省型旧型国電の残影を求めて

戦前型旧型国電および鉄道と変褪色フィルム写真を中心とした写真補正編集の話題を扱います。他のサイトでは得られない、筆者独自開発の写真補正ツールや補正技法についても情報提供しています。写真補正技法への質問はコメント欄へどうぞ

決定版! 不均等黄変・褪色ネガ写真のデジタル補正術 (6-2)

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目次

1. 本連載記事の概要 

2. 今まで紹介されてきた経年劣化による変褪色写真の補正術 

3. 写真補正の原理    

4. Bチャンネル再建法による不均等黄変・褪色ネガ写真補正の方法                

5-1. Bチャンネル再建法による具体的な補正実施手順 - 準備   

5-2. Bチャンネル再建法による具体的な補正実施手順 - ImageJによる作業   

5-3. Bチャンネル再建法による具体的な補正実施手順 - GIMPによる作業

6-1. 追加マニュアル補正の実施 - 補正不完全の原因分析と追加補正方針の決定

6-2. 追加マニュアル補正の実施 - 追加編集作業の実際 (本記事)

補足. GIMPの代わりにPhotoshopで不均等黄変画像の編集を行う

補足. Bチャンネル再建法 補正ツール簡易版

6. 追加マニュアル補正の実施

6.2. 追加編集作業の実際

6.2.1 GIMPにおける疑似非破壊画像編集法

 まず、お断りしておきますが、以下の記事はGIMPの最小限の基本操作法を理解されている方を対象にしております。GIMP自体全く初めて、あるいは写真編集自体全く初めてという方は、事前準備として、別の書籍やサイトをご覧いただき、基本操作についてご理解いただきますよう願い申し上げます。どちらかというとPhotoshopにはある程度慣れているけれども、GIMPにはまだ慣れていない、というような (かつての私のような) 方を想定した記述になっているかと思います。また既にPhotoshopに慣れており、Photoshopを使って編集するという方には、本記事を読まなくても前回の記事を読めばどうやって追加補正していけば良いか、すでに頭に浮かんでおられるものと思います。

 では、GIMPにおいて、色域の選択とトーンカーブ調整をどうやって組み合わせて編集していけば良いのでしょうか。「簡単じゃないか。色域の選択で領域選択したら、トーンカーブをいじればいいんじゃないの?」...  NGです。まぁ、ソフトウェアの使い方は自由ですから人がどうこう指図すべきではないかもしれませんが、この方法では「弘法筆を選ばず」の領域に至らない限り、迷宮にはまる可能性大です。

 GIMPPhotoshopを比較したときに、GIMPの操作上の最大の弱点は、Photoshopにある調整レイヤーという概念がないことです。この違いについては以前私が以下の記事を書きました。

 

blog.goo.ne.jp

 

 調整レイヤーという概念がないということは、非破壊編集ができないということです。Photoshopの場合、トーンカーブ調整を行おうとすると、直ちに調整レイヤーが作成されます。この調整レイヤーには、あくまでもオリジナルの画像レイヤーをどう変換するかが定義されているだけで、オリジナルの画像レイヤーは変更されることがありません。ただオリジナルの画像レイヤーは変換を定義した調整レイヤーを掛けると、画像が変換されて表示されますので、どう変換されたかは目で確認できます。いくら編集してもオリジナルの画像はそのままですので、非破壊編集なのです。そして最後に画像の統合を掛けると初めてオリジナル画像が変更されて最終結果のファイルが得られます。

 ですが、GIMPトーンカーブをいじると、即時に画像そのものが変更されてしまいます。もちろん、失敗したなと思えば [元に戻す] 機能はありますので、[元に戻す] を何度も繰り返せばオリジナルに立ち戻ることは可能ですが、かなり面倒です。これが非破壊編集ができないということです。

 そこでどうしていくかというと、Photoshopに倣って、疑似非破壊編集を行うわけです。GIMPの達人の方には、内容的には今更... という話かと思いますが、我慢してお付き合いください。疑似非破壊編集の考え方は次の通りです。

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疑似非破壊編集の基本的な考え方

 当然ですが、上のオリジナル画像レイヤーも部分補正レイヤーもすべて画像レイヤーです。そして、オリジナル画像は一切手をつけず、部分補正レイヤーのみを編集対象とします。こうするとオリジナル画像は破壊されませんし、トライ&エラーを繰り返す場合も部分補正レイヤーの可視/不可視を切り替えるだけで済みますので、非常にスムーズで、迷宮にはまる可能性が低くなります。例えば2つの編集方法があってそのどちらを採用すべきか迷うような場合は、部分補正レイヤーを2つ作って、オン/オフを切り替えてどちらが良いか比較して決定するわけです。ただ、こうするとPhotoshop形式のファイルよりファイル容量が嵩む傾向にありますが、これは止むをえません。なお、レイヤーを重ねるモードは[標準]を前提とします。

 以下具体的に、色域選択を使って部分補正レイヤーを作る方法について説明します。特に、最初Photoshopに習熟してからGIMPをいじろうとする場合、そもそもGIMPには調整レイヤーの概念がありませんので、同じ色域選択といっても、Photoshopと操作法が異なります。操作性が悪いと感じる面も多々あると思います(私もそうでした)。ですがGIMPに慣れてきますと、実はGIMPのほうがPhotoshopよりも柔軟性が高く、編集可能性が高いということがご理解いただけると思います。

6.2.2 GIMPにおける特定色域の選択機能

 2021.2.28に追加補正をサポートするマスク作成ツールを公開しました。色域選択を使わずに、こちらのマスクを使って追加編集を行うこともできます。詳しくはこちらのページをご覧ください。

 さて、部分補正レイヤーを作るには、色域選択機能の活用が必要となります。GIMPでは色域選択のアイコンは下図のようにツールボックスにあります。場合によるとこれがファジー選択のアイコンに置き換わっている可能性がありますので、その場合は、その2番目の図のようにアイコンを右クリック後、[ファジー選択]から[色域を選択]に切り替えてください。

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 [色域を選択]を選びますと、ツールボックスの下に以下のようなダイアログが出ます。

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 そこでまず必ず確認していただきたいのは、[見えている色で]にチェックが入っているかです。これにチェックが入っていることで、今選択されていないけれども、可視化されているレイヤーの情報で選択領域を選べます。これは非常に重要です。

 それからモードの横に4つのアイコンが並んでいます。一番左側がデフォルトの状態で、新たに選択範囲を選ぶモード、2番目が選択範囲を追加するモード、3番目が選択範囲を減らすモード(元の選択範囲から新たに選択した範囲を除外する)、4番目が元の選択範囲と新たに選択した範囲の交差領域を、選択範囲とするモードになります。

 また、[なめらかに] [境界をぼかす] チェックボックスは、使った方が良い場合と、使わない方が良い場合がありますのでケースバイケースで判断します。ただGIMPの場合、ファイルサイズが大きいと選択範囲の形が複雑であればあるほど加速度的に計算時間が長くなる傾向にあります。[なめらかに] [境界をぼかす]にチェックをつけておくと、計算時間を短くして操作をスムーズにする効果があると思います。

 しきい値は、どのていど選択の範囲の色の値に幅を持たせるかを決定します。値を大きくするほど広い範囲が選択でき、小さくするほど幅が狭まります。

 重要なのは判定基準です。Compositeはデフォルトで、色相や彩度、明度の組み合わせで色域を選択します。通常の選択基準モードといえます。Red, Green, Blue, Alpha (透明度)は、それぞれのチャンネルの値を基に選択領域を決定します。このRed, Green, Blue値で色域を選択することは、Photoshopの[特定色域の選択]と似たような機能だといえます(全く同じではありませんが)。HSV Hue, LCh Hueは色相です。簡単に言えばどの色の系統に属しているかで決定します。HSV, LChは色空間の違いですが、基本的な考え方は似ていますので、両者の差は微妙な差です*1HSV Saturation, LCh Chromaは彩度です。HSV Value, LCh Lightnessは明度になります。通常はCompositeですが、6.2.4で扱う最初のサンプルの場合は、色相を使っています。ときに各チャンネルの値で選択範囲を決めた方が良い場合もあると思います。

 

6.2.3 色域選択を使って部分補正レイヤーを作成する

 2021.3.12に、色域選択を使った追加補正レイヤーを簡単に作れるようになるGIMPプラグインを紹介しました。このプラグインを使うと以下の面倒な手順を踏まなくても、色域選択後ワンタッチで、色域で選択された追加補正レイヤーが作成でき、操作性面ではほぼPhotoshopと互角になります。ぜひ導入をお勧めします。詳しくはこちらのページをご覧ください。

 色域選択を使った部分補正レイヤー作成法には大きく分けて、引き算法と足し算法の二つの方法があると思います。まず引き算法から解説します。

〇引き算法

 簡単に言うと元の画像をコピーして、そこから補正に使わない部分を消して補正レイヤーを作る方法です。まずレイヤーダイアログを使って、補正元の背景レイヤーを複数複製しましょう。背景レイヤーを選択し右クリックしてメニューを表示させて[レイヤーの複製]を選んでください。これが部分補正レイヤーの元になります。万一、レイヤーダイアログが見当たらない場合は、メニュー → [ウィンドウ] → [ドッキング可能なダイアログ]で[レイヤー]を選んでください。そうするとレイヤーダイアログが表示されます。

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 次に、複製したレイヤーに透明化を可能にするために、すべてアルファチャンネルを追加します。やはりレイヤーを選択し右クリックしてメニューです。背景レイヤーには追加する必要はありません。それと、部分補正レイヤーの内容を確認するために、真っ白に塗りつぶしたレイヤーを1つ作っておくことをお勧めします。

 



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 次に補正レイヤー化する複製したレイヤーを表示(可視化) & 選択します。Photoshopと異なり、レイヤーを新たに可視化すると、同時に選択ポインタがそのレイヤーに移ってくれるわけではありませんので、可視化と選択を別々に明示的に行う必要があります。さらに、色域選択ツールを選び、[なめらかに] 、[境界をぼかす]、[判定基準]、[しきい値]を設定したら、選択したレイヤー上で 、選択したい色の場所をクリックします。選択した結果が思ったものとは異なる場合は、[しきい値]、[判定基準]を再調整してクリックしなおすか、追加選択モードにして選択範囲を追加するなどして範囲を調整します。なお、経験的には、選択基準に色相 (HSV Hue, LCh Hue) を使う場合はしきい値を小さめに、Compositeを使う場合は大きめにとったほうがいいようです。

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色域選択を行ったところ

 選択が終わりましたら、メニュー→[選択]→[選択範囲の反転]を選びます。選びましたらDeleteキーを押します。そうすると選択した特定色域だけが残って残りは透明化された部分補正レイヤーが出来上がります(アルファチャンネルの付加を忘れていると、削除部分は真っ黒になります)。

 ただ問題は、選択範囲を作ると点線で囲まれて点滅するのですが、これが非常に見にくいです。そのうえ点線も、範囲が複雑だと正確に表示されず大雑把になります。従って、正確にどの範囲が残っているのかわかりにくいです。ですので、特定色域だけを残した時点で、下に白色レイヤーを敷いて、どこが残っているかを正確に確認することが必要です。ダメな場合は編集を元に戻して、もう一回範囲選択からやり直します。あるいはこの段階で補正の必要ない部分を消しゴム、ペイントツールなどを用いて消す等、編集作業をするのも良いと思います。

 

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下に白レイヤーを敷いて作業中の部分補正レイヤーを表示させたところ

〇足し算法

 こちらは、元画像から[色域を選択]で補正に必要な範囲をコピーして、アルファチャンネルつきの新規レイヤーに貼り付ける方法です。まず、事前準備としてメニュー→[レイヤー]→[新しいレイヤーの追加]を使って、真っ白に塗りつぶしたレイヤーを作っておきましょう。

 それが終わりましたら、背景の変換元画像レイヤーを選択&表示させ、上と同様、色域選択を使って、部分補正レイヤーで使う色域を選択し、さらに Ctrl+Cで、クリップボードにコピーします。そうしたら、作成した白塗りつぶしレイヤーよりも上に、[新しいレイヤーの追加]で、もう1枚レイヤーを追加します。

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新しいレイヤーの追加

そしてクリップボードにコピーしておいた画像をCtrl+Vで貼り付けます。貼り付けると直ちに下図のように[フローティング選択範囲]という表示が出ますので、メニュー→[レイヤー]→[レイヤーの固定]を選択し、新しく作成したレイヤー(以下の例では「補正レイヤー」と命名)に貼り付け範囲を固定します。なお[フローティング選択範囲]という表示が出ていないときは、[レイヤー]メニューに[レイヤーの固定]項目が表示されることはありません。このあたりはPhotoshopだとあらかじめ新規レイヤーを作っておく必要はなく、貼り付ければ即新規レイヤーで貼りついてくれるので、Photoshopを知っている人にはまどろっこしいところです。

 

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 これで部分補正レイヤーができます。そして新規作成したレイヤーとその下の白レイヤーを可視化すると、上と同様、部分補正レイヤーの内容が分かりやすく明示されます。部分補正レイヤーの範囲を追加したいときは、さらに補正元画像に戻って範囲を拡張したい部分に色域選択&コピーを実施し、部分補正レイヤーに上書き貼り付けを行うと、その部分が部分補正レイヤーに追加されます。

 

 引き算法、足し算法のどちらでも部分補正レイヤーが作れますのでお好みの方法を使ってください。

 

6.2.4 部分補正レイヤーの色調補正を行う

 このように色域による部分補正レイヤーができましたら、あとはそれにトーンカーブ等で色調補正をかけていきます。以下トーンカーブ調整を行うことを前提に話を進めます。

 まず補正元(背景)レイヤーと、部分補正レイヤーの両方を可視化します (選択は部分補正レイヤー)。そのうえでメニュー→[色]→[トーンカーブ]を選択します。ところでPhotoshop 利用経験のある人は戸惑うところですが、トーンカーブの表示にもGIMPはオプションがあり、場合によってはPhotoshopと似ても似つかない表示になっていて困惑することがあります。この場合、[線形ヒストグラム] & [Adjust curves perceptually]を選んでください。これが通常よく使われるヒストグラムです。

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 あとはトーンカーブをいじればよいだけです。以下前回提示した、udiさんから提供いただいたサンプル画像(基本補正適用後)を例に説明していきます。このサンプルの場合、肌色と法被の藍色を補正するという方針を前回立てました。従って肌色補正レイヤー(B値引き下げ)と紺色補正レイヤー(B値引き上げ)の2つの補正レイヤーを作ることになります。そして肌色補正レイヤーでは中暗部でB値が引き下がるよう、紺色補正レイヤーでは、中暗部でB値が引きあがるようトーンカーブを調整します。これを実際に画像を見ながら調整していきます。

 ところで、Photoshopの指南本などを見ますと、結構凝ったカーブを設定しているケースがみられます。もちろんGIMPでもやろうと思えば同じことができます。しかしトーンカーブ調整の使い勝手がGIMPのほうが悪く、同じことをやろうとするとPhotoshop よりも時間がかかってしまいます。ですのでGIMPでは凝ったトーンカーブ設定はやらないことをお勧めします。その代わりに、色域指定でいろいろなオプションが活用できますので、それを活用するのが良いのではないでしょうか。

          [以下の画像は再転載をお断りします]

 
肌色補正レイヤー
 
紺色補正レイヤー

 上に実際の補正レイヤーを掲示しました。いずれも判定基準をHSV Hue(色相)を使い、かつ[なめらかに]と[境界をぼかす]にチェックを入れてまず色域選択しました。紺色補正レイヤーについては黒に近い部分もかなり選択されたので、トーンカーブ調整後、黒い部分の青浮きを防ぐため、今度は判定基準をCompositeにし、かつ[なめらかに]と[境界をぼかす]のチェックを外して黒くて暗い部分を外しています。黒くて暗い部分のギザギザを残しているので、補正部分と非補正部分の遷移が自然になっています。

そして、第1次補正ベースレイヤーと合わせた最終結果は下記のようになりました。

 
最終補正結果

 


 肌の色に微妙に黄色みを残したことで、より生き生きとしています。肌色補正レイヤーに関しては、トーンカーブ補正においてB値の中暗域を引き下げるだけでなく、G値をごく僅かに微妙に引き上げて黄色味を残しました。因みにオリジナル画像は以下にあります。比較してみてください。

udimac.livedoor.blog

RGB値も測ってみました。

 

 一旦、不均等黄変を取ったBチャンネル再建画像さえ作っておけば、あとは追加補正を加えることで、おそらく、世の中の不均等黄変ネガ写真画像の大半を救えそうな手ごたえが得られました。

 もう1枚、今度は私の手持ち画像からサンプルを紹介します。こちらの画像は1983年8月21日、飯田線旧型国電さよなら運転を終えた直後、中部天竜機関支区 (のちの佐久間レールパーク) に留置されているクモハ53008の写真です。大して変色しているように見えませんが、以前補正に非常に苦労した写真です。この技法開発前には、かなり細かい部分補正マスクを何度も重ねてそこそこ見られるところまで補正しましたが、手前のバラストの青抜け感はどうしても補正できずじまいでした。当時の気象条件は小糠雨の降るやや暗い状況でしたので、フジフィルムのHR400を使って撮った写真ですが、HR400はudiさんが指摘されておられる通り、経年劣化による変褪色が激しいです。

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オリジナル

これをRGB分解に掛けると以下のようになりました。

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R (赤) チャンネル

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G (緑) チャンネル

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B (青) チャンネル

 上のオリジナル画像を見ると、一見黄変の程度は大したことがなく、フォトレタッチソフトの色調補正機能だけで調整可能に見えます。しかし、RGBチャンネルを分解してみると、R, Gチャンネルは健在ですが、Bチャンネルの損傷が意外にひどく、全般にソフトフォーカスを掛けたように損傷しているのが明らかです。手前のバラストの青浮きも明確です。これも見た目とは異なり、フォトレタッチソフトの通常のトーンカーブその他の色調補正だけでは絶対にダメなケースです。
 そこで、本技法の基本補正を掛けた結果が下です。

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基本補正適用後

 黄変はかなり消え、バラストの手前の微妙な色抜けも改善されていますが、ヘッドマークの色が冴えません。水色、黄緑色、オレンジ色が使われていますが、これらは本来G値とB値が乖離していなければならないのに、本技法の適用によりそれが近接したためです。

 そこで、オレンジ色補正レイヤー、水色補正レイヤー、黄緑色補正レイヤーを作りBの値を引き下げ補正した結果が下です。オレンジは多少R値の引き上げも行っています。ついでに電車の横須賀線ブルーの塗色も若干黄色みがかっていたので補正しました。

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ヘッドマーク部分追加補正後

 さらに、フリーウェアのRaw現像ソフトであるRawTherapeeにかけて、露出、ホワイトバランス調整後、フィルムシミュレーション (フジのsensia) に掛けて全般調整した結果が下です。ちなみにRawTherapeeのフィルムシミュレーションはこのような全般調整に非常に良いです。今一つ眠い画像をしっかりさせるのに頻繁に活用しています。

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全般色調調整後

 

 とりあえず、85点はつけられるところまで補正できました。横須賀線ブルーも良い感じに調整できました。なお、何度か追加補正を繰り返して気づいたことですが、黄色みというのは色の艶を出すのに決定的な役割を果たすようです。過度に黄色味を消すと、艶消しが過ぎる、というか脱色されすぎという感じになります。全般調整直前の段階で微妙に黄色味が乗ってぐらいだと、色に艶のある結果が得られます。

 また、本連載1回目の三番目のサンプルで、緑の色が不自然なのでこれもちょっといじってみました。

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前回補正最終

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追加マニュアル補正後


 緑色の部分を、色域選択で選んで、B値を下げ、近景の植物の青緑を緑っぽくしました。このように本技法を適用すると、追加補正を行う場合でも基本的にはB値を上げるか下げるかのどちらかになりますので、どのように補正したらよいか迷うことがなくなりますトーンカーブの迷宮にはまって途方に暮れるということがなくなるということです。

※2020.9追記

[Photoshopで作業を行う場合の補足]

 Photoshopでは、調整レイヤーが存在しますので、今回の編集作業に関しては、GIMPより簡単に編集が可能です。ここでの説明が面倒くさそうなのは、調整レイヤーのないGIMP上で、Photoshopに近い方法でやろうとしているためですから (ただ十分理解いただければそこまで面倒くさい作業ではありません。とはいえPhotoshopより一手間、二手間多いことは否定できません)。Photoshopでは、トーンカーブあるいはレベル補正の調整レイヤーを作成し、それに対して特定色域を指定範囲としたレイヤーマスクを掛けて調整すればOKです。もちろん、補正したい色域が複数ある場合は、複数の調整レイヤーが必要になります。但し、Elementsでは特定色域の範囲選択コマンドがないようなので、自動選択を使ってパラメーターを追い込んでいく必要があるかと思います。詳しくはこちらをご参照ください。ただPhotoshopほど自在な選択は困難かもしれません。

 因みにGIMPで編集作業を行うとき、ファイルサイズが大きく、かつ色域選択で選択範囲の形が複雑な場合、Photoshopに比べてめちゃくちゃマシンパワーを食いますので、CPUとメモリの増強は必至です。結構延々と待たされることがあります。GIMPは64bit化され、Photoshopに匹敵、もしくは凌駕する側面も出てきたと思います。しかしGIMPPhotoshopと同等以上の力を発揮させるには、パソコンの性能はPhotoshopを使う場合の2倍以上は必要と考えた方が良いと思います。おそらくPhotoshopはメモリ上の画像データを圧縮したり、計算を少なくするための様々な最適化が行われていると思いますが、GIMPはそのまま画像データを扱っているのではないかと推測します。それがCPUが高速化し、OSが64bit化され、GIMP自身も64bit対応になることでそれらの弱点がさほど問題にならなくなったのではないでしょうか。もっとも画像解像度がフルHD程度までであればさほど問題にはならないとは思いますが...

 これにて不均等黄変・褪色ネガ写真のデジタル補正術はほぼ完成を見たようです。自画自賛で恐縮ですが、おそらく前人未到達の未踏峰の領域まで来られたのではないかと思います。皆さんもぜひ当記事の情報をご覧いただき褪色写真の補正に挑戦してみてください。またサンプル写真を提供していただいたudiさんには深く感謝申し上げます。


 

 

*1:なお、HSVとLChの差は、HSVが狭い色空間で効率よく画像処理するために考えられた方式であり、LChは広い色空間に適合する方式のようです。以下のサイト参考。

ninedegreesbelow.com