30を加えて作る。具体的に説明すると、Bチャンネル3割、Gチャンネルに30を加えた画像7割で合成した画像に、遠景透過マスクを加えたもの。遠景透過マスクは、上のRチャンネルに128を加えた画像を、さらに値が255の部分以外を0に二値化した画像を基に、近景を塗りつぶしたもの。
d. 近景暗部補正用画像レイヤー
近景暗部や暗褐色部の青浮きを補正するためのレイヤー。RチャンネルとGチャンネルを5対5で合成した画像の暗部 (例えば50以下とか25以下) のみを残し、それ以外を透明化した画像レイヤー。場合によっては、原画を参考に、さらに必要ない過剰補正部分を削るなどレタッチする。
以上の画像レイヤーを下からa, b, c, dの順に重ね合わせて画像を合成し、補正Bチャンネルを作成します。その下にオリジナルBチャンネルを再掲しますが、それと比べるとかなり画像がしっかりしているのが分かります。
以上のBチャンネル補正法の基本的な考え方は、次の通りです。比較的明るい部分のBチャンネルの再建には、Gチャンネルの情報を混合することで補正するとともに、暗い部分の補正には、GとRを混合した情報を使うということです。なぜかというと、明るい部分の補正には主として不均等黄変の補正を狙っており、これには山や植物などを考えると、Bチャンネルの情報はGチャンネルの情報と傾向が似ている可能性が強いと考えてGチャンネルの情報を混入させてBチャンネルを再建しようと考えたからです。一方暗い部分の補正の主たる狙いは、黒や暗褐色の部分が、Bチャンネルの情報が明るめに浮くため、青紫に色抜けする傾向を補正するためです。このため、褐色と関連の深いRとGチャンネルを混合した情報で、Bチャンネルの情報を補正しようと考えました。また、遠景補正レイヤーに混入するGチャンネルの情報に、値を30上げたGチャンネル情報を使う理由は次の通りです。遠景は一般的に青みがかっています。ですので、Gチャンネルの値よりBチャンネルの値が大きく(=明るく)なければなりません。Gチャンネルの情報をそのまま混合するのでは青みが足りなくなり、全般的に緑ないしは黄色がかってしまいます。このためGチャンネルの値を高めた(=明るくした)情報を混入して補正するわけです。さらに、近景補正レイヤーに、Rチャンネルに128を加えた画像でマスクをかける理由は、一つはGチャンネルのブレンドは主として明部の補正に使うので、暗部の補正量を減らすためと、過剰補正(とそれに伴う不自然さ)を牽制するために、B, Gチャンネルとパターンの異なるRチャンネル情報でマスクをかけることを考えました。
正直言うと、補正の適正量やチャンネル情報のブレンドの適正量は写真一枚一枚ごとに異なると思います。ただ、それを写真一枚ごとに検討しているといくら時間があっても足りません。そこで、100%はなくても少なくとも60%程度は補正でき、かつあとはフォトレタッチソフトで追い込み補正ができるという最大公約数的な結果を達成できるという観点から、経験的にこの補正方法を決めました。ただまだ改良の余地はあると思ってはいます。
そして、補正Bチャンネルができましたら既存のR, Gチャンネルと合わせてチャンネル合成すると補正画像が出来上がります。
この補正画像では、黄変がまず消えています。また手前の線路の褐色の青紫浮きも修正されてしっかりしています。全般に若干ピンクがかっている感じもありますが、これはフォトレタッチソフトで修正可能な範囲です。で、さらにフォトレタッチソフトでもう一段追い込んだ結果がこちらです。まだ補正の余地があるかもしれません。
で、実際にソフトウェアを使った具体的な補正実施方法は次回から順次紹介します。
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なお、本記事で紹介した写真補正技法やソフトウェア (Plug-in) は、個人的および非営利用途であれば、自由に使っていただいて構いませんが、本技法を使って何らかの成果 (編集した写真等) を公表する場合は、本記事で紹介した技法を使った旨クレジットをつけて公表していただくことをお願いします。
また、本ソフトウェアは現状のまま提供されるものし、作者はこれを使ったことによるいかなる損害補償等にも応じられないことを了解の上使っていただくものとします。
但し、もしソフトウェアのバグがありましたら、ご連絡いただければなるべく改善するよう努めたいと思います。
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